こんにちは。塾長のFです。
柔整理論の総論、脱臼や軟部組織損傷について問題をつくってみました。
今日もF塾でガッツリ勉強していきましょう!
病的脱臼の分類
問題1 拡張性脱臼はどれか。【難易度☆ 】
1.関節リウマチによる手指脱臼 2.脳梗塞急性期の肩関節脱臼 3.細菌感染による股関節脱臼 4.抜歯手術の際の顎関節脱臼
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答え
3
病的脱臼 とは、関節に影響を与える疾患があって、外力がない、または軽微な外力によって脱臼するものです。
① 麻痺性脱臼 ・関節の安定性を維持している筋が麻痺 して起こります。 ・脳梗塞 では錐体路(中枢性運動神経)が障害され、一側の上肢下肢の筋が麻痺する片麻痺になりますが、発症後2週間位までの急性期 では筋緊張が低下する弛緩性麻痺 となります。 ・弛緩性麻痺があると、腕を引っ張るなど軽い外力で脱臼しやすくなります。
② 拡張性脱臼 ・関節内に細菌が感染 すると炎症を起こし、浸出液により関節包が引き延ばされて脱臼します。 ・ブドウ球菌感染による化膿性股関節炎 、結核菌感染による股関節結核 などがあります。
③ 破壊性脱臼 ・関節リウマチ は、関節包の滑膜が異常に増殖する慢性の炎症疾患です。長期にわたる炎症が骨・軟骨を破壊し、関節の変形、癒着、脱臼を起こします。
4.抜歯手術の際の顎関節脱臼 は、病的脱臼ではなく外傷性脱臼 です。
F塾長
私事で恐縮ですが、私は「抜歯の際の顎関節脱臼」を経験したことがあります。
20代のころ、親不知おやしらず が痛んで歯科を受診したときです。
しかも2日連続で(^^; (1日目で抜歯できず、翌日も受診)
1日目は歯科医が整復。 2日目は自分で整復。 人生唯一の脱臼です。。。
関節面の位置による脱臼の分類
問題2 脱臼の分類で誤っている のはどれか。【難易度☆☆ 】
1.近位関節面に対する遠位関節面の位置によって表現する。 2.肩鎖関節脱臼は肩峰に対する鎖骨外端の位置で表現する。 3.中心性脱臼とは内方脱臼のことである。 4.脊椎の脱臼は上位に対して下位の脊椎の位置で表現する。
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答え
4
1.肩関節でいえば、肩甲骨関節面(近位)に対する上腕骨頭(遠位)の位置が前方なら前方脱臼 、後方なら後方脱臼と表現します。
2.肩鎖関節脱臼は例外 で、肩峰(遠位)に対する鎖骨外端(近位)の位置が上方なら上方脱臼 と表現します。
3.中心性脱臼と内方脱臼は同義語 です。 ・骨頭が正中線に近づく方向に転位します。 ・股関節の大腿骨頭 が関節臼窩を破壊し、食い込む形で脱臼するものです。骨折を合併します。
4.脊椎の脱臼では下位脊椎に対する上位脊椎の位置で表現 します。 ・環軸脱臼では第2頸椎に対する第1頸椎の位置が前方なら前方脱臼 と表現します。
筋、腱の損傷
問題3 筋、腱の損傷で正しいのはどれか。【難易度☆ ☆☆ 】
1.筋損傷の第1度は肉ばなれといわれる。 2.クラッシュシンドロームは筋への直達外力で発生する。 3.ばね指は腱損傷の第2度に分類される。 4.アキレス腱損傷の修復は手屈筋腱損傷より遅い。
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答え
2
1.肉ばなれ は、筋の過度の伸長や収縮による筋線維の完全あるいは部分的な断裂 です。 ・筋損傷の第2度以上 でみられます。 ・損傷部は筋腱移行部 や筋腹の発生頻度が高いです。
【筋損傷の分類】第1度 ・筋間損傷(筋線維は損傷しない)が主。 ・筋力低下や可動域制限が少ない。 ・1~2週でスポーツ復帰できる。第2度 ・筋線維の部分断裂。 ・圧痛、腫脹、筋力低下がみられる。 ・スポーツ復帰には平均6週を要する。第3度 ・筋線維の完全断裂。 ・激痛、陥凹がみられる。 ・筋収縮はみられない。 ・観血療法が選択されることが多い。
2 .クラッシュシンドローム (挫滅症候群)は、災害や事故により長時間下敷きになった後、救出されることにより発生します。 長時間の圧迫により筋が壊死 し、ミオグロビンやカリウムが蓄積。圧迫開放によりそれらが血液中に遊離し、心臓や腎臓の機能を悪化させ、死に至ることもあります。
3.ばね指 は、腱損傷の第1度 です。 ・ばね指(弾発指)は腱鞘の肥厚等により腱が狭窄されて発生します。 ・母指に多く、IP関節の伸展障害がおこります。
【腱損傷の分類】第1度 ・腱線維の断裂はない。 ・運動痛、圧痛、腫脹がみられる。 ・ばね指など腱鞘の狭窄を伴うものは関節運動障害がみられる。第2度 ・腱線維の部分断裂。 ・運動痛、圧痛、血腫がみられる。第3度 ・腱線維の完全断裂。 ・激痛、陥凹、運動制限、筋力低下、皮下出血斑がみられる。
4.腱組織は血行に乏しく、治癒能力は低いです。 ・手屈筋腱はさらに腱鞘におおわれるため、修復が遅くなります。 ・アキレス腱をおおう腱傍組織(パラテノン)は血行が良好なため、他の腱より修復力が旺盛 です。
関節軟骨損傷の症状
問題4 関節軟骨の単独損傷の症状で誤っている のはどれか。【難易度☆ ☆☆ 】 1.関節部の鈍痛 2.可動域制限 3.関節血腫 4.嵌頓症状
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答え
3
・関節軟骨は血管、神経を欠き、 単独損傷では症状は乏しい ため、関節捻挫などとの鑑別が重要になります。
・軟骨片が遊離すると、 ① 関節の鈍痛 ② 可動域制限 ③ 異物感 ④ 関節水腫 がみられます。
・軟骨片が関節面に嵌入すると、 ⑤ 嵌頓症状 locking を呈します。
・関節軟骨は血管がないため、単独損傷では関節血腫はみられません 。 関節血腫の存在は軟骨下の骨が損傷している可能性を示します。
末梢神経損傷の分類
問題5 サンダーランドSunderlandの分類で神経上膜までの損傷はどれか。【難易度☆ ☆ 】
1.2度 2.3度 3.4度 4.5度
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答え
4
サンダーランドSunderland分類 は末梢神経の構成要素で損傷を分類したものです。
1度 限局性の脱髄による伝導障害 。 ・脱髄とは軸索をとりまく髄鞘の破壊のこと。軸索は損傷されていない。 ・脱髄がおこると跳躍伝導に障害をきたす。2度 軸索のみ の損傷3度 軸索及び神経内膜まで の損傷4度 軸索、神経内膜、神経周膜まで の損傷5度 軸索、神経内膜、神経周膜、神経上膜まで の損傷
・軸索が損傷すると損傷部より遠位の軸索が変性し消失します。これをワーラー変性 といいます。
・ワーラー変性は軸索が損傷している2度~5度損傷で起き 、軸索が損傷していない1度損傷では起こりません 。
・変性・消失した軸索は末梢に向かって1日1㎜の速さで再生していきます。 *軸索の再生は末梢神経のみで、中枢神経の軸索は再生されません。
参考文献
・南江堂「柔道整復学・理論編 改訂第7版」
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