柔道整復師国家試験対策問題【必修問題 第1回】

国試対策問題(オリジナル)

柔道整復師が医療保険を取り扱えるのは知ってますよね?

でも整骨院での施術料の支払いと病院での医療費の支払いではちょっと違うのは知ってましたか?

柔道整復師と医療保険の関わりは非常に重要で国家試験の必修問題の範囲にもなっています。

今回は受領委任払い、国民医療費のテーマで問題と解説で勉強していきましょう。

柔道整復療養費の受領委任払いとは

問題1 柔道整復療養費の受領委任払いで誤っているのはどれか。【難易度

1.施術管理者のみが受領委任払いでの申請ができる。
2.柔道整復師は患者(被保険者)に自己負担分を請求する。
3.患者(被保険者)は柔道整復師に支給申請を委任する。
4.保険者は患者(被保険者)に給付分を支給する。

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答え 

選択肢 保険者は柔道整復師に給付分を支給します。

 

 医療保険制度での診療(保険診療)では、現物給付が原則です。

 現物給付とは、現金で給付がされるのではなく、診察や手術、医薬品といった医療サービスという形で給付がされることです。

 ほぼ全ての病院、診療所、歯科ではこの現物給付方式ですが、柔道整復師の施術所では療養費という制度が適用されます。

 療養費とは、やむを得ない事情で保険診療が受けられない場合に後から請求して現金で給付される分です。

 本来の療養費対象の支払い方法(償還払いといいます。)では、一旦窓口で全額を払うので患者の一時的な費用負担が増し、また患者自身が保険者に請求するので事務的な負担が増します。

 そのため、柔道整復療養費は患者の負担軽減のため受領委任払いが認められています

 受領委任払いとは、『患者に代わって柔道整復師が保険者に請求する。』制度のことです。

 但し、受領委任払いによる請求が認められるのは管理施術者のみです。

【施術管理者とは】
・施術所での療養費の受領委任に関わる取扱いを管理する者。
・一定の実務経験(2年間)と施術管理者研修(2日間16時間)の受講が必要。
 *2022年4月時点

【受領委任払いの流れ】
① 患者(被保険者)は柔道整復師に一部負担分(通常3割)を支払う。
② 患者は柔道整復師に療養費請求を委任する。(療養費支給申請書の委任欄に署名する。)
③ 柔道整復師は患者に代わって、保険者に療養費を請求する。
④ 保険者は請求内容が適正か審査し、支給の可否を決定する。
⑤ 保険者は柔道整復師に給付分(通常7割)を支給する。

【F塾長の独り言】
 昨今の柔道整復業界は一部で不正請求など医療保険を悪用する動きがあり、多方面から強いバッシングを受けています。
 このままでは近い将来、柔道整復師の保険取扱いが取り消される懸念があるといえます。
 そこで正しい保険取扱いの知識、運用を徹底させる趣旨で必修問題の範囲に組み込まれたことを考えると、

 ここは絶対国試に出ると思います!





国民医療費の財源

問題2 国民医療費の財源の割合で正しいのはどれか。【難易度

1.公 費    ―  21%
2.保険料    ―  38%
3.事業主負担  ―   5%
4.患者負担   ―  12%

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答え 

選択肢1 公 費   ―  38%
選択肢2 保険料   ―  49%
選択肢3 事業主負担 ―  21%

 国民医療費とは、1年間の医療機関での診療に必要な費用の合計です。

 診療費に必要な費用とは、医療保険制度によって保険者から支給された給付分と患者が窓口で支払った一部負担分を合算したものです。

【国民医療費に含まれるもの】
1)医科・歯科診療費
2)薬剤調剤費
3)入院時の食事代
4)訪問看護費
5)柔道整復療養費など

【国民医療費に含まれないもの】
1)正常な妊娠や分娩
2)健康診断、予防接種
3)身体障害者の義眼、義肢
4)入院時の部屋代差額分、歯科での実費費用
5)治療といえないもの(レーシック手術、美容整形手術)

 国民医療費は、年々増加の一途をたどり、平成30年度で約44兆円になります。

 そのお金の出所が財源です。

財 源国民医療費(兆円)割合(%)
総 額 43.9100
公 費16.638.3
国 庫11.025.4
地 方5.512.8
保険料21.349.3
事業主9.221.2
被保険者12.128.0
患者負担
及び原因者負担
患者負担5.111.8






リスボン宣言で提唱された患者の権利

問題3 リスボン宣言で提唱された患者の権利で誤っているのはどれか。【難易度

1.自己決定の権利
2.団体行動の権利
3.尊厳性が守られる権利
4.秘密保持に関する権利

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答え 

選択肢 団体行動の権利は日本国憲法でうたわれている労働者の権利です。

 患者の権利に関しては、患者の権利章典(アメリカ病院協会)、患者の権利憲章(英国政府)、患者の権利宣言(WHO)など様々な方法、表現でうたわれています。

 日本では1981年に世界医師会で採択された「患者の権利に関する宣言」(通称リスボン宣言)をベースに独自で掲げている医療機関が多く、柔道整復師国家試験でも患者の権利といえばリスボン宣言を出題基準にしていると思われます。

 リスボン宣言では患者の自主尊重・自己決定権を保障するための医療者の行動規範がうたわれています。

良質な医療を受ける権利
選択の自由の権利
自己決定の権利
意識喪失患者の権利
法的無能力者の権利
患者の意思に反する処置・治療に対する権利
医療情報に関する権利
秘密保持に関する権利
健康教育を受ける権利
尊厳性が守られる権利
宗教的支援を受ける権利






柔道整復師が免許制なのはなぜか。

問題4 柔道整復師免許制度を設ける理由で正しいのはどれか。2つ選べ。【難易度

1.免許者に独占的に施術を行わせるため
2.衛生水準の向上を図るため
3.施術に医療保険を適用するため
4.施術の有用性を確立するため

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答え 

【柔道整復師法において免許制度を設ける理由】

1)人体に危害をおよぼす行為が含まれるから。
  ・無免許者が他人に危害を加えると傷害罪に問われます。
  ・その違法性を阻却そきゃくする(まぬがれる)為に免許制度化されています。

2)一定水準の知識、技能を有する者でなければ、衛生水準の低下を招くから。
  ・衛生水準とは健康状態といってもいいでしょう。

3)免許者のみが独占的に施術を行うようにするため。
  ・危険な行為が含まれるので、免許者以外に業務をさせないようにしています。
  ・これを業務独占といいます。

4)業務が適正に運用されるように規律し、衛生水準の向上を図る。
  ・「業務が適正に運用されるように規律する。」ことは柔道整復師法の目的でもあります。






柔道整復師免許を得る条件と失う条件

問題5 柔道整復師免許の消極的資格要件はどれか。【難易度

1.精神障害により業務が適正に行えない者
2.素行が著しく不良な者
3.柔道整復師国家試験に不合格の者
4.満20歳に達しない者

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答え 

柔道整復師免許を得るための条件のことを資格要件といいます。

資格要件には積極的資格要件消極的資格要件(欠格事由)の2つがあります。

柔道整復師免許を得るためには下記の条件をクリアする必要があります。
1)積極的資格要件当てはまること。
2)消極的資格要件当てはまらないこと。

積極的資格要件とは、免許を受けるために必要なことです。
 
柔道整復師国家試験に合格すること。

 消極的資格要件(欠格事由)とは、免許を与えられなかったり、免許を取得していても取り消されたり、業務の停止を命じられたりすることです。

 1)心身の障害により業務を適正に行えない者
   ・心身の障害とは、精神機能の障害のことで身体障害ではありません。
   ・治療などで症状が軽減されているか考慮されます。
   ・免許を与えないと判断されたなら、意見聴取の機会が与えられます。

 2)麻薬、大麻、又はあへんの中毒者
   ・現時点で中毒者かどうかが問題で、過去の常習歴は問われません。
   ・中毒者かどうかは医師の診断書で判断されます。

 3)罰金以上の刑に処せられた者
   ・罰金以上の刑とは、死刑、懲役刑、禁錮刑、罰金刑のことです。
   ・執行猶予を含みます。

 4)業務に関し犯罪又は不正の行為があった者

 但し、柔道整復師法の消極的資格要件(欠格事由)は該当すると、

「免許を与えないことがある。」「免許を取り消したりすることがある。

必ずしも資格・免許を喪失するわけではないので、相対的欠格事由といわれます。

 上記の欠格事由に当てはまった場合、免許を与えるか与えないかは厚生労働大臣が判断することになります。

参考文献

・医歯薬出版「社会保障制度と柔道整復師の職業倫理」
・医歯薬出版「関係法規 2019年」


同じ分野の問題へ「柔道の理念「精力善用」、インフォーム・ドコンセント」

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