柔道整復師国家試験対策問題【必修問題 第2回】

国試対策問題(オリジナル)

柔道の問題は国家試験のなかで2問程度と少ないですが、必修問題範囲になっています。

「柔道の理念」は似たような言葉があり、しっかり意味を理解して間違えないようにしたいものです。

他にインフォームド・コンセントやインシデントなど、問題を解きながら勉強していきましょう。

柔道の理念「精力善用」

問題1 柔道の理念である「精力善用」はどれか。【難易度☆☆

1.何事をするにも、その目的を達するために心身の力を最も有効に働かす。
2.互いに信頼し、助け合うことが出来れば、自分も他人もともに栄えることが出来る。
3.自分の全精力を尽くして努力した上で、成功・成就を期待すべきである。
4.柔軟性のあるものが、そのしなやかさによって、かえって剛強なものを押さえることができる。

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答え 

【柔道の創始者、嘉納治五郎師範の言葉】
精力善用
・柔道の基本原理であり、嘉納師範は柔道だけでなく社会生活全般においても不可欠と説きました。
・自分のもつ最大限の力を世の中のために役立てなさい。といった意味も含みます。

2.自他共栄
・精力善用とともに柔道の基本原理とされるものです。
・人間はただ一人で生活しているのではなく、社会、団体、組織の一構成員であるから、他の構成員を融和協調することが大事であるという考え方です。

3.尽己竢成(おのれをつくしてなるをまつ)
・幸運を望む前に努力しなければならない。
・努力していないのに失敗を不運のせいにしてはいけない。といった意味です。

4.柔能剛制(じゅうよくごうをせいす)
・中国の兵法書「三略」記されている言葉で、柔術の技術理論とされているものです。
・柔道はこれを技術的な理論と残しつつ、科学的観点から改善し社会協調的な態度を養うよう体系化されました。






インフォームド・コンセントの基本

問題2 インフォームド・コンセントについて正しいのはどれか。【難易度☆☆

1.医師の裁量権に基づくものである。
2.医療法に努力義務規定されている。
3.意識のない患者には適用されない。
4.治療費用に関する事項は含まれない。

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答え 

インフォームド・コンセントとは「十分な説明をし、理解した上での同意」です。
説明を受け理解したうえで拒否することも含まれます。
患者の自己決定権を尊重する考え方です。

1.医師の裁量権とは、医療は高度かつ専門性の高い領域でありリスクを伴うため、医師が患者の為に有効と判断した医療行為を実施できる権利です。

 現代の医療でも重要な考え方ですが、国家試験対策としては、旧来の医師の権威に基づく医療(パターナリズム)と同様、患者の自己決定権と相反する考え方としてとらえる方が単純と思います。

.1997年に医療法に努力義務化(説明と同意を得るよう努めなければならない)されました。

【医療法 第1条の4第2項】
 医師、(中略)、その他の医療の担い手は、医療を提供するに当たり、適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得るよう努めなければならない。

3.原則は患者本人への説明と同意ですが、意識のない患者未成年判断能力を欠く患者に対しても家族や代理人へのインフォームド・コンセントが必要になります。

4.インフォームド・コンセントに含まれる内容は下記のものがあります。

 1)医療行為の必要性(病名、病状)
 2)治療法の内容、期間、危険性、副作用、費用
 3)予測される結果、回復の可能性
 4)他の治療法の有無





インシデント、医療事故、医療過誤の違い

問題3 施術所でのインシデントに該当するのはどれか。【難易度

1.患者が施術所の玄関で一人で転倒し、手関節部を骨折した。
2.柔道整復師が施術中にベッドから転落し、肩部を捻挫した。
3.体内金属をもつ患者と知りながら超短波を照射したが、問題は起きなかった。
4.皮膚がかぶれやすい患者と知らずにテープを貼付し、皮膚炎を発症した。

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答え 

医療現場での医療事故などには下記のものがあります。

インシデント・・・「誤った医療行為が実施される前に発見されたもの、あるいは実施されたが患者に影響を及ぼさなかったもの」です。ヒヤリハット事例ともいいます。

医療事故・・・医療に関わる場所で発生した全ての人身事故をいいます。過失の有無を問わず、患者だけでなく医療者側に被害があった場合も含みます。

医療過誤・・・医療事故の一形態で、「医療の遂行において医療的準則に違反して患者に被害を発生させた行為」のことです。医療的準則に違反するとは、医療者ならば対処してしかるべきことを誤った、つまり過失があったという意味です。

1.医療者側の過失はないので医療過誤ではなく医療事故に該当します。

2.傷害を負っているのが患者ではなく医療者側なので医療事故に該当します。

.体内金属のある患者に超短波を照射するのは誤った行為(過失)ですが、患者に被害はなかったのでインシデントに該当します。

4.テープの貼付に伴う皮膚のかぶれは医療従事者ならば十分予見できたと考えられます。そのインフォームド・コンセントを怠り、患者に被害が発生しているので医療過誤に該当します。





業務独占の資格と名称独占の資格

問題4 業務独占が認められる資格はどれか。2つ選べ。【難易度

1.臨床検査技師
2.理学療法士
3.歯科技工士
4.歯科衛生士

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答え 3,4

 資格・免許には① 業務独占のみのもの、② 名称独占のみのもの、③ 業務独占も名称独占もしているものがあります。

業務独占のみの資格
 例えば柔道整復師法第15条には、「医師である場合を除き、柔道整復師でなければ業として柔道整復を行ってはならない。」とあり、柔道整復の業務は医師を除く柔道整復師だけに認められた独占的業務となります。
 また柔道整復師法には柔道整復師という名称に関する規定はないので、名称独占はしていません。

名称独占のみの資格
 例えば理学療法士法及び作業療法士法第17条第1項に、「理学療法士でない者は、理学療法士という名称又は機能療法士その他理学療法士に紛らわしい名称を使用してはならない。」とあり、理学療法士という名称が理学療法士のみの独占的名称ということになります。
 また理学療法士法及び作業療法士法には業務の独占に関する規定はないので、業務独占はしていません。

業務独占も名称独占もしている資格
 医師法第17条「医師でなければ、医業をしてはならない。」
 医師法第18条「医師でなければ、医師又はこれに紛らわしい名称を用いてはならない。」とあり、医師資格は業務独占であり名称独占でもあります。
 

業務独占
名称独占
業務独占のみ名称独占のみ
医 師柔道整復師保健師
歯科医師あん摩マッサージ指圧師臨床検査技師
薬剤師はり師臨床工学技師
診療放射線技師きゅう師理学療法士
看護師歯科技工士作業療法士
准看護師視能訓練士
助産師言語聴覚士
歯科衛生士義肢装具士
救急救命士





施術所の開設に必要な要件とは

問題5 施術所について正しいのはどれか。【難易度☆☆

1.柔道整復師でなければ開設することができない。
2.開設には都道府県知事の許可が必要である。
3.開設者の本籍地は届出事項に含まれない。
4.待合室は専用でなければならない。

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答え 

1.施術所の開設は柔道整復師に限らず、誰でも開設できます。また自然人だけでなく法人も開設できます。

自然人とは、いわゆる普通の肉体を持った人間のことです。法人の対義語となる法律用語です。
法人とは、自然人以外で権利や義務を法的に認められた人格です。平たくいえば会社や組織のことです。

2.施術所の開設に許可は必要ありません。ただし開設後10日以内に、所在地の都道府県知事(保健所を設置している市は市長に、特別区は区長に)に届け出る必要があります。

.施術所の届出事項(施行規則第17条)
 ① 開設者の氏名及び住所(法人では法人の名称、本社の所在地)
 ② 開設の年月日
 ③ 名 称
 ④ 開設の場所
 ⑤ 業務に従事する柔道整復師の氏名
 ⑥ 構造設備の概要及び平面図

4.施術所の構造設備基準(施行規則第18条)
 ① 6.6m2以上の専用の施術室
 ② 3.3m2以上の待合室(兼用で可
 ③ 室面積の1/7以上を外気に開放しなければならない。
   又はこれに代わる換気装置があればよい。   
 ④ 施術に用いる器具、手指の消毒設備





参考文献

・医歯薬出版「社会保障制度と柔道整復師の職業倫理」
・医歯薬出版「関係法規 2019年版」
・公益財団法人講道館のHP

同じ分野の問題へ「柔道整復師は療養費をどう扱うのか。受領委任払いとは?」

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