柔道整復師国家試験対策問題【必修問題 第7回】

国試対策問題(オリジナル)

鎖骨骨折や肩鎖関節上方脱臼、肩関節脱臼など肩関節付近の損傷を集めてみました。

今日も問題と解説で勉強していきましょう。

鎖骨骨折の診察

問題1 定型的鎖骨骨折の診察で正しいのはどれか。【難易度☆☆

1.鎖骨遠位端付近の骨折ではピアノキー症状がみられる。
2.患部は遠位骨片により突出してみえる。
3.軋轢音や腫脹は比較的軽微である。
4.小児の不全骨折では変形を認めない。

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答え 

 定型的鎖骨骨折とは、鎖骨の中外1/3境界部での骨折です。外観、症状ともに肩鎖関節上方脱臼と類似している為、鑑別が重要となります。

.鎖骨の遠位端に近い骨折、特に烏口鎖骨靱帯の断裂を伴うものではピアノキー症状がみられます。ピアノキー症状は肩鎖関節上方脱臼の固有症状ではないことに留意しましょう。

2.患部は上方に突出してみえます。
これは遠位骨片ではなく、胸鎖乳突筋の作用により後上方に転位した近位骨片によるものです。

3.軋轢音、異常可動性、腫脹、限局性圧痛が著明となります。

4.幼小児では不全骨折(骨の連続性が断たれていない)である若木骨折となることが多いです。
この場合、上方凸変形を呈します。

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上腕骨外科頸骨折の症状

問題2 上腕骨外科頸外転型骨折の症状で誤っているのはどれか。【難易度☆☆

1.三角筋部は膨隆している。
2.烏口下に陥凹がみられる。
3.骨折部は噛合していることも多い。
4.関節運動はある程度保たれる。

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答え 

上腕骨外科頸外転型骨折の患部の外観は肩関節前方脱臼に類似しています。

1.外科頸骨折は関節外骨折のため出血による血腫が著明となり、三角筋部が膨隆しています。

.転位が高度な場合、遠位骨片は前内上方に転位します。
上腕骨外科頸の前内上方といえば烏口突起の下方になります。
転位した遠位骨折端により烏口(突起)下が膨隆します。
また烏口下にはモーレンハイム窩(三角筋胸筋溝)という陥凹があるので、遠位骨折端によりモーレンハイム窩が消失します。

モーレンハイム窩の消失 = 烏口下の膨隆
へこみがなくなる    = ふくらむ

3.多くは転倒の際に肩外転、肘伸展位で手掌を衝いて受傷します。
このとき上腕長軸方向の軸圧が骨折部に加わり嚙合骨折となることも多いです。

4.疼痛による可動域制限や腋窩神経損傷(三角筋麻痺)による外転不能はみられますが、肩関節脱臼と違い、自動他動も含めた肩関節運動はある程度保たれます

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肩鎖関節上方脱臼の整復

問題3 肩鎖関節上方脱臼の整復で正しいのはどれか。【難易度

1.患者の肩関節を下垂位とする。
2.助手に患者の上腕部を前上方に持ち上げさせる。
3.術者は患肢を上方に押し上げる。
4.突出した肩峰を下方に押圧する。

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答え 

肩鎖関節上方脱臼の整復・・・南江堂「柔道整復学・実技編 改訂第2版」P213から引用

① 助手を患者の後方に立たせ、両上腕部を把持、後上方に持ち上げ保持させる。
② 助手に患者の姿勢を正し、軽く患肢を後上方へ引かせ背部を固定する。
③ 術者は一方の手で患肢を把持そ肩関節40~60°外転位上方に押し上げながら、他方の手で鎖骨遠位端部を下方へ圧迫し整復する。

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肩関節前方脱臼の固定

問題4 肩関節前方脱臼の固定で正しいのはどれか。【難易度☆☆

1.固定肢位は肩関節軽度伸展、内旋位とする。
2.疼痛軽減のため、肩をすぼめた肢位で固定する。
3.肘関節も含めて固定する。
4.30歳以下では5~6週間固定する。

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答え 

1.固定肢位は肩関節軽度屈曲内旋位とします。伸展位では骨頭が前方へ再脱臼するリスクがあります・

2.胸郭を拡大した状態で固定します。腱板や筋の張力を利用し骨頭を関節窩へ押しつける狙いが考えられます。

3.一般的に脱臼の固定は骨折と違い、脱臼した関節のみの固定とします。
損傷していない関節を固定することによる関節拘縮を防ぐ為です。
但し、肘関節脱臼では前腕の回内回外運動が肘関節に影響するので手関節も固定します。

若年者の肩関節脱臼は反復性脱臼に陥りやすいです。
早期の固定除去や早すぎる競技復帰などが原因です。
このため中高年より長い5~6週間固定します。
逆に高齢者では拘縮を起こしやすく、日常生活動作が低下するため3~4週間の固定とします。

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腱板損傷の症状

問題5 腱板断裂の症状で正しいのはどれか。【難易度

1.完全断裂では結節間溝部に陥凹を触知する。
2.肩外転120°以上で疼痛を生じることが多い。
3.新鮮例で棘上筋の筋萎縮がみられる。
4.RICE処置では肩外転位保持が望ましい。

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答え 

 腱板(回旋筋腱板)とは、上腕骨頭を肩関節窩に引き寄せる役割をもつ棘上筋腱棘下筋腱小円筋肩甲下筋の筋腱の総称です。

 腱板損傷の発生頻度がもっとも高いのは棘上筋腱です。

 肩外転の際、烏口突起と肩峰の間に張る烏口肩峰靱帯の下(烏口肩峰アーチ)の狭窄部を棘上筋腱が繰り返し通過し、そのときの摩耗によって腱が損傷します。

1.損傷部位は、棘上筋腱の付着部である大結節より近位1~1.5cmのところに多く、完全断裂では同部位に陥凹を触知します。

2.疼痛は肩外転60~120°の間で発生し、それ以外の角度では疼痛がないのが特徴です。ペインフルアークサイン(有痛弧徴候)といいます。

3.筋萎縮受傷後すぐには発生しません
運動制限による筋萎縮は週に10~15%の割合で起こるといわれています。
一般的に最大筋力の30%未満の運動では筋萎縮、筋力低下が発生しやすくなります。

.RICE処置(急性期の処置)では断裂端または損傷部位に牽引力が掛からない肩外転位とします。

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参考文献

・南江堂 「柔道整復学・実技編 改訂第2版」
・南江堂 「柔道整復学・理論編 改訂第6版」

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