こんにちは。塾長のFです。
今日は【生理学】神経の基本の問題を作ってみました。
活動電位
問題1 活動電位で誤っているのはどれか。【難易度☆☆☆】
1.からだの全ての細胞で発生するわけではない。
2.膜電位が静止膜電位に戻る過程を脱分極という。
3.脱分極相ではNa+チャネルが開口している。
4.活動電位の大きさは約100mVである。
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答え
2
細胞の内外では、イオンの濃度差による電位差が生じています。通常は細胞外に対して細胞内がマイナスの電位(約-70mV)になっており、これを静止膜電位といいます。
静止膜電位は全ての細胞にみられますが、特定の細胞では細胞の内外の電位差が逆転(細胞内がプラスの電位)することがあります。この一過性(約1ミリ秒)の膜電位の変化を活動電位(興奮)といいます。
1.活動電位は、神経細胞や筋細胞のみに発生します。
2.静止膜電位(分極した状態)からプラス方向へ電位が変化していく過程を脱分極、もとの静止膜電位へ戻る過程を再分極といいます。
3.細胞膜に一定以上の刺激(閾刺激)が加わると、通常は閉鎖しているNa+チャネルが開口します。Na+の膜透過性が高まり、細胞外に多いNa+が細胞内に一気に流入します。Na+はプラスの電荷を持っているので細胞内がプラス方向へ傾く脱分極が起こります。
4.活動電位の大きさ(振幅)は-70mV~30mVで、約100mVです。
跳躍伝導
問題2 跳躍伝導の特徴はどれか。【難易度☆】
1.興奮は軸索の両方向に伝わる。
2.興奮は髄鞘がない部分のみに起こる。
3.興奮が隣接する軸索に乗り移る。
4.興奮の大きさは軸索の長さに比例しない。
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答え
2
活動電位(興奮)の伝導は、生体では神経細胞体や樹状突起で起こり、軸索から神経終末に至ります。
興奮の伝導には一定の特徴があり、伝導の三原則といいます。
1)両側性伝導・・・軸索の途中で起こった興奮は軸索の両方向へ伝わる。
2)絶縁性伝導・・・興奮が隣接、並走する軸索に乗り移ることはない。
2)不減衰伝導・・・活動電位の大きさは、伝導途中で小さくならない。
神経線維には軸索に髄鞘をもつ有髄線維と髄鞘をもたない無髄線維があります。
髄鞘(ミエリン)は、神経支持細胞(グリア細胞)により構成されています。
中枢神経系の髄鞘を構成する細胞・・・稀突起膠細胞
末梢神経系の髄鞘を構成する細胞・・・シュワン細胞
有髄線維の特徴は跳躍伝導です。
髄鞘は所々途切れており、軸索の髄鞘がない部分をランビエの絞輪といいます。活動電位はランビエの絞輪部のみ発生し、飛び飛びに伝導するので無髄線維に比べ伝導速度が速いです。
神経線維の特徴
問題3 神経線維の性質について正しいのはどれか。【難易度☆☆】
1.太い神経線維ほど伝導速度が遅い。
2.無髄線維は有髄線維より伝導速度が速い。
3.細い神経線維ほど局所麻酔に対する感受性が高い
4.太い神経線維ほど圧迫刺激で麻痺を起しにくい。
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答え
3
1.伝導速度は神経線維の太さに比例し、太いほど速いです。
2.同じ太さでも跳躍伝導するため、有髄線維の方が速いです。
3.局所麻酔は細い神経ほど感受性が高い(効きやすい)です。痛覚 → 温度覚 → 触圧覚 → 運動の順に麻酔されます。これは局所麻酔の目的が手術時などの疼痛抑制とすると非常に都合が良いことになります。
4.圧迫刺激による麻痺は、太い神経線維ほどを起しやすいです。
例えば、正座しているとき神経は圧迫されます。このとき先に足の感覚(触覚)が無くなり、次に痛みが出てきます。これは触覚を伝える線維は痛覚を伝える線維より太いからです。
神経線維の種類
問題4 神経線維の分類で正しいのはどれか。【難易度☆☆☆】
1.Aα線維 ― 筋紡錘からの求心性情報
2.Aβ線維 ― 骨格筋への遠心性情報
3.Aγ線維 ― 腱紡錘からの求心性情報
4.Aδ線維 ― 筋紡錘への遠心性情報
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答え
1
髄鞘 | 種類 | 太さ
(μm) | 線維 | 数字分類 | 役割 |
有髄 | Aα | 15 | 遠心 | | 骨格筋支配 |
求心 | Ⅰa | 筋紡錘
(らせん終末)から |
求心 | Ⅰb | ゴルジの腱器官から |
Aβ | 8 | 求心 | Ⅱ | 触圧覚
筋紡錘(二次終末)から |
Aγ | 5 | 遠心 | | 錘内筋支配 |
Aδ | 3 | 求心 | Ⅲ | 痛覚(一次痛)
温覚、冷覚 |
B | 3 | 遠心 | | 交感神経節前線維 |
無髄 | C | 1 | 遠心 | | 交感神経節後線維 |
求心 | Ⅳ | 痛覚(二次痛)
温覚 |
神経伝達物質
問題5 末梢神経系の神経伝達物質はどれか。【難易度☆☆】
1.グルタミン酸
2.セロトニン
3.ノルアドレナリン
4.γ-アミノ酪酸(GABA)
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答え
3
末梢神経系の神経伝達物質は、アセチルコリンとノルアドレナリンです。
1)アセチルコリン
次の神経線維末端から分泌されます。
・運動ニューロン
・交感神経節前ニューロン
・副交感神経節前ニューロン
・副交感神経節後ニューロン
2)ノルアドレナリン
次の神経線維末端から分泌されます。
・交感神経節後ニューロン
アセチルコリンとノルアドレナリンは中枢神経系でも神経伝達物質として働きます。
中枢神経系の神経伝達物質 | 特徴 |
アセチルコリン | |
ノルアドレナリン | |
γ-アミノ酪酸(GABA) | 抑制性のみに働く。 |
セロトニン | |
ドーパミン | |
グルタミン酸 | 興奮性のみに働く。 |
参考文献
・南江堂「生理学 改訂第3版」
・南江堂「生理学 改訂第4版」
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