こんにちは。塾長のFです。
今日は柔整理論の頭部、体幹の骨折をやっていきます。
国家試験での出題傾向も高くなくレアなところですが、備えあれば患いなしですね。
ガッツリ勉強していきましょう!
脳頭蓋(頭蓋骨)の骨折
問題1 頭蓋骨骨折で正しい記述はどれか。【難易度☆☆】
1.頭蓋冠骨折の診断は極めて困難である。
2.頭蓋冠骨折は幼小児では陥没骨折となりやすい。
3.頭蓋底骨折は直達外力により発生することが多い。
4.頭蓋底骨折は脳神経損傷を合併する。
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答え
4
解剖的に頭蓋骨は脳頭蓋の骨と顔面頭蓋の骨に分けられます。
脳頭蓋の骨はさらに、脳を上から覆う円蓋部分の頭蓋冠と、脳の下面にある頭蓋底に分けられます。
頭蓋冠を構成する骨
・前頭骨
・頭頂骨
・側頭骨
・後頭骨
頭蓋底を構成する骨
・前頭骨
・篩 骨
・蝶形骨
・側頭骨
・後頭骨
1.頭蓋冠の骨は体表面近くにあり、骨折における変形が外観上、触診でも比較的容易に診断することができます。
2.幼小児の頭蓋冠は軟らかく弾力があるため、不全骨折である陥凹骨折となりやすいです。
3.頭蓋底は脳の下面にあり、体表面に露出していない為、直達外力では発生しにくいです。
主な発生機序は、高所から転落した際に下方から長軸圧がかかり、頭蓋底が突き上げられる介達外力によるものです。
4.頭蓋底は脳神経(12対)が脳に出入りする部分であり、骨折により脳神経損傷を合併しやすいです。
前頭蓋底骨折では、嗅神経や視神経損傷。
中頭蓋底骨折では、顔面神経損傷。
後頭蓋底骨折では、舌咽神経、迷走神経、舌下神経損傷。
顔面の骨折
問題2 誤っているのはどれか。【難易度☆☆☆】
1.鼻骨骨折の斜鼻型は変形治癒を後遺しやすい。
2.眼科底破裂骨折は患側眼球の上転障害をきたす。
3.頬骨骨折は顔面への直達外力で発生する。
4.下顎骨骨折は関節突起部骨折が最も多い。
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答え
4
1.鼻骨骨折は、拳で殴られるなどの直達外力で発生し、打撃を受けた角度で鞍鼻型と斜鼻型に分けられます。
・正面から打撃を受けた場合は、鞍鼻型。鼻梁に陥凹を形成します。
・斜めから打撃を受けた場合は、斜鼻型。鼻がS字状に変形します。
発生頻度が高いのは斜鼻型です。
鞍鼻型と斜鼻型のいずれの場合も、変形癒合が多く発生します。
2.眼窩底破裂骨折は、眼窩に加わった外力(ボールや拳)により、眼窩内の圧力が高まり、眼窩の底面が損傷する上顎骨の骨折です。
眼球の上転障害(上に眼を向けることが出来ない)、眼球の後退、複視や視野障害を発症します。
3.頬骨は頬部に突出する骨で、拳で殴られるなど直達外力で骨折します。
4.下顎骨骨折は顔面の骨折ではもっとも頻度が高い骨折です。
体部骨折と枝部骨折に分けられます。
転倒時のアゴへの直達外力で発生する体部骨折の発生頻度が高いです。
枝部骨折では関節突起部の骨折が多く、側方からの打撃や顎関節脱臼に合併することもあります。
頸椎の骨折
問題3 頸椎骨折の発生部位で正しいのはどれか。【難易度☆】
1.第1頸椎 ― バースト骨折
2.第2頸椎 ― ジェファーソン骨折
3.第5頸椎 ― ハングマン骨折
4.第7頸椎 ― スコップ作業者骨折
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答え
4
1.バースト骨折は、頸椎の椎体破裂骨折で、尻餅を衝いて転倒するなどの脊椎長軸方向の圧迫力が原因となります。
中・下位頸椎(第3~第7頸椎)に発生します。
2.ジェファーソン骨折は、環椎(第1頸椎)破裂型骨折です。
転倒時の長軸圧により環椎が(後頭骨と軸椎に挟まれて)、前弓と後弓、左右の外側塊の4つの骨片ができるのが特徴です。
3.ハングマン骨折は、軸椎(第2頸椎)関節突起間骨折です。
ハングマンhangmanとは絞首刑執行人のことで、絞首刑を執行された人や首吊り自殺者にみられることから名前の由来があります。
頸椎への過伸展、屈曲圧迫力により軸椎の左右の椎弓根が骨折し、椎体からの離開がみられます。
4.スコップ作業者骨折は、頸椎の棘突起、特に第7頸椎棘突起に起こる骨折です。下位頸椎だけでなく上位胸椎棘突起にも発生します。
建築土木作業やゴルフなどのスポーツにおいて、繰り返しの筋の牽引作用(僧帽筋や菱形筋と考えられる)により発生する疲労骨折です。
胸腰椎の骨折
問題4 胸腰椎椎体圧迫骨折で誤っているのはどれか。【難易度☆☆】
1.高齢者に多い骨折である。
2.胸腰椎移行部に最も好発する。
3.脊髄損傷を伴うことが多い。
4.ベーラー整復法が有用である。
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答え
3
脊椎の椎体圧迫骨折は、脊柱に長軸方向からの圧迫力と過度屈曲力が働き、発生します。
過度屈曲力により椎体の前方が楔状に変形します。
1.スポーツでの衝突や高所からの転落の他、高齢者や骨粗鬆症では軽い尻餅などでも発生します。
2.発生部位は、生理的に外力を受けやすい胸腰椎移行部(第12胸椎と第1腰椎)に発生がもっとも多く、次いで後彎の強い第6~第8胸椎に好発します。
3.椎骨に加わる力は椎体の前方にかかる為、椎体の後方を通る脊髄の損傷は少ないです。
一方で末梢神経障害は合併することがあり、その場合は罹患高位に一致する帯状痛がみられます。
4.ベーラー法は、患者を腹臥位で反張位(腹臥上体反らしの肢位)とする整復法です。
胸骨の骨折
問題5 胸骨骨折で誤っているのはどれか。【難易度☆】
1.体部骨折が多い。
2.横骨折が多い。
3.腹式呼吸となる。
4.偽関節になりやすい。
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答え
4
胸骨骨折は、交通事故でのハンドルやシートベルトの直達外力で発生することが多く、介達外力はまれです。
1.発生頻度の最も高いのは胸骨体部で、次いで胸骨柄結合部(柄体境界部、胸骨角)です。
2.骨折型は直達外力、介達外力ともに横骨折が多く、直達外力では陥凹骨折や陥没骨折もみられる。
3.胸骨は胸郭を構成する骨であり、胸式呼吸では骨折部が動揺し、疼痛が増強されます。
そのため肩をせぼめ、背中を丸める疼痛緩和姿勢をとり、腹式呼吸となります。
4.偽関節の発生は少なく、予後は良好です。
参考文献
・南江堂「柔道整復学・理論編 改訂第7版」
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