社会保障制度と国民医療費のまとめ【必修問題】

必修問題のまとめ

こんにちは。塾長のFです。

柔道整復師国家試験で今回の範囲の問題数は2~3問です。

社会保険を取り扱う柔道整復師として、ここは理解しておかないとダメなところですね。

下の方に過去問も載せています。先に過去問したい人はこちら(国家試験過去問)。

今日もF塾でガッツリ勉強していきましょう!

社会保障制度とは

社会保障制度の概念

社会保障制度とは、

・人生で経験するリスク(病気、けが、障害、失業、出産、老齢、死亡など)を補てんするセーフティネット。

・個人の力ではどうしようもない生活上のリスクに対して、社会全体で助け合い、支えようとする仕組み。

社会保障制度の法的根拠

憲法第25条(生存権の保障)

1)すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

2)国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

社会保障制度の4つの柱

1)社会保険

2)社会福祉

3)公的扶助

4)公衆衛生

社会保険制度

・加入条件に該当する者(被保険者)があらかじめ保険料を拠出し、リスクに遭遇した被保険者に給付される制度。

<strong>F塾長</strong>
F塾長

被保険者、保険者って?

・被保険者は保険に加入し、保険給付を受ける人のことです。

・保険者は保険料を徴収し保険給付を行うなど、保険制度を管理・運営する組織のことです。
 社会保険制度ではそれぞれに保険者が違うので、国家試験のキーワードとなっています。

医療保険年金保険介護保険雇用保険労働災害補償保険(労災保険)の総称。

・加入は義務(強制加入)である。

・被保険者以外にも国や地方公共団体、事業主(企業)なども財源として拠出している。

・給付方法には金銭で支給される現金給付とサービスとして提供される現物給付がある。

社会福祉制度

・身寄りのない老人、児童や母子家庭、障害者など社会的弱者に対して、公的な支援を行う制度。

・保育所や障害者支援施設、老人福祉施設の設置や児童手当などの支給。

老人福祉施設

・老人福祉法(第五条の三)によって定められた施設

1)介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)

2)養護老人ホーム

3)軽費老人ホーム

4)老人短期入所施設

5)老人福祉センター

6)老人介護支援センター

*介護老人保健施設、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、介護医療院は老人福祉施設ではない。

<strong>F塾長</strong>
F塾長

【介護老人福祉施設と介護老人保健施設 ややこしい⁈】

・介護老人福祉施設(とくよう)は日常生活の身体介護が目的で入居期間は終身です。

・介護老人保健施設(ろうけん)は医療的ケアやリハビリが目的で入居期間は最大6か月です。

公的扶助(生活保護)

・生活困窮者に対して、最低限度の生活を保障し、自立を助ける制度。

生活保護法のもと、下記の8種類の扶助を行う。

生活保護法における扶助の種類

1)生 活
2)教 育
3)住 宅
4)医 療
5)介 護
6)出 産
7)生 業
8)葬 祭

公衆衛生

・国民が健康に生活できるよう様々な事項についての予防、衛生のための制度。

・感染症対策としての予防接種、がん検診、消毒作業、ペット管理などが含まれる。

医療保険制度と国民医療費

医療保険制度の概要と目的

1)制度の概要
・疾病や怪我に備えて、あらかじめ加入者(被保険者)が保険料を拠出し、医療を受けたときに医療費の一部が給付される社会保険制度の一つ。

2)制度の目的
・医療費負担により国民が経済的困窮に陥ることを防止することを目的とする。

3)加入要件
・全国民が加入を義務付けられている。(国民皆保険という)
 *但し、生活保護受給者は加入できない。

4)保険給付の受け方
現物給付(保険医療機関で医療を受けたときに療養の給付は診療サービスという形で支給される。)

医療保険の給付割合

・原則7割(自己負担3割)。
年齢や所得により変わる。

年齢自己負担割合
6歳以下
(義務教育就学前)
2割
6歳 ~ 69歳3割
70歳 ~ 74歳2割
(現役並み所得者は3割)
75歳以上1割
(一定以上所得者は2割)
(現役並み所得者は3割)

医療保険制度の体系

保険種別被保険者(受給者)保険者
後期高齢者医療制度75歳以上
65~74歳の障害認定者
後期高齢者医療広域連合
健康保険法
(被用者保険)
政府管掌健康保険
(協会けんぽ)
中小企業の会社員など全国健康保険協会
船員保険漁師、船舶乗組員
組合健康保険大企業の会社員など健康保険組合
共済保険公務員、教職員など共済組合
国民健康保険法自営業、退職者、無職都道府県・市町村
国民健康保険組合

国民医療費

・国民医療費とは、医療機関等における保険診療の対象となる傷病の治療に要した1年間の費用の推計。

国民医療費に含まれるもの・含まれないもの

含まれる含まれない
医科・歯科における診療費先進医療・高度医療
入院時食事・生活医療費入院時室料差額分
医科材料差額分
訪問看護・医療費美容整形費
薬局調剤医療費正常な妊娠・分娩
柔道整復師・はり師・きゅう師等による施術費健康診断・人間ドック
集団検診
移送費(健康保険適用分)介護保険法による居宅・施設サービス
補装具(健康保険適用分)医師の指示以外のマッサージ等
固定した身体障害の義肢・義眼
めがね・コンタクトレンズ

国民医療費の動向

・国民医療費は増加の一途をたどっている。

・増加の原因・・・少子高齢化、医療技術体制の高度化など。

厚生労働省HP「令和2年度国民医療費の概況」より

国民医療費の財源

1)公 費 ・・・38.4%
 *国庫25.7%、地方12.7%

2)保険料 ・・・49.5%
 *事業主21.3%、被保険者28.2%

3)患者負担・・・11.7%

国民医療費の現状(令和2年(2020年))

国民医療費

42兆9665億円
 *令和2年度は前年に比べ減少となったが、8年連続40兆円越え

年齢階級別構成割合
 ・65歳未満・・・38.5%
 ・65歳以上・・・61.5%

*高齢者の医療費が約6割を占める。

一人当たりの国民医療費

34万600円

年齢階級別医療費
 ・65歳未満・・・18万3500円
 ・65歳以上・・・73万3700円
 ・75歳以上・・・90万2000円

*後期高齢者の医療費は65歳未満の約5倍

国内総生産(GDP)に対する比率

8.02%

<strong>F塾長</strong>
F塾長

国内総生産(GDP)って?

 日本国内で1年間に生産されたモノやサービスなどの付加価値の合計です。いわば「日本が稼いだお金」です。

 2020年は535兆円。これはアメリカ、中国に次ぐ第3位。ですが1990年代からほぼ横ばいで、国民一人当たりでいうと世界第25位。日本経済はオワコン⁈

傷病分類別診療費の構成割合

 1位 循環器疾患  ・・・19.5%
 2位 新生物(腫瘍)・・・15.2%
 3位 筋骨格系   ・・・ 8.1%
 4位 損傷など外因 ・・・ 7.9%
 5位 泌尿・生殖器 ・・・ 7.4%

柔道整復療養費

2,863億円
(対前年度比 -9.9%)

国民医療費に占める割合・・・0.67%

<strong>F塾長</strong>
F塾長

柔道整復療養費、厳しい現状

 柔道整復療養費は平成24年以降9年連続で減少傾向です。

 医療保険適用の厳格化、整骨院への通院控え、実費施術への移行などの現状が如実に表れています。

介護保険制度

介護保険制度の概要と目的

・介護保険法(2000年施行)をもとに創設された社会保険制度の1つ。

・家族の負担を軽減し、介護を社会全体で支えることが目的。

40歳以上の者は加入が義務付けられている。(介護保険料を納付する)

保険者と被保険者

1)保険者 ・・・市町村

2)被保険者

 ・第1号被保険者・・・65歳以上で要介護(要支援)認定を受けた者

 ・第2号被保険者・・・40歳~64歳で要介護(要支援)認定を受けた者
            *但し、加齢に伴う疾病(特定疾病)による場合に限定

【特定疾病】

1)末期がん
2)関節リウマチ
3)筋萎縮性側索硬化症
4)後縦靭帯骨化症     
5)骨粗鬆症
6)認知症
7)パーキンソン病
8)脊髄小脳変性症
9)脊柱管狭窄症
10)早老症
11)多系統萎縮症
12)糖尿病による合併症
13)脳血管疾患
14)閉塞性動脈硬化症
15)慢性閉塞性肺疾患(COPD)
16)変形性関節症(膝、股)

介護保険の財源

1)保険料・・・50%

2)公 費・・・50%
 *国25%、都道府県12.5%、市町村12.5%

要介護認定

・市町村の調査員や主治医の意見書をもとに介護認定審査会が判定を行い、市町村が認定する。

1)要支援(1~2)
 ・部分的な介護が必要になったときに、介護予防給付を受けることができる。

2)要介護(1~5)
・介護が必要になったときに、介護給付を受けることができる。

介護給付割合

・9割給付(自己負担1割)

労働者災害補償保険制度(労災保険)

労災保険制度の概要と目的

・労働者災害補償保険法に基づき、労働者の業務上あるいは通勤による傷病に対して必要な保険給付を行う制度。社会保険制度の1つ。

・被災労働者の社会復帰の促進、労働者やその遺族の救護、適正な労働条件の確保などが目的。

保険者、被保険者、加入者

1)保険者 ・・・政府
        *厚生労働省、都道府県労働局、労働基準監督署が事務を行う。

2)加入者 ・・・事業主
        *1人でも雇っていれば加入義務がある。
        *保険料は全額事業主負担。

3)被保険者・・・賃金を支払われている全ての者
        *正社員、日雇い、パート、アルバイト等を含む。
        *個人事業主、企業の経営者は含まれない。

保険給付

・業務災害及び通勤災害にあったとき給付される。

1)療養給付
・医療機関等で療養を受けたとき、必要な給付される。

2)休業給付
・労働することができず、賃金を受けられないとき、休業4日目から1日に付き基礎日額の相当額が給付される。

3)障害給付
・障害が残ったとき、障害の程度に応じ、年金や一時金が給付される。

4)遺族年金
・被保険者が死亡したとき、遺族に年金や一時金が給付される。

5)介護給付
・介護を受けたとき、一定の介護費用が給付される。

公的年金制度

公的年金制度の概要

・国民年金法、厚生年金保険法に基づき、高齢者や障害者などの生活を支える制度。社会保険制度の1つ。

・現在の高齢者世帯の収入の約7割を公的年金の給付が占めており、高齢者の生活基盤として極めて重要な役割を担っている。

・年金給付の総額は55兆円を超えており(令和元年)、社会保障費に占める割合がもっとも大きい。

公的年金制度の特徴

・現役世代が拠出した保険料を仕送りのように高齢者などに年金として給付される。(賦課方式
 *自分が将来貰える年金を積み立てているわけではない。

・賦課方式を採用していることで、急激なインフレなどの経済変動に強い。

・生涯にわたって受給できる。
 *長生きして生活資金が枯渇するリスクに対応できる。

障害年金遺族年金がある。

公的年金制度のしくみ

・公的年金制度は20歳以上60歳未満のすべての者が加入する国民年金保険と、会社員や公務員が加入する厚生年金保険の「2階建て」構造となっている。

年金給付の種類

1)老齢年金
・受給資格期間(10年)を満たしていれば、原則65歳より支給される。
・厚生年金保険の加入者は加入期間と賃金に応じて老齢厚生年金も併せて支給される。

2)障害年金
・障害が残ったとき、障害等級に応じて支給される。
・厚生年金の加入者は加入期間と賃金に応じて老齢障害年金も併せて支給される。

3)遺族年金
・生計を維持していた年金加入者が死亡した場合、遺族に支給される。
・厚生年金の加入者は加入期間と賃金に応じて老齢遺族年金も併せて支給される。

国家試験過去問

問題 健康保険の被保険者の自己負担割合で誤っているのはどれか。(第30回)

1.無 料  ―  就学前児童
2.1 割  ―  75 歳以上(現役並み所得者を除く)
3.2 割  ―  70 歳以上75 歳未満(現役並み所得者を除く)
4.3 割  ―  70 歳未満

答えと解説をみる
答え 

.義務教育就学前の児童の自己負担割合は原則2割です。

医療保険の給付割合をみる





問題 業務上の災害に対する保険給付はどれか。(第30回)

1.介護保険
2.雇用保険
3.健康保険
4.労働者災害補償保険

答えと解説をみる
答え 

1.介護保険は介護が必要なときに備える社会保険です。

2.雇用保険は失業リスクに備える社会保険です。

3.健康保険(医療保険)は病気や怪我に備える社会保険です。

.労働者災害補償保険は業務上や通勤途中の災害に備える社会保険です。

労働者災害補償保険の詳細をみる





問題 国民医療費に含まれるのはどれか。(第29回)

1.美容整形費
2.人間ドックの費用
3.治療費(保険適用分)
4.介護保険法による施設利用費

答えと解説をみる
答え 

1.美容整形など医療ではないものは含まれません。

2.健康診断や集団検診は含まれません。

4.介護保険法による介護サービス費用は含まれません。

国民医療費に含まれるもの・含まれないものをみる





問題 平成29年度の国民医療費で正しいのはどれか。(第29回)

1.介護保険費用が含まれる。
2.財源は公費が50%を占める。
3.柔道整復療養費は1%を下回る。
4.年齢階級別では65歳以上が80%を占める。

答えと解説をみる
答え 

1.介護保険の介護サービス費用は含まれません。

2.公費は約38%です。

.柔道整復療養費の国民医療費に占める割合は約0.7%です。

4.65歳以上の割合は約60%です。

国民医療費の詳細をみる





問題 被用者保険で正しいのはどれか。(第29回 一般問題)

1.保険者は市町村である。
2.高額療養費制度が設けられている。
3.医療給付の患者負担は原則1 割である。
4.業務上傷病に対し傷病手当金が支払われる。

答えと解説をみる
答え 

被用者保険とは、会社員や公務員などの雇われている者が加入する医療保険です。

1.保険者は全国健康保険協会健康保険組合共済組合です。

.高額療養費制度とは、1カ月の医療費の自己負担額が高額となった場合に、限度額を超えた分が払い戻される制度です。
 限度額は年齢や収入によって異なります。
 なお、高額療養費制度は被用者保険だけでなく、国民健康保険、後期高齢者医療制度にも適用されます。

3.医療給付の自己負担は原則3 割です。

4.業務上傷病に対しては労働災害補償保険(労災)が適用されます。

医療保険制度の体系をみる





問題 国民医療費で正しいのはどれか。(第28回 一般問題)

1.健康診断の費用が含まれる。
2.国民医療費の財源には公費が含まれる。
3.医科診療医療費のうち大部分は入院医療費が占める。
4.人ロ一人当たりの国民医療費が最も高額な年齢階級は45~64 歳である。

答えと解説をみる
答え 

1.健康診断、集団検診の費用は含まれません。

.財源には公費、保険料、患者負担が含まれます。

3.医科診療医療費の国民医療費に占める割合は72%で、そのうち入院が38%、入院外が34%です。

4.一人当たりの国民医療費で最も高額な年齢階級は65歳以上です。

1人当たりの国民医療費をみる





問題 我が国の医療保険制度で誤っているのはどれか。(第27回 一般問題)

1.医療保険の制度は国民皆保険である。
2.医療給付は原則、現金給付の形をとる。
3.保険料に財源を求める社会保険方式である。
4.健康保険組合、共済組合などを保険者と呼ぶ。

答えと解説をみる
答え 

1.年齢、収入に関わらず全国民に医療保険制度に加入する義務があります。

.医療給付は原則、現物給付です。

3.我が国の医療保険制度は、被保険者が保険料を払い、医療を受けたときに給付される社会保険の1つです。

4.保険者には健康保険組合、共済組合、全国健康保険協会、後期高齢者広域連合があります。

医療保険制度の概要をみる





問題 国民医療費で誤っているのはどれか。(第24回 一般問題)

1.公費と医療保険、後期高齢者医療給付、患者負担で構成される。
2.国民所得に対する割合は5%を下回る。
3.傷病別医療費構成割合では循環器疾患が最も多い。
4.65歳以上の一人あたりの国民医療費は65歳未満の4倍を超える。

答えと解説をみる
答え 

.国民所得に対する割合は約11%。2009年度より現在に至るまで10%を超えています。

国民医療費の現状をみる





問題 健康保険で医療給付の対象となっているのはどれか。(第18回 一般問題学)

1.医師による予防接種
2.医師による健康診断
3.医師の同意による施術
4.助産師による正常分娩

答えと解説をみる
答え 

.医師の同意による施術とは、柔道整復師による骨折と脱臼の施術と思われます。
 柔道整復療養費は医療給付の対象となります。

国民医療費に含まれるもの・含まれないものをみる

参考文献

・医歯薬出版「社会保障制度と柔道整復師の職業倫理」
・厚生労働省HP「社会保障とは何か」国民医療費の概況





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