医療過誤、リスクマネジメントのまとめ【必修問題】

必修問題のまとめ

こんにちは。塾長のFです。

柔道整復師国家試験でこの範囲の問題数は1~2問です。

法律的な要素もあり、とっつきにくいですがここを捨てるなんてもったいない!

慣れたら確実に1点とれるので絶対抑えておきましょう。

下の方に過去問も載せています。先に過去問したい人はこちら(国家試験過去問)。

今日もF塾でガッツリ勉強していきましょう!

医療事故とインシデント

医療事故、医療過誤、インシデントの関係

医療事故(アクシデント)

医療事故とは、

医療にかかわる場所で、医療の全過程において発生するすべての人身事故医療従事者の過誤、過失の有無を問わない。

(厚生労働省リスクマネージメントスタンダードマニュアル作成委員会)

1)どのような被害か
 ・死亡、生命の危機、病状の悪化などの身体的被害
 ・苦痛、不安などの精神的被害

2)医療にかかわる場所
 ・診療所、病院、助産所、歯科医院など。
 ・柔道整復施術所も含まれる。

3)医療の全過程
 ・診察、治療だけでなく、予防医療、リハビリテーションに至るまで。
 ・むろん柔道整復施術も含まれる。
 ・患者が病院の廊下で転倒し負傷など、医療行為とは直接関係ないものも含まれる。

4)すべての人身事故
 ・患者だけでなく、注射針の誤刺など医療従事者に被害が生じた場合も含まれる。

5)医療従事者の過誤、過失
 →医療過誤

医療過誤

医療過誤とは、

医療事故のうち、医療従事者が、医療の遂行において、医療的準則に違反して患者に被害を発生させた行為。」

*医療的準則・・・医療人が守るべきルール、規範。

 医療過誤は、医療契約上の債務不履行にあたり、不法行為にもとづく損害賠償請求の対象となる。

*債務不履行・・・義務を果たしていないこと。

医療契約とは

・患者が診療を受けるとき、患者と医療側は契約を結ぶ。これを医療契約という。

・医療契約は患者が診察を申し込み、医療側が診療を開始した時点で成立する。
 *契約書にサインしていなかったとしても契約したことになる。

・医療契約は民法上の準委任契約にあたる。

<strong>F塾長</strong>
F塾長

【準委任契約とは】

・法律行為以外の特定の業務を遂行することを委託する契約です。

・業務の遂行を委託するのであって業務の完成の義務はありません。


ちなみに法律行為を委託するときは委任契約となります。

*弁護士、税理士、司法書士に業務を依頼するときなど。

・治療(施術)することが目的であって、治癒を目的とした契約ではない。

・契約が成立すると医療側、患者側それぞれに義務と権利が発生する。

医療契約に際して生じる義務と権利

1)医療側の義務(債務)
・適切な診療・治療・施術を行う義務。
・善良な管理者の注意義務(善管注意義務

<strong>F塾長</strong>
F塾長

【善管注意義務とは】

・職業や専門家としての能力、社会的地位から当然期待される注意義務のことです。


 具体的には、患者の点滴を他者のものと間違えないように名前をチェックするなど。

2)医療側の権利(債権)
・診察、治療や施術の費用を請求する権利。
医師の裁量権

<strong>F塾長</strong>
F塾長

【医師の裁量権とは】

・医師が患者にとって最も有効だと判断した医療行為を医師の判断において実施することができる権利です。


・医療は高度の専門的な分野であり、患者自身が判断するのは困難なため、一定の権限を医師に与えることで患者の利益になると考えられています。

・但し、医師の独断にならないよう以下の制約が課されています。

① 医療水準を満たすものでなければならない。
② 患者の自己決定権を尊重するものであること。

3)患者側の義務(債務)
・治療費を支払う義務。
・診療行為に協力する義務など。

4)患者側の権利(債権)
・自己決定権。
・選択の自由の権利など。

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問われる責任
刑事責任

・業務上過失致死傷罪などにより、刑罰(懲役、禁固、罰金など)の対象となる。

民事責任

・不法行為(過失・ミス)や債務不履行(善管注意義務違反)による損害賠償請求の対象(医療訴訟)となる。

<strong>F塾長</strong>
F塾長

医療訴訟とは

・医療過誤などによって損害を被った場合に、医療従事者に損害賠償責任(お金)を請求する民事訴訟です。

・一般に医療訴訟は患者側の勝訴率は低い(約20%)といわれています。

 理由として下記の点があげられます。

① 患者側に専門的な医療知識が乏しい。

② 過失(ミス)があったことを患者側が立証しなければならない。

③ 証拠(カルテなど)が医療側に保管されている。

・広い意味では業務上過失致死傷罪を問う刑事訴訟を含みます

行政責任

・免許の欠格事由に該当した場合、国(厚生労働大臣)による命令で業務停止免許の取消しになることがある。

【免許の相対的欠格事由】

医師法第4条

次の各号のいずれかに該当する者には、免許を与えないことがある。

 一 心身の障害により医師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省
令で定めるもの

 二 麻薬、大麻又はあへんの中毒者

 三 罰金以上の刑に処せられた者

 四 前号に該当する者を除くほか、医事に関し犯罪又は不正の行為のあつた者

使用者責任

・医療過誤が発生した場合は、医療従事者個人のみならず医療機関の経営者、管理者も責任を問われる。

民法第715条

 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。

*使用者・・・雇っている経営者、企業のこと
*被用者・・・雇われている者、労働者のこと

医療過誤まとめ

1)医療従事者の過失・ミスにより発生する。(予見できなかった)

2)患者に被害が発生した。(医療側の被害は含まない。)

3)刑事責任、民事責任、行政責任を問われる可能性がある。

インシデント(ヒヤリ・ハット事例)

インシデントとは、

 診療の現場で”ヒヤリ”としたり、”ハッと”した経験をした事例。

 「誤った医療行為が実施される前に発見されたもの、あるいは実施されたが患者に影響を及ぼさなかったもの。」

事例)
・患者に点滴するために針を刺入しようとしたところ、点滴薬が当該患者用でないと気付いた。

事例)
・片麻痺の患者が歩行訓練中に転倒したが、特に怪我はなかった。

リスクマネジメント

 医療現場はヒトの命を扱う場所であり、常に危険と隣り合わせである。

 「ヒトはミスを犯すもの」を前提に、ミスを個人の責任にするのではなく、ミスが起きた原因を解析し医療機関全体の組織的な取り組みとしての位置付けがリスクマネジメントである。

リスクマネジメントの目的

1)医療事故、医療過誤の防止、医療訴訟の回避。

2)事故防止活動を通して、組織の損傷を最小限に抑えること。

3)患者・家族および職員の安全を確保すること。

4)医療の質を保証すること。

リスクマネジメントのプロセス

・リスクマネジメントはリスクの把握分析と評価対処再評価のプロセスを経る。

インシデント・レポート

・誤った医療行為の実施につながる出来事や、医療ミスが発生するおそれのある事態を指すインシデント(ヒヤリ・ハット)の報告書のこと。

・インシデントを記録し共有することで、医療事故の防止医療の安全の確保が目的である。

ハインリッヒの法則

・労働災害の発生確率を分析したもの。

「1件の重大事故の裏には29件の軽微な事故と300件の怪我に至らない事故がある。」

医療事故調査制度

・医療事故再発防止のために医療法の改正により制度化されたしくみ。

・医療事故が発生した医療機関は院内調査し、調査報告を医療事故調査・支援センターが収集分析することで医療の安全を確保するのが目的である。

医療事故調査・支援センターの業務

1)医療事故の報告により収集した情報の整理及び分析を行う。

2)病院等の管理者に対し、情報の整理及び分析結果の報告を行う。

3)病院等の管理者又は遺族から、当該医療事故について調査の依頼があつたときは、必要な調査を行い、結果を報告する。

4)医療事故調査に係る知識及び技能に関する研修を行う。

5)医療事故調査の実施に関する相談に応じ、情報の提供及び支援を行う。

6)医療事故の再発防止に関する普及啓発を行う。

7)その他医療の安全を確保するための必要な業務を行う。

国家試験過去問

問題 医療訴訟で誤っているのはどれか。(第30回)

1.医療従事者の過失を問う。
2.刑事・民事及び行政責任を問う。
3.医療現場のヒヤリハットを問う。
4.医療経営者の使用者責任を問う。

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答え 

1.医療訴訟は医療従事者の過失のある医療過誤の場合に起こります。

2.医療訴訟は民事責任、刑事責任を問います。また刑事罰により罰金以上の刑に処せられた場合は免許の欠格事由に該当するため、免許の取り消しなど行政処分を受ける場合があります。

.ヒヤリハットは医療過誤ではないため、医療訴訟で問われることはありません。

4.医療過誤の場合、経営者にも使用者責任があります。

医療訴訟をみる





問題 医療事故調査制度で医療事故の報告先はどれか。(第29回)

1.厚生労働大臣
2.都道府県知事
3.医療安全支援センター
4.医療事故調査・支援センター

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答え 

3.医療安全支援センターとは、医療に関する苦情や相談に対応し、医療安全に関する助言および情報提供等を行う医療法に定められた施設です。

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問題 医療現場においてインシデントはどれか。(第28回)

1.ヒヤリ・ハット
2.医療事故
3.医療過誤
4.医療過失

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問題 医療におけるリスクマネジメントの概念で誤っているのはどれか。(第28回)

1.医療事故の防止
2.危機管理
3.医療に対する苦情対応
4.利益の誘導

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問題 医療事故調査・支援センターの業務はどれか。(第26回)

1.医療事故の再発防止に関する普及啓発を行う。
2.患者又は家族からの医療における苦情又は相談に応ずる。
3.住民に対し医療の安全確保に関する必要な情親の提供を行う。
4.病院等の管理者又は従業者に医療の安全に関する研修を実施する。

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答え 

2,3,4は医療安全支援センターの業務です。

医療事故調査・支援センターの業務をみる





問題 医療従事者が医療の遂行において医療的準則に違反して患者に被害を発生させるのはどれか。(第25回)

1.インシデント
2.医療過誤
3.医療事故
4.インフォームドコンセント

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答え 

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問題 医療危機管理の概念でないのはどれか。(第24回)

1.インフォームド・コンセント
2.リスク・マネジメント
3.インシデントレポート
4.ヒヤリハット

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参考文献

・医歯薬出版「社会保障制度と柔道整復師の職業倫理」
・厚生労働省「医療事故調査制度について」

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