【生理学】循環のしくみ1~心臓の機能、心筋の性質~

生理学のまとめ

こんにちは。塾長のFです。

生理学でいう循環とは「血液やリンパが全身を巡る」ことです。

どのように巡っているのでしょうか? なんのために?

またどのように調節されているのでしょうか?

今日は循環の要、心臓の機能についてまとめてみました。

循環系

循環系の役割

循環系の役割は、物質・熱を運搬し、生体の恒常性(ホメオスタシス)を維持すること。

1)ガスの運搬
・肺から取り入れた酸素を全身へ運搬する。
・体内で生じた二酸化炭素を排出するため、肺へ運ぶ。

2)栄養素・老廃物の運搬
・小腸から吸収した各栄養素を貯蔵するため、肝臓へ運ぶ。
・貯蔵された栄養素を必要とする組織へ運ぶ。
・代謝によって産生された尿素、クレチアニン、アンモニアなどの老廃物を腎臓へ運ぶ。

3)血球・血漿タンパクの輸送
・出血部位に血小板や凝固因子を運び、止血する。
・感染箇所に白血球を集め、免疫応答する。

4)ホルモンの運搬
・ホルモンを運搬し、細胞間伝達の手段となる。

5)熱の運搬
・筋や肝臓で生じた熱を全身に運び、体温を維持する。
・余分な熱を皮膚を通して放散させる。

小循環と大循環

・血液は心臓の2つのポンプ、すなわち右心室左心室により、それぞれ小循環と大循環とよばれる経路で送り出される。

看護rooのイラストを転載

1)小循環(または肺循環)
① 二酸化炭素を多く含む血液(静脈血)が右心室から拍出され、肺動脈を通る。

② 肺動脈を通ってへ向かい、ガス交換される。

③ 酸素を多く含む血液(動脈血)が肺静脈を通り、左心房に戻る。

【経路】 右心室 → 肺動脈 → 肺 → 肺静脈 → 左心房

【目的】 血液と肺胞気でガス交換を行う

2)大循環(または体循環)
① 酸素を多く含む血液(動脈血)が左心室から拍出され、大動脈を通る。

② 大動脈から全身の毛細血管を経由し、静脈に移行する。

③ 大静脈を経由し右心房に戻る。

【経路】 左心室 → 大動脈 → 全身の毛細血管 → 大静脈 → 右心房

【目的】 体細胞に酸素、栄養素、ホルモン、熱を供給し、代謝産物や老廃物を回収する。

心臓の機能

心臓の機能的解剖

右心房

・全身からの静脈血が上大静脈下大静脈を通って流入する。また心臓を栄養した血液が冠状静脈洞を介して流入する。

・右房室口(右心房と右心室の間)を介して右心室へ静脈血を送る

・右房室口には三尖弁(右房室弁)がある。(逆流防止)

右心室

・右心房から流入した静脈血を肺動脈を経由して肺へ送る。

・肺動脈への移行部には肺動脈弁がある。(逆流防止)

左心房

・肺からの動脈血が肺静脈を介して流入する。肺動脈口は左右二対の4個ある。

・左房室口(左心房と左心室の間)を介して左心室へ動脈血を送る。

・左房室口には僧帽弁(二尖弁、左房室弁)がある。(逆流防止)

左心室

・左心房から流入した動脈血を大動脈を介して全身へ送る。

・大動脈への移行部には大動脈弁がある。(逆流防止)

・心臓の4つの部屋のうち、もっとも筋層が厚い。

心筋の分類

1)心筋は骨格筋と平滑筋の中間
・心筋は横紋を有し構造的には骨格筋に似るが、不随意であるという点で機能的には平滑筋に近い。

2)心筋は固有心筋特殊心筋に分かれる。

固有心筋

・心筋の大半を占め、心臓のポンプ機能を担う。作業筋ともいう。

・電気的興奮(脱分極)の結果、収縮する。

・心筋細胞どうしが介在板によって連結され(ギャップ結合)、電気的興奮が瞬時に伝わり、同時に収縮する。

・心房あるいは心室全体がまとまって収縮するため、機能的合胞体という。

・心房と心室は線維輪によって絶縁されているため、心房と心室が同時に収縮することはない。

・固有心筋の電気的興奮は、刺激伝導系である特殊心筋により制御される。

特殊心筋

・電気的興奮(脱分極)を伝える刺激伝導系として働く。

・収縮タンパクは少なく、興奮伝導に特化している。伝導速度は固有心筋の約10倍速い。

・心筋細胞の興奮は下記の刺激伝導系が伝導する。

1)洞房結節
・キースフラック結節ともいう。
・右心房の上大静脈開口部付近にある。
・外部からの刺激なしに自発的に脱分極する。
・心臓に分布する交感神経によって活動が促進され、副交感神経によって活動が抑制される。
ペースメーカー細胞(歩調取り細胞)といわれる。
 *洞房結節が1分間に60回興奮すれば心拍数が60回/分になる。
・洞房結節の興奮は心房全体に伝わり、心房の固有心筋が同時に収縮する。

2)房室結節
・田原結節ともいう。
・右心房の冠状静脈洞開口部付近にある。
・洞房結節の興奮が伝わると脱分極を起こす。
・興奮を心室へ伝える。
・心房と心室は線維輪により絶縁されており、房室結節のみで連絡している。

3)ヒス束(房室束)、右脚・左脚
・ヒス束は房室結節からの興奮を右脚・左脚に伝える。
・右脚・左脚は心室中隔を下行する。

4)プルキンエ線維
・心室に分布、右脚・左脚からの刺激で脱分極した後、心室の固有心筋が同時に収縮する。

洞房結節 → 房室結節 → ヒス束、右脚・左脚 → プルキンエ線維
右心房  心房と心室の間    心室中隔       心室内膜

心筋の基本的性質

1)自動性
・心筋は自ら興奮し、収縮する。
・心臓を神経と切り離しても、収縮を続ける。
・生理的状態では洞房結節が心臓全体の興奮、収縮を支配するため洞調律という。
・洞房結節の興奮に不具合が生じたり、下位に伝わらなくなると房室結節以下の特殊心筋が順にペースペーカーとして機能する。

2)興奮性(電気的性質)
・心筋細胞は約-70mVのマイナスの静止膜電位をもつ。
・神経細胞や骨格筋細胞と同様に、刺激を受けると+40mVまで電位が上昇する脱分極(活動電位、興奮)を起こす。
心筋細胞は興奮した結果、収縮を引き起こす
・脱分極から再分極までの間、プラトーという長い不応期(約0.2秒)がある。
・プラトーは長時間続くCa2+の透過性増大(細胞内流入)により形成される。
・不応期が長いため、次の刺激が来ても興奮が起きない。

3)収縮性
・心筋の1回あたりの収縮時間は骨格筋に比べて長い
・収縮時間の長さは活動電位期に心筋細胞内に流入するCa2+の影響であり、細胞内に流入するCa2+が増加すると発生張力が増大する。
・心筋は脱分極につづいて収縮するが、不応期が長いために再分極までに1回の収縮が終わる。
・すなわち刺激を繰り返しても収縮の荷重(強縮)が起きず単収縮のみである。
・心臓に戻ってくる静脈血の量が多ければ多いほど、心筋線維は伸展され強い張力を発揮し、
心拍出量が増大する。これをスターリングの法則という。

心筋の性質まとめ

・自動性をもつ。
・自律神経により支配される。
・洞房結節がペースメーカー細胞となる。
・活動電位が長い。(プラトー)
・収縮時間が長い。(Ca2+が関係している。)
・単収縮しか起きない。
・1回拍出量は静脈還流量に比例する。(スターリングの法則)

国家試験過去問

問題 スターリングの心臓の法則はどれか。(第28回)

1.心室拡張期容積が増加すると1 回拍出量が増加する。
2.電気的興奮は刺激伝導系によって心室全体に拡がる。
3.心臓は外部からの刺激がなくても自発的に興奮・収縮する。
4.プラトー相に細胞内へ流入する Ca2+が収縮の引き金となる。

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問題 健常者において心臓の歩調とりとして働いている部位はどれか。(第26回)

1.心房筋
2.洞房結節
3.ヒス束
4.房室結節

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問題 心筋の特徴で正しいのはどれか。(第25回)

1.伸展すると発生張力が減少する。
2.心筋細胞同士は電気的に絶縁されている。
3.心筋細胞の興奮の持続時間は神経細胞のそれよりも短い。
4.細胞内に流入するCa2+が増加すると発生張力が増大する。

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問題 心臓の興奮伝導系で洞房結節に始まった興奮が最初に伝わる部位はどれか。(第24回)

1.左脚
2.ヒス束
3.房室結節
4.プルキンエ線維

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問題 心筋の特徴で誤っているのはどれか。(第22回)

1.自動性がある
2.活動電位の持続は骨格筋より短い
3.活動電位の経過中にカルシウムイオンが細胞内に流入する
4.伸展すれば伸展するほど大きな張力を発生する

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問題 酸素を多く含む血液が流れているのはどれか。(第21回)

1.門 脈
2.肺静脈
3.腎静脈
4.上大静脈

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問題 循環系で誤っているのはどれか。(第20回)

1.右心室より左心室では酸素分圧が高い。
2.左心室より右心室では二酸化炭素分圧が高い。
3.肺循環で酸素分圧は高くなる。
4.体循環で二酸化炭素分圧は低くなる。

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答え 

静脈血は酸素分圧が低く、二酸化炭素分圧が高いです。
・動脈血は酸素分圧が高く、二酸化炭素分圧が低いです。

1.右心系は静脈血が流れます。

.左心系は動脈血が流れます。

3.肺循環で静脈血動脈血になります。

4.体循環で動脈血静脈血になります。




問題 心筋で誤っているのはどれか。(第18回)

1.筋細胞がギャップ結合で連結している。
2.活動電位の持続が長い。
3.繰り返し刺激すると収縮の加重が起こる。
4.不応期が長い。

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問題 正常の心拍動における歩調とり部位はどれか。(第14回)

1.脚
2.洞房結節
3.房室結節
4.プルキンエ線維

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問題 心臓の興奮伝導系に属さないのはどれか。(第11回)

1.房室結節
2.プルキンエ線維
3.ヒス束
4.核鎖線維

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答え 

4.核鎖線維は、骨格筋の錘内筋線維(筋紡錘)です。


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