ご存じのように柔道整復師は医療に携わるものとして社会に貢献しています。
柔道整復師も当然ながら医療に関する倫理観、一定のルールを遵守しなければなりません。
開業権があることで、他の医療従事者よりもより厳しさが求められる場合もあると思います。
だからこそ国家試験の必修範囲になっているのでしょう。
今日の問題はちょっと難しいけどがんばっていきましょう。
個人情報保護とは
問題1 個人情報保護で誤っているのはどれか。【難易度☆☆☆】
1.個人情報には音声や動作の記録も含まれる。
2.患者の病歴は個人識別符号となる。
3.患者の宗教的信条は要配慮個人情報となる。
4.とくに重大な秘密を扱う者は刑法によって規定されている。
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答え
2
1.個人情報とは、下記に該当するものです。
・生存する個人に関する情報。
・氏名、生年月日などにより特定の個人を識別することができるもの。
・文書、図画、電磁的記録に記載・記録されたもの。
・音声、動作を含む。
2.個人識別符号とは、下記に該当する文字、番号、記号で特定の個人を識別することができるものです。。
・身体の一部の特徴(輪郭や指紋など)をコンピュータ用に変換した文字、番号、記号
・個人に割り当てられた文字、番号、記号(マイナンバーカードや運転免許証の番号)
3.要配慮個人情報とは、本人に不当な差別、偏見、不利益が生じないように配慮を要する個人情報のことです。
・人種、信条、社会的身分
・病歴、犯罪歴、犯罪被害の事実
4.刑法によって守秘義務が定められた者
・医師(歯科医師含む)
・薬剤師
・医薬品販売業者
・助産師
・弁護士
・弁護人、公証人
柔道整復師が「業務上知り得た情報」に関しては柔道整復師法で定められています。
医療契約上の債務不履行、医療過誤の責任
問題2 誤っているのはどれか。【難易度☆☆】
1.医療契約では医療機関は善管注意義務を負う。
2.医療過誤は債務不履行にあたる。
3.過失のない医療事故は医療過誤に含まれない。
4.医療過誤は行政責任の原因とならない。
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答え
4
1.患者が診療を受けるとき、患者と医療側は医療契約を結ぶことになります。
契約書にサインとか口約束しなくても、診療を開始し患者がそれを受け入れたなら契約が成立したことになります。柔道整復師と患者の場合も同様です。
このとき、患者にも医療側にも権利と義務が発生します。
患者側の権利・・・良質の医療を受ける権利、自己決定権など
患者側の義務・・・治療費を支払う義務、診療行為に協力する義務など
医療側の権利・・・費用を請求する権利、医師の裁量権など
医療側の義務・・・善良な管理者の注意義務(善管注意義務)
善管注意義務とは、職業や専門家としての能力、社会的地位から当然期待される注意義務のことです。
2、3.医療過誤は、医療の遂行において医療的準則に違反(=過失)して患者に被害を発生させたものをいいます。
医療者は上記のように善管注意義務を負うので、注意義務を怠り債務不履行(請け負った医療契約を履行できない)に至ると過失があったとみなされ、損害賠償請求の根拠となります。
4.医療過誤が発生すると、3つの責任を問われる可能性があります。
・刑事責任・・・懲役刑や罰金刑
・民事責任・・・損害賠償
・行政責任・・・免許の取り消しや業務の停止
柔道整復術が行えるのはいつ?
問題3 柔道整復師として施術を行うことができるのはどれか。【難易度☆☆】
1.柔道整復師試験の合格通知が届いたとき
2.親から免許証を相続されたとき
3.免許の申請書類を郵送したとき
4.柔道整復師名簿に登録されたとき
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答え
4
柔道整復施術が行えるのは、厚生労働大臣の免許を受けた者です。柔道整復師名簿に登録することにより免許が与えられます。
① 3年以上、養成施設において知識、技能を習得する。
② 国家試験に合格する。
③ 免許の申請を行う。
④ 名簿に登録される。と同時に免許が与えられる。
「免許が与えられる」とは、「免許証(という紙)をもらう」のと同じではありません。
「免許」というのは形のないものです。
形がないからこそ、名簿に登録されることが免許を与えられたことになるのです。
社会保険の保険者
問題4 社会保険と保険者の組合せで正しいのはどれか。【難易度☆☆】
1.国民健康保険 ― 健康保険組合
2.後期高齢者医療 ― 全国健康保険協会
3.労働災害保険 ― 政 府
4.介護保険 ― 都道府県
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答え
3
保険者とは、保険事業の運営を行うものです。
保険事業とは、保険料の納付を受けたり、保険給付を行うことです。
保険種別 | 被保険者の対象 | 保険者 |
後期高齢者医療 | 75歳以上 | 後期高齢者医療広域連合 |
65~74歳の障害認定者 |
被用者保険 | 協会けんぽ | 中小企業の会社員など | 全国健康保険協会 |
船員保険 | 漁師、船舶乗組員 |
健康保険 | 会社員など | 健康保険組合 |
共済保険 | 公務員・教職員など | 共済組合 |
国民健康保険 | 自営業、退職者、無職 | 都道府県、市町村
国民健康保険組合 |
介護保険 | 65歳以上(第1号被保険者)
40歳~64歳(第2号被保険者) | 市町村、特別区(23区) |
労働災害保険
雇用保険 | 事業所に所属する労働者 | 政 府 |
療養費制度のしくみ
問題5 療養費制度について誤っているのはどれか。【難易度☆☆】
1.医療機関において現物で給付される。
2.保険者がやむを得ないと認めたときに適用される。
3.療養費の支給の可否は保険者が決定する。
4.療養費の受領委任の取扱いは登録施術所においてのみ認められる。
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答え
1
1、2.通常の医療保険制度では、療養の給付は医療行為・診療サービスそのものを受ける現物給付が原則となっています。
例外的に、保険者がやむを得ないと認めた場合に療養費として現金給付される場合があります。
【療養費の支給条件】
・保険証が手続き中で未交付のため、保険診療が受けられなかったとき。
・感染予防のため、隔離された場合で薬価を徴収されたとき。
・医師の指示により義手、義足、義眼、コルセットを装着したとき。
・生血液の輸血を受けたとき。
・旅行中の急病で、保険医療機関でない病院で自費診療を受けた場合。
・柔道整復師等の施術を受けたとき。
3.療養費は、請求の審査も支給の可否も保険者が決定します。
4.療養費の受領委任払いの取扱い
・地方厚生局長や都道府県知事との協定(契約)に基づいています。
・一定の経験を積み、講習を受けた施術管理者のみが取り扱えます。
・登録(承諾)施術所のみ認められています。
受領委任払いの解説はこちら「柔道整復師は療養費をどう扱うのか。受領委任払いとは?」
参考文献
医歯薬出版「社会保険制度と柔道整復師の職業倫理」
医歯薬出版「関係法規 2019年版」
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