柔道整復師国家試験の必修範囲は、基本的に認定実技審査の対象項目と一致しています。
「実技では体が覚えてる!」という方も、文章でいわれると「?」の方も多いんじゃないでしょうか。
今日は上肢の骨折の整復と固定をテーマにして問題を解きながら解説していきます。
肋骨骨折の固定
問題1 肋骨骨折での固定の目的で誤っているのはどれか。【難易度☆】
1.骨折局所への圧迫
2.胸郭運動の確保
3.転位による二次的損傷の防止
4.疼痛の軽減
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答え
2
1.骨折局所への圧迫
・固定することにより骨折端部へ圧迫力がかかり、骨癒合が促進されます。
2.胸郭運動(呼吸運動)を抑制
・呼吸運動は肋骨の上下運動を伴うため、固定により骨折部の安静、再転位防止を図ります。
3.二次的損傷を防止
・特に内方転位した骨片端による内臓損傷などを防ぎます。
4.疼痛の緩和
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鎖骨骨折の整復
問題2 定型的鎖骨骨折の臥位整復法(鎖骨整復台使用)で、徒手整復開始時の患者の肢位で正しいのはどれか。【難易度☆☆】
1.肩関節内旋、屈曲位
2.肩関節外旋、伸展位
3.肩関節外旋、屈曲位
4.肩関節内旋、伸展位
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答え
4
定型的鎖骨骨折(中外1/3境界部骨折)の臥位整復法(鎖骨台使用)は、
① 患者を背臥位に寝かせます。
② 頭部を患側に傾け、両肩関節を外転・外旋・伸展位とし脱力させ自然整復を試みます。整復が不十分な場合は徒手整復を行います。
③ 患側腋窩に枕子を挿入し、両肩関節を軽度外転・内旋・伸展位で両手を腹部に乗せます。
④ 助手に両肩部を後外方へ圧迫させます。(短縮転位の除去)
⑤ 術者は患側上肢を1)外旋、2)内転、3)上方へ突き上げます。
1)、2)腋窩枕子が槓杆(テコ)の支点となり短縮転位が取り除かれます。
3)患肢が右の場合、肘部を術者の左手で突き上げるとそのあとの動作が行いやすくなります。また上方突き上げにより患肢の下垂転位が除去されます。
⑥ 術者はもう一方の手(患肢右の場合、右手)で近位骨折遠位端部を下方に押圧します。
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上腕骨外科頸骨折の整復
問題3 上腕骨外科頸外転型骨折の整復法で助手への指示で誤っているのはどれか。【難易度☆☆】
1.腋窩に挿入した帯で上内方へ牽引・固定させる。
2.肘関節直角位で上腕長軸方向へ牽引させる。
3.内方転位除去のため、上腕を外転させる。
4.前方転位除去の際、肩関節を屈曲させる。
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答え
3
上腕骨外科頸外転型骨折の整復法は、
① 患者を背臥位とし、腋窩に枕子を挿入し第1助手に帯などで上内方に牽引・固定させます。(対抗牽引に備える)
② 短縮転位除去のため、第2助手に肘直角位で上腕遠位方向に末梢牽引させながら上腕を外転させます。
③ 内方転位除去のため、第2助手に遠位骨片を内転させ、術者は遠位骨片を外方へ引き出す。
④ 前方転位除去のため、第2助手に遠位骨片を前方挙上させ、術者は小指球で遠位骨片を後方へ直圧する。
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上腕骨骨幹部骨折の固定
問題4 上腕骨骨幹部骨折の固定で正しいのはどれか。【難易度☆☆☆】
1.三角筋付着部より近位の骨折では、初期は肩関節70~80°外転位で固定する。
2.三角筋付着部より遠位の骨折では、近位骨片端の内側に綿花枕子をあて、固定する。
3.螺旋状骨折では上腕下垂位、肘直角位で固定する。
4.横骨折では螺旋状骨折よりも早く固定を除去する必要がある。
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答え
3
1.三角筋付着部より近位の骨折の固定では、近位骨片が内転しているので、肩関節0~30°外転位で固定します。(近位骨片の転位に合わせるのが固定の原則)
時間経過とともに良肢位である外転位固定へと移行します。
2.三角筋付着部より遠位の骨折では、近位骨片は前外方に転位しているので、それを抑える目的で近位骨片端の外側に枕子をあてます。また遠位骨片端の内側に枕子をあて固定します。
3.螺旋状骨折の固定肢位は、上腕下垂位、肘関節90°屈曲位、前腕中間位です。
1)三角筋付着部より近位の骨折、2)三角筋付着部より遠位の骨折、3)螺旋状骨折
いずれの場合も近位骨片は前方へ転位するので、枕子は近位骨片の前方にあてます。
4.固定期間は、横骨折で10週、螺旋状骨折で8週です。横骨折は骨折断端の面積が狭い為、骨癒合が悪く、短い固定は偽関節を生じやすくなります。
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コーレス骨折の固定
問題5 コーレス(Colles)骨折の固定後の確認で誤っているのはどれか。【難易度☆☆】
1.固定後に疼痛が大幅に軽減されない場合は整復・固定の不具合を疑う。
2.MP関節の運動が可能であるか確認する。
3.血行障害の有無は橈骨動脈の拍動で確認する。
4.運動性神経機能の確認をジャンケンで行う。
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答え
3
1.一般的に転位が整復され、適切な固定が実施されれば疼痛は格段に軽減し、手指の運動制限も改善されます。改善がみられない場合は整復・固定の不具合が考えられます。
2・コーレス骨折の固定ではMP関節手前までとしMP関節の運動は確保するので、固定後は関節拘縮防止と固定中の運動療法のためにMP関節の運動が阻害されていないか確認します。
3.固定後の血行障害の有無は、橈骨動脈拍動部は被覆されているため、爪圧迫検査により確認します。
4.運動性神経機能は、ジャンケンのパーとグーが正常に行うことが出来れば維持されていると確認できます。
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参考文献
南江堂 柔道整復学・実技編 改訂第2版
南江堂 柔道整復学・理論編 改訂第7版
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