こんにちは。塾長のFです。
整形外科の第3回です。身体部位別各論の問題を作ってみました。
今日もF塾でガッツリ勉強していきましょう!
頸部の損傷
問題1 頸椎後縦靱帯骨化症について正しいのはどれか。【難易度☆☆】
1.高齢女性に多い。
2.耐糖能異常の患者に多い。
3.脊柱管の後方に骨化が起こる。
4.弛緩性麻痺を呈する。
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答え
2
頸椎後縦靱帯骨化症は椎体の後壁を縦走する後縦靭帯が骨化する病態です。
脊柱管内で骨化容積が大きくなると脊髄損傷の原因となります。
1.発生には年齢、性別、人種、遺伝が関与します。
中高年の男性に好発、日本を含む東アジア人に多く、欧米人には少ないです。
2.糖尿病や肥満症の患者に発生頻度が高くなります。
3.後縦靭帯は脊椎の後方、すなわち脊柱管の前方を縦走しています。
4.脊柱管内を通る脊髄が圧迫されると、中枢神経麻痺となり痙性四肢麻痺を呈します。
四肢、体幹の疼痛、シビレ、筋力低下、歩行障害、巧緻運動障害、膀胱直腸障害などを発症します。
胸部の損傷
問題2 脊柱側彎症の原因で誤っているのはどれか。【難易度☆☆】
1.強直性脊椎炎
2.フォン・レックリングハウゼン von Recklinghausen 病
3.筋ジストロフィー
4.マルファン Marfan 症候群
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答え
2
脊柱側彎症は前額面上で脊柱が側方に彎曲した状態です。
椎骨の形状変化を伴わない機能性(非構築性)側彎症と、椎骨の形状変化を伴う構築性側彎症に大別されます。
機能性(非構築性)側彎症
1)疼痛性側彎症
・腰椎椎間板ヘルニアにみられる坐骨神経痛などによる側彎。
2)代償性側彎症
・脚長差や不良姿勢による側彎。
構築性側彎症
1)特発性側彎症
・側彎症全体の70~80%を占め、思春期の女子に発症するのが大半。
・胸椎の右凸側彎が多い。
2)症候性側彎症
・脳性麻痺
・急性灰白髄炎(ポリオ)
・脊髄空洞症
・骨形成不全症
・筋ジストロフィー
・フォン・レックリングハウゼン von Recklinghausen 病
・マルファン Marfan 症候群
・エーラス・ダンロス Ehlers-Danlos 症候群
3)変性腰椎側彎症
・加齢による椎間板変性による側彎。
・中年以降の女性に多い。
腰部の損傷
問題3 L4~L5間高位での椎間板ヘルニアの所見で適切なのはどれか。【難易度☆☆】
1.アキレス腱反射減弱
2.下腿外側の知覚低下
3.大腿四頭筋の筋力低下
4.ラセーグ Lasègue 徴候陰性
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答え
2
腰椎椎間板ヘルニアとは、椎間板の髄核が後方あるいは外方へ逸脱し、神経根を圧迫し腰部や下肢に坐骨神経痛を引き起こす疾患です。
画像引用元:公益社団法人 日本整形外科学会
最も多いのはL5、S1間で起き、S1神経根が障害されます。
F塾長
【ヘルニアでは1つ下の神経根が障害される】
解剖学的にL5とS1間の椎間孔を通るのはL5神経根ですが、ヘルニアによって圧迫されるのはS1神経根です。
これはL5、S1椎間板のより頭側で分岐したS1神経根が尾側に下行していく途中で圧迫を受けるためです。
所 見 | L4神経根障害 L3 ~L4間 | L5神経根障害 L4 ~L5間 | S1神経根障害 L5 ~S1間 |
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SLRテスト ラセーグ徴候 | | 陽性 | 陽性 |
FNSテスト | 陽性 | | |
筋力低下 | 大腿四頭筋 前脛骨筋 | 前脛骨筋 長趾伸筋 長母趾伸筋 | 下腿三頭筋 長・短腓骨筋 長趾屈筋 長母指屈筋 |
腱反射消失 | 膝蓋腱反射 | | アキレス腱反射 |
感覚麻痺 | 下腿内側 | 下腿外側 ~ 足背内側 | 足背外側 ~ 下腿後面 |
上肢の損傷
問題4 発生に性差が少ないのはどれか。【難易度☆】
1.ばね指(弾発指)
2.マレットフィンガー
3.デュプイトラン拘縮
4.マーデルング変形
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答え
2
1.ばね指(弾発指)は、MP関節掌側のA1プーリー(腱鞘)に起こる狭窄性腱鞘炎です。母指に好発しIP関節の運動制限がみられます。閉経以降や周産期の女性に好発します。
F塾長
【腱鞘炎はなぜ女性に多い?】
腱鞘炎の発生にはエストロゲンやプロゲステロンといった女性ホルモンが大きく関与しています。
エストロゲン分泌が減少する閉経期以降では滑膜が炎症を起こしやすく、プロゲステロン分泌が増加する周産期では腱鞘が肥厚しやすくなります。
同様の理由でド・ケルバン病、手根管症候群、母指CM関節症、ヘバーデン結節なども女性に多く発症します。
2.マレットフィンガー(槌指)は、外傷によりDIP関節背側での骨折や終始腱断裂によりDIP関節の伸展障害をきたした状態です。
野球やバスケットボールなどでの突き指として発生することが多く性差はあまりありません。
3.デュプイトラン拘縮は、手掌腱膜に生じる策状の結節によって手指の伸展障害が起こる状態です。
発生には糖尿病や喫煙などの生活習慣の関与が指摘されており、高齢男性に多く発生します。
4.マーデルング変形とは、橈骨遠位端尺側の発達障害により尺骨頭が背側に脱臼する変形です。原因は不明ですが思春期の女性に好発します。
下肢の損傷
問題5 発育性股関節形成不全の新生児での徴候で誤っているのはどれか。【難易度☆☆☆】
1.大腿内側皮膚溝の左右非対称
2.オルトラニ Ortolani テスト陽性
3.股関節開排制限
4.スカルパ三角部の膨隆
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答え
4
発育性股関節形成不全とは、周産期から出生後の発育過程で大腿骨頭が関節包内脱臼している状態です。
発育性股関節形成不全の徴候
1)鼠径部(大腿内側)の皮膚溝が非対称
・脱臼側では健側に比べ皮膚のしわが多く、深く、長い。
2)開排制限
・患児の両股、両膝関節を90°屈曲位とし、両股関節を外転していくと健側は大腿外側が床に付くが脱臼側は付かない。
3)アリス Allis 徴候
・背臥位で両膝をそろえて屈曲させると、脱臼側の膝の位置が低くなる。
4)オルトラニ Ortlani テスト陽性(オルトラニのクリック)
・背臥位で両股関節屈曲位、膝関節最大屈曲位で股関節を開排させ、同時に大転子を下から押し上げると脱臼が整復される際の整復音を触知する。
・次に、大腿長軸方向に圧迫しながら外転を減弱すると再脱臼音を触知する。
5)寛骨臼の空虚
・正常ではスカルパ三角部に触知する大腿骨頭が脱臼のため、空虚(陥凹)となる。
6)坐骨結節と大転子の位置異常
・大転子の上端がローゼル・ネラトン線よりも近位に位置する。(大転子高位)
*ローゼル・ネラトン線:上前腸骨棘と坐骨結節を結んだ線。
・開排位において正常では大転子と坐骨結節は同一平面上にあるが、脱臼側では段差があり、かつ距離が延長している。
参考文献
・南江堂「整形外科学 改訂第4版」
・医学書院「標準整形外科学 第12版」
・南江堂「柔道整復学・理論編 改訂第7版」
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