柔道整復師国家試験対策問題【病理学 第5回】

国試対策問題(オリジナル)

こんにちは。塾長のFです。

病理学の『腫瘍』の問題を作ってみました。

今日もF塾でガッツリ勉強していきましょう!

腫瘍の発生

問題1 腫瘍発生の母地になりやすいのはどれか。【難易度

1.肥 大
2.変 性
3.化 生
4.壊 死

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答え 

1.肥大とは、種々の影響により組織や臓器の容積が増大する進行性病変です。
 個々の細胞の大きさが増すものを狭義の肥大、細胞数増加によるものを過形成といいます。

2.変性とは、外的要因や代謝異常によって異常な物質が沈着するなどして、細胞が正常と異なる形態を示すようになる退行性病変です。
 沈着する物資の違いにより、蛋白変性、脂肪変性、糖原変性、石灰化などがあります。

仮性とは、細胞や組織が何らかの刺激(慢性的な炎症など)により、消失した後、他の分化した細胞・組織に置き換わる進行性病変です。
 慢性刺激に対する適応性の変化と考えられますが、しばしば腫瘍発生の母地となります。

【具体例】
・肺・気管支の円柱線毛上皮 → たばこ等の刺激 → 扁平上皮化生 → 肺扁平上皮癌
・子宮頸部の円柱上皮 → HPV、性交刺激 → 扁平上皮化生 → 子宮頸部癌
・胃の単層円柱上皮 → ピロリ菌など慢性胃炎 → 腸上皮化生 → 胃癌

4.壊死とは、外的な要因によって起こる細胞・組織の死です。
 壊死の病態によって、凝固壊死、融解壊死、壊疽などに分類されます。

腫瘍とは、「コントロールされていない不必要で過剰な細胞増殖」です。

通常細胞が腫瘍化する過程

1)イニシエーション(initiation)
・細胞がイニシエーター(発癌因子)によってDNAに変化を受け、不死化細胞・変異細胞となる。
・代表的なイニシエーターにはたばこ、アスベスト(石綿)、放射線、ウイルスなどがある。

2)プロモーション(promotion)
・不死化した細胞がプロモーター(がん促進因子)によって良性腫瘍や前癌病変を経てがん細胞となる。
・ホルモンやビタミン、食塩などがプロモーターとなる。

3)プログレッション(progression)
・がん化した細胞が増殖し、臨床的に人体に影響を及ぼす悪性腫瘍となっていく段階。
・がん細胞が1cm程度の癌となるのに数年から10数年を要する。





良性腫瘍と悪性腫瘍

問題2 悪性腫瘍に対する良性腫瘍の特徴はどれか。【難易度

1.浸潤性に増殖する。
2.触診上、可動性が高い。
4.細胞分化度が低い。
5.N/C比が増大する。

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答え 

1.良性腫瘍は周囲の細胞を押しのけるように膨張性に増殖します。一般的に増殖速度はゆっくりで、周囲の細胞を破壊することも少ないです。
 悪性腫瘍は周囲の細胞に浸潤するように発育し破壊性も大きいです。

.良性腫瘍は、表面が均一的で柔らかく、触診上よく動きます
 悪性腫瘍は、表面が凸凹していて固く、周囲と癒着しているのであまり動きません。

3.細胞分化とは、細胞が分裂を繰り返し固有の形態や機能を持った成熟した細胞に変化することです。
 良性腫瘍は増殖がゆっくりで、成熟が進むので分化度が高くなります。
 悪性腫瘍では細胞増殖が速く、成熟が不十分となるため分化度が低くなります。分化度が低いほど転移や再発など人体への影響が大きく、悪性度が高いといえます。

4.N/C比とは、細胞のなかで核の占める割合です。
 良性腫瘍では異型性(元の細胞との違い)は低いため、N/C比にあまり変化はありません
 悪性腫瘍では核が膨化するため、N/C比が増大します。

良性腫瘍悪性腫瘍
増殖速度遅い速い
増殖の形式膨張性・拡張性浸潤性
境界性明瞭不明瞭
破壊性少ない多い
壊死、出血少ない多い
転 移しないする
再 発少ない多い
予 後良好不良
悪液質ない起こす
細胞分化度高い低い
異型性弱い強い
核分裂少ない多い





腫瘍マーカー

問題3 悪性腫瘍と腫瘍マーカーの組合せで特異性が高いのはどれか。【難易度☆☆

1.乳 癌   ―  CA15-3
2.膵臓癌   ―  αフェトプロテイン(AFP)
3.肝細胞癌  ―  PSA
4.前立腺癌  ―  ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)

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答え 

腫瘍マーカー悪性腫瘍
CEA(胎児性癌抗原)大腸癌、胃癌など
αフェトプロテイン(AFP)肝細胞癌
PIVKA-Ⅱ肝細胞癌
PSA前立腺癌
CA19-9膵臓癌、胆嚢癌、胆管癌
CA15-3乳癌
CA125卵巣癌、子宮頸癌
ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)絨毛癌





発癌の原因

問題4 発癌の内因に相当するのはどれか。【難易度☆☆

1.エストロゲン  ―  乳 癌
2.トロトラスト  ―  肝臓癌
3.ベンツピレン  ―  喉頭癌
4.HPV      ―  子宮頸癌

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答え 

発癌の原因には外因と内因があります。

癌の外因

放射線

1)職業被爆(放射線技師など) → 白血病、皮膚癌
2)原爆・原発被爆       → 甲状腺癌など
3)造影剤(トロトラスト)   → 肝臓癌

化学物質

・コールタール     → 皮膚癌
・アニリン       → 膀胱癌
・ニトロソアミン    → 胃 癌
・メチルコラントレン  → 大腸癌
・ベンツピレン     → 肺癌、咽頭・喉頭癌

ウイルス

・エプスタイン・バーウイルス(EBV)  →  バーキット・リンパ腫、鼻咽頭癌
・ヒトパピローマウイルス(HPV)     →  子宮頚癌
・HTLV-1    →  成人T細胞白血病
・HBV、HCV  →  肝細胞癌

癌の内因

遺伝的素因

・レックリングハウゼン病(神経線維腫症) → 悪性神経鞘腫
・家族性大腸ポリポーシス  → 大腸腺癌
・色素性乾皮症  →  皮膚癌

ホルモン

・エストロゲン  →  乳癌、子宮体癌、卵巣癌
・アンドロゲン  →  前立腺癌

免 疫

・後天性免疫不全症候群(AIDs)  →  悪性リンパ腫、カポジ肉腫





胃 癌

問題5 胃癌について正しいのはどれか。【難易度

1.細菌感染は発症に関与しない。
2.大半が扁平上皮癌である。
3.早期胃癌の5年生存率は70%前後である。
4.筋層まで浸潤したものを進行胃癌という。

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答え 

1.胃癌の発生にヘリコバクター・ピロリ菌感染が大きく関与しています。
 ・ピロリ菌感染による慢性胃炎 → 腸上皮化生 → 胃癌発生。

2.胃癌のほとんどが腺癌です。
 腺癌とは、円柱上皮や立方上皮がつくる腺組織から発生する悪性腫瘍です。

3、.胃癌は胃壁の表面である粘膜細胞(単層円柱上皮)より発生し、徐々に深層へと浸潤していきます。
 浸潤が粘膜までに留まり、筋層へ達していないものを早期胃癌筋層へ達したものを進行胃癌といいます。
 5年生存率は癌の深達度によって大きく異なります。早期胃癌(ステージⅠ)では95%以上、多臓器へ転移した進行胃癌(ステージⅣ)では10%未満です。

参考文献

・医歯薬出版「病理学概論 改訂第3版」
国立がん研究センターのHP

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