柔道整復師国家試験対策問題【病理学 第3回】

国試対策問題(オリジナル)

こんにちは。塾長のFです。

病理学の循環障害、進行性病変の問題を作ってみました。

今日もF塾でガッツリ勉強していきましょう!

浮 腫

問題1 浮腫の成因はどれか。【難易度

1.リンパ管の拡張
2.血管透過性の減少
3.毛細管圧の上昇
4.血漿蛋白量の増加

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答え 

浮腫とは、組織液やリンパ液などの細胞外液が組織や臓器に貯留した状態をいいます。

心臓から末梢へ送られた血液は毛細血管の動脈側で血管外へ濾過され組織液となる量が約20L/日。

そのうち静脈側で吸収される量が16~18L/日、リンパ管へ吸収される量が2~4L/日。

この循環が破綻すると浮腫が生じます。

浮腫の成因

1)リンパ管の閉塞
 ・リンパ管が閉塞すると組織液が吸収できず浮腫となる。

① フィラリア症
 ・蚊によって媒介される寄生虫疾患。
 ・リンパ管が腫脹により閉塞し、象のように足や陰嚢が腫れ上がるので象皮病とよばれる。
② 乳癌手術後の上肢
 ・転移を防ぐために腋窩のリンパ節を切除した場合に発生する。

2)血管透過性の亢進
 ・感染などで炎症がおきると血管が拡張し血管透過性が亢進する。(血管外へ出ていく水の量が増える)

3)毛細管圧の上昇

① うっ血性心不全
 ・心臓のポンプ機能の低下により静脈還流が低下し、末梢の毛細血管に血液が貯留する。下肢に著明。
② 肝硬変
 ・門脈から肝臓への流入が阻害され門脈圧亢進となり腹水となる。

4)血漿タンパク量の低下
 ・血漿タンパクであるアルブミン量の減少により血漿膠質浸透圧が低下しておこる。

 ① 低アルブミン血症
 ・アルブミンは肝臓で合成されるため、肝硬変では低アルブミン血症になりやすい。

 ② ネフローゼ症候群
 ・腎の濾過機能の障害により血漿タンパクが尿中へ排出され発生する。

<strong>F塾長</strong>
F塾長

血漿膠質浸透圧とは

「血漿タンパク(アルブミン)がもつ、水を血管内に引っ張り込む力」のことです。

この浸透圧があるため、血液の量、血圧が一定に維持されているといえます。





出血の原因による分類

問題2 漏出性出血とならないのはどれか。【難易度☆☆

1.動脈瘤破裂
2.壊血病
3.敗血症
4.慢性うっ血

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答え 

動脈瘤破裂は、破綻性出血です。

赤血球が血管外に出ることを出血といい、その原因により破綻性出血漏出性出血に分けられます。

1)破綻性出血
血管壁の物理的な破綻(損傷)による出血。
① 外傷性出血
② 動脈瘤・静脈瘤破裂
③ 胃十二指腸潰瘍
④ 肺の結核性空洞

2)漏出性出血
毛細血管圧の上昇血管透過性の亢進による毛細血管での出血
① 慢性うっ血
② 敗血症
③ 壊血病
 ・ビタミンC不足によりコラーゲン合成が阻害される。
 ・血管内皮細胞どうしの結合が緩くなり、透過性が亢進する。
④ アレルギー性紫斑病





肥大と過形成

問題3 過形成がみられるのはどれか。【難易度

1.片方が機能不全に陥った際のもう一方の腎臓
2.高齢男性の前立腺
2.スポーツマンの心臓
3.進行性筋ジストロフィーにおける腓腹筋

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答え 

組織や臓器の容積が大きくなることを肥大といいます。

 肥大には、1つ1つの細胞が大きくなって容積が増大する狭義の肥大と、細胞の数が増えて容積が増大する過形成があります。

肥大(狭義)

細胞容積の増大によって起こる。
・細胞分裂を行わない筋細胞などで肥大が起こる。

1)労作性肥大
 ・仕事量の増大により細胞容積が増大する。
① 筋肥大
 ・スポーツマン、肉体労働者の骨格筋に起こる生理的な肥大。
② 心肥大
 a.スポーツ心臓
  ・長距離走や水泳など有酸素運動で起こりやすい。
  ・一回拍出量の増加に伴い脈拍数が低下する。
 b.病的心肥大
  ・高血圧弁膜疾患が原因となる。
  ・不可逆変性に陥り、心不全に向かう。

2)代償性肥大
 ・有対性臓器の片方が機能不全、あるいは摘出した場合に残ったもう一方の臓器におこる。
 ・腎臓、卵巣、肺など。

3)仮性肥大
 ・見かけ上は筋組織が肥大したようにみえるが、実は脂肪組織の増殖による肥大。
 ・進行性筋ジストロフィーにおける腓腹筋に著明。

過形成

細胞数の増加(細胞増殖)によって起こる。

1)甲状腺腫
 ・下垂体ホルモンである甲状腺刺激ホルモン(TSH)の過剰分泌があると、その支配下にある甲状腺濾胞の細胞数が増加する。

2)前立腺肥大
 ・名前は肥大だが過形成である。
 ・高齢男性では男性ホルモンの分泌が低下し、前立腺の組織が増生する。

3)妊娠による乳房
 ・女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)の影響により乳腺組織が増生する。





再 生

問題4 再生で不安定細胞に分類されるのはどれか。【難易度☆☆

1.肝細胞
2.中枢神経細胞
3.唾液腺分泌細胞
4.胃上皮細胞

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答え 

 再生とは、役目を終えて寿命を迎えたり、あるいは侵害刺激によって損傷した細胞と同じ細胞が、細胞分裂によってできてくることです。

 細胞の再生能力には差があり、一般的に幼弱、低分化、下等動物は強く高齢、高分化、高等動物は弱いです。

 再生能力の差によって3つに区分されます。

1)不安定細胞
 ・生理的に常時、細胞分裂を繰り返す細胞
 ・再生能力
 ① 骨髄造血幹細胞
 ② 胃粘膜上皮
 ③ 表皮、毛髪
 ④ 生殖細胞(精子、卵子)

2)安定細胞
 ・通常は細胞分裂しないが、刺激に際し細胞分裂する細胞。
 ・再生能力
 ・例)肝臓は手術など部分的に切除しても再び同じ大きさに戻るまで再生する。
 ① 肝 臓
 ② 膵 臓
 ③ 唾液腺
 ④ 内分泌腺

3)永久細胞
 ・生後、細胞分裂しない細胞。
 ・再生能力
 ① 神経細胞
 ② 心筋細胞
 ③ 骨格筋細胞





血栓形成

問題5 血栓形成の要因はどれか。【難易度☆☆

1.血液凝固能の低下
2.血流速度の上昇
3.血管内壁の平滑化
4.血液粘度の上昇

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答え 

1.凝固能が亢進すると血栓ができやすくなります。

2.血流速度が低下すると血栓ができやすくなります。

3.血管内壁が粗くなると血栓ができやすくなります。

血栓とは、血管内で血液が凝固し、血管壁に付着したものです。

血栓はしばしば血管の狭窄や閉塞をきたし、組織や臓器に梗塞を起こします。

血栓は次の機転より形成されます。

血栓形成の機転(ウィルヒョウの三徴)

1)血管壁の障害
血管壁が粗くなると血小板が付着し血栓ができやすくなる。
 ① アテローム性粥状動脈硬化症
 ② リウマチ性心内膜炎

2)血流の異常
血流が緩徐になると血栓ができやすくなる。
 ① 動脈瘤
 ② 静脈瘤

3)血液成分の変化
血液が濃くなる(粘度の増加)と血栓ができやすくなる。
 ① 多血症
 ② 脱水(広範な熱傷など)

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