柔道整復師国家試験対策問題【生理学 第16回】

国試対策問題(オリジナル)

こんにちは。塾長のFです。

生理学の『運動の生理』の問題を作ってみました。

今日もガッツリ勉強していきましょう!

運動単位と神経支配比

問題1 正しい記述はどれか。【難易度☆☆

1.1つのα運動ニューロンとそれに支配される筋線維群を運動単位という。
2.1本の筋線維は複数のα運動ニューロンに支配されることもある。
3.神経支配比は精密な動きが必要な筋では大きい。
4.運動単位のタイプでもっとも疲労しにくいのはFF型である。

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答え 

骨格筋は脊髄前角にあるα運動ニューロンの信号によってのみ収縮します。

すなわち骨格筋のなかの筋線維(筋細胞)はα運動ニューロンによって支配されています。

.1つのα運動ニューロンとそれに支配される筋線維群を運動単位といい、運動の機能的単位となります。

2.1本の筋線維は複数のα運動ニューロンに支配されることはなく、
 1つのα運動ニューロンによってのみ支配されています。

3.1つのα運動ニューロンが支配する筋線維の数を神経支配比といいます。
 例)α運動ニューロンが4本の筋線維を支配しているとするなら、神経支配比は4です。
 神経支配比は精密な動きが必要な筋(指先や舌など)では小さく
 粗雑な動きの筋(殿部や大腿)では大きくなります。

4.運動単位は以下の3つのタイプに分けられます。

運動単位のタイプS 型FF型FR型
筋線維の種類Ⅰ線維(SO)Ⅱx線維(FG)Ⅱa線維(FOG)
収縮の速さ遅 い速 い中 間
収縮の強さ
(運動単位のサイズ)
小さい大きい中 間
α運動ニューロンの
伝導速度
遅 い速 い中 間
疲労度しにくいしやすい中 間

こちらも参考に『柔道整復師国家試験対策問題【生理学 第15回





筋紡錘

問題2 筋紡錘が検出するのはどれか。【難易度

1.筋の張力
2.筋の弛緩
3.筋の伸長
4.筋の短縮

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答え 

 筋紡錘は、骨格筋のなかにあって、筋の伸張と伸張速度を検出する深部感覚の受容器です。

 長さ2~4㎜の紡錘状で、錘内筋線維で構成されます。

 筋紡錘は錘外筋線維と並列に位置しており、錘外筋が伸展されると同時に錘内筋も伸展されます。

 錘内筋線維は核袋線維核鎖線維に分けられ、核袋線維にはⅠa群線維が、核鎖線維にはⅡ群線維が分布し、筋の伸張を中枢(脊髄)に伝えています。

 筋紡錘は細かい運動をする筋(指尖や舌)では密度が高く、粗雑な運動をする筋では密度は低いです。

 筋紡錘は筋の伸張を受容する一方で、筋がどのような長さであっても適正に検出できるように、γ運動ニューロンが錘内筋を収縮させることで筋紡錘の感度を調節しています。

 錘内筋線維は中央部は収縮が起こらないため、γ運動ニューロンは錘内筋の両側部に分布しています。





腱紡錘(ゴルジの腱器官)

問題3 ゴルジの腱器官に分布するのはどれか。【難易度

1.α運動線維
2.γ運動線維
3.Ⅰa群線維
4.Ⅰb群線維

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答え 

 腱紡錘(ゴルジの腱器官)は、骨格筋の筋腱移行部にあって、筋の張力を検出する深部感覚の受容器です。

 錘外筋線維と直列に位置しています。

 筋に張力が発生すると、Ⅰb群線維がその情報を中枢(脊髄)に伝えます。

 筋紡錘と違い、筋の受動的伸展だけでなく自動的収縮の際にも検出します。

 筋に過度の張力がかかると、Ⅰb群線維から脊髄前角のα運動ニューロンに伝えられ、筋の収縮が抑制されます。





運動反射

問題4 侵害刺激により誘発されるのはどれか。【難易度☆☆☆

1.交差性伸展反射
2.緊張性頸反射
3.緊張性迷路反射
4.立ち直り反射

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答え 

侵害刺激とは組織や細胞を傷害する刺激、すなわち疼痛を引き起こす刺激です。

 ヤケドするような熱いものに触れたり画鋲を踏んだりすると、手や足を引っ込める(体幹に近づける)反射がおきます。これを屈曲反射といいます。

 屈曲反射は刺激から四肢を遠ざける逃避反応でもあります。

 例えば、右足で画鋲を踏んだとします。

 このとき、右下肢の股関節や膝関節の屈筋群が収縮し、伸筋群が弛緩します。

 しかしそのまま(右足が上がった状態)では、体が右に傾き倒れてしまうので、
左下肢の伸筋群が収縮し、重心を左に寄せて体を支える反射が同時に起こります。

 これを交差性伸展反射といいます。

 屈曲反射および交差性ともに脊髄に反射中枢を持つ脊髄反射です。

2.緊張性頸反射は、脳幹(延髄、橋)が関与する反射で、受容器は頸部の筋紡錘です。
 頭部を左右に回旋すると、顔面の向いた側の上下肢が伸展し、反対側が屈曲する姿勢となります。
 乳児期に現れ、次第に消失する原始反射の一つです。
 成人でもスポーツの場面でみられます。

3.緊張性迷路反射は、脳幹(延髄、橋)が関与する反射で、受容器は耳石器(球形嚢、卵形嚢)です。
 バランスの悪い床で頭部が傾くと耳石器が重力を検知し、傾いた側の上下肢が伸展し、反対側の上下肢が屈曲しバランスを保とうとする反射です。

4.立ち直り反射は、頭部と体幹の位置関係を正常に保とうとする姿勢反射で以下の4つがあります。
 ① 頸部から起こり体幹に作用する反射(延髄・橋)
 ② 迷路から起こり頭部に作用する反射(中脳と視床)
 ③ 体表に加わる刺激から起こり頭部・体幹・四肢に作用する反射(中脳と視床)
 ④ 眼から起こり頭部に作用する反射(大脳皮質)





除脳とは

問題5 除脳動物でみられるのはどれか。【難易度☆☆

1.屈曲反射の亢進
2.四肢の伸展
3.γ運動ニューロンの抑制
4.Ⅰa群線維の活動低下

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答え 

除脳とは、中脳と橋の間の高さで切断された状態のことです。

四肢を伸展したまま自分で動かせない状態となり、除脳固縮とよばれます。

除脳は動物実験で人為的に再現でき、除脳された動物を除脳動物といいます。

除脳動物は四肢をピンっと伸展し、頸部を伸展した姿勢となります。
床にそっと置くと4本足で立つことができます。

なぜこのようなことが起きるかというと、

 骨格筋はα運動ニューロンの興奮により収縮しますが、γ運動ニューロンによっても支配されています。

 そしてα運動ニューロンとγ運動ニューロンはどちらかが興奮すると、連動して興奮します。(αーγ連関

 一方、γ運動ニューロンは上位脳(脳幹)より興奮が抑制されています。骨格筋の過度の収縮や伸張反射の過反射を抑制する為です。

 除脳されるとこの抑制がとれ(脱抑制)、

① γ運動ニューロンが興奮
② 反射性にⅠa群線維が興奮
③ α運動ニューロンが興奮
④ 骨格筋が過度に収縮

の機序で除脳固縮が起こります。

除脳のまとめ
1)自動運動の不可
2)伸張反射の亢進
3)頸部と四肢の伸展(伸筋群の緊張持続)
4)γ運動ニューロンの緊張
5)Ⅰa群線維の活動亢進
6)α運動ニューロンの緊張
7)屈曲反射の消失

参考文献

・南江堂「生理学 改訂第4版」
・医歯薬出版「運動学 改訂第3版」

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