こんにちは。塾長のFです。
柔道整復師国家試験で今回の範囲の問題数は約2問です。
不正請求問題など柔道整復師を取り巻く社会情勢を鑑みると、ココは絶対に理解しておかなければならないところだし、出題者もそう考えているでしょう。
下の方に過去問も載せています。先に過去問からしたい人はこちら(国家試験過去問)。
今日もF塾でガッツリ勉強していきましょう!
療養費とは
療養費とは、医療保険において被保険者が負担した費用を後から現金給付される費用である。
本来、医療保険制度では療養の給付は診療サービスを受ける現物給付であり、被保険者は保険証を提示すれば一部負担金(原則3割)のみで療養の給付を受けることが出来る。
しかし何らかの理由で療養の給付を受けられない場合は全額自己負担となり、後から保険者に請求し現物給付分(原則7割)の支給を受ける。これを療養費の償還払いという。
療養費の支給要件
・療養の給付が困難なとき、あるいは保険者がやむを得ないと認めた場合に支給される。
療養費の支給は保険者が決定する。
1)保険証が未交付のため、保険診療が受けられなかったとき。
・就職したときなどの手続き中に受診し、全額自己負担で支払ったときなど。
2)感染予防法により、隔離された状態で薬価を徴収されたとき。
3)医師の指示により義手、義足、義眼、コルセットを装着したとき。
症状固定した障害者の義肢などの治療用装具は療養費の対象となり現物給付されません。
また日常生活や美容目的のもの(眼鏡、コンタクトレンズ、補聴器など)は療養費の対象となりません。
治療用、日常生活・美容用を問わず、これらは国民医療費に含まれないので注意が必要です。
4)生血液の輸血を受けたとき。
・生血液とは採血後3日以内の血液のこと。新鮮血ともいう。
・採血後4~21日の血液を保存血という。保存血は療養の給付(現物給付)の対象となる。
5)柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の施術を受けたとき。
6)保険医療機関でない病院で自費診療を受けたとき
・海外などの旅行先で一刻を争う病態となり、自費診察を受けた場合など。
柔道整復師と療養費
なぜ柔道整復師は療養費が扱えるのか
明治から大正期にかけて整形外科は少なく、特に都心部の負傷した人の多くは「ほねつぎ」、「接骨院」に通っていた。
やがて患者から医療保険取扱いの要望が起こり、先達の柔道整復師の行政への働きかけもあって昭和11年、「近くに専門の医療機関がなければ」という条件付きながらも健康保険の特例として認められた。
健康保険取扱いを認められた経緯において、柔道整復施術が整形外科と術式が似ていることが大きく関係している。旧来から伝わる技法に加えて、最新の西洋医学を取り入れ、科学的な見地から患者に向き合っていたからといえる。
また柔道整復療養費が受領委任払いとされたのも患者の利便性を重視してのことである。
柔道整復療養費は受領委任払い
本来、療養費は償還払いが原則だが、柔道整復施術所(接骨院、整骨院)では受領委任払いが認められている。
受領委任払いとは「患者に代わって柔道整復師が保険者に請求する」制度である。
受領委任払い制度により、患者の一時的な経済的負担や事務手続きの負担が軽減され、保険医療機関に受診する場合と同じように施術を受けることができる。
受領委任払いの流れ
① 患者(被保険者)は柔道整復師に一部負担分(通常3割)を支払う。
② 患者は柔道整復師に療養費請求を委任する。(療養費支給申請書の委任欄に署名する。)
③ 柔道整復師は患者に代わって、保険者に療養費を請求する。
④ 保険者は請求内容が適正か審査し、支給の可否を決定する。
⑤ 保険者は柔道整復師に給付分(通常7割)を支給する。
受領委任払いの条件
受領委任契約(協定)
・受領委任払いは、受領委任契約(協定)を結ぶことにより取扱いができる。
・受領委任契約(協定)は柔道整復師と保険者より委任を受けた地方厚生局長または都道府県知事との間で結ばれる。(三者協定ともいわれる)
・受領委任契約(協定)において「受領委任の取扱規程」を遵守することを確約しなければならない。
受領委任の取扱規程(抜粋)
1)施術所に施術管理者を1名置くこと。
2)一人の柔道整復師が複数の施術所の施術管理者となることは原則認められない。
例外的に複数の施術所の施術管理者となる場合は、各施術所での管理を行う曜日、時間を明確にする必要がある。
3)受療委任の取扱いは登録施術所においてのみ認められる。
4)施術所内に勤務する柔道整復師の氏名を提示すること。
5)患者の受給資格を保険証等で確認すること。
6)患者の一部負担金を減免または超過して受け取ってはならない。
7)領収書、明細書を無償で交付すること。
8)必要な事項を施術録に記載し、施術完結の日から5年間保存すること。
9)骨折、脱臼の施術に関する医師の同意を得たことを施術録及び申請書に記載すること。
受領委任の取扱い中止
以下に該当する場合に受療委任の取扱いが中止となる。
1)規程に定める事項を遵守しなかったとき。
2)療養費の請求内容に不正が認められたとき。
3)開設者や施術管理者が反社会的勢力であると判明したとき。
4)その他、受領委任の取扱いを認めることが不適当と認められるとき。
施術管理者
施術管理者である柔道整復師のみが受領委任払いを扱える。
施術管理者になるには
1)実務経験が必要
・原則3年間必要。(2024年3月までに届出する場合は2年間必要。)
・実務経験とは柔道整復師資格取得後、登録施術所において実務に従事した期間である。
・医療保険機関(病院等)に従事した期間も含まれる。但し1年間の施術所での実務経験が必要。
・機能訓練指導員、養成施設の教員の実務期間は含まれない。
2)施術管理者研修の受講
・連続した2日間で計16時間。
・研修内容は職業倫理、適切な保険請求、適切な施術所管理、安全な臨床など。
登録(承諾)施術所
受領委任の取扱いは登録(承諾)施術所での施術でなければならない。
・施術管理者であっても、登録していない場所での施術は受領委任払いとならない。
例)スポーツの現場での施術など。
柔道整復療養費の動向
・柔道整復療養費は近年、減少傾向である。
・令和2年度 2,863億円(対前年度比 -9.9%)
・国民医療費に占める割合・・・0.67%
国家試験過去問
問題 療養費の受領委任を取扱う「施術管理者」の要件で誤っているのはどれか。(第30回)
1.定められた内容の研修を受ける。
2.同時間帯で2カ所の施術所まで担当できる。
3.一定期間実務に従事した経験を有する。
4.柔道整復師でなければならない。
問題 柔道整復師が療養費受領委任払いを取り扱うために協定(契約)を結ぶのはどれか。(第30回)
1.保健所長
2.地方厚生局長
3.柔道整復研修試験財団代表理事
4.厚生労働大臣
問題 療養費の支給の可否を決定するのはどれか。(第29回)
1.保険者
2.保険医療機関
3.厚生労働大臣
4.審査支払機関
問題 施術管理者のみができるのはどれか。(第29回)
1.複数の施術所の開設
2.柔道整復の施術所の開設
3.受領委任の療養費の請求
4.療養費の償還払いの取り扱い
問題 柔道整復師療養費の受領委任(協定・契約)で正しいのはどれか。(第28回)
1.登録・承諾施術所以外でも請求ができる。
2.柔道整復師は療養費の支給を保険者に申請することができる。
3.患者の一部負担金は減免できる。
4.施術録は施術完結日から1年間保存する。
参考文献
・医歯薬出版「社会保障制度と柔道整復師の職業倫理」
・厚生労働省HP「国民医療費の概況」
・近畿厚生局HP 柔道整復師の施術に係る療養費の「協定書又は受領委任の取扱規程」
コメント