【生理学】止血のはなし

生理学のまとめ

こんにちは。塾長のFです。
今日は止血作用について書いていこうと思います。

 ケガをすると傷口から出血しますが、やがて出血は止まります。止血作用は生物がもつ自然治癒力の1つといえるでしょう。

 止血は①血管収縮、②血小板血栓の形成、③血液凝固の3つの段階が一連の流れで起こり、完成します。
 

それではその止血のメカニズムについてみていきましょう。

血管収縮

 血管壁である内皮細胞が損傷するとその下のコラーゲン(膠原線維)が露出します。するとフォン・ヴィレブランド因子という、いわば接着剤を介してコラーゲンに血小板が付着します。

 付着した血小板からセロトニンが分泌され、セロトニンの血管収縮作用により血流量が減少し、出血量も減少します。

血小板血栓の形成

 コラーゲンに粘着した血小板は活性化(トゲトゲの形になる)され、アデノシン二リン酸(ADP)を分泌することにより他の血小板が集まってきます。これを血小板凝集といいます。

 集まってきた血小板が塊を形成、血管損傷部位を塞ぎます。これを血小板血栓(一次血栓)といいます。

 比較的小さい損傷ならばこれで止血されますが、血小板血栓はもろく不安定なので大規模な損傷では更なる反応を進め、血栓を補強する必要があります。

血液凝固

 血液凝固とは、簡単に言うとフィブリン(線維素)血小板血栓の周囲に網を張るように補強し、血餅をつくることです。できた血餅をフィブリン血栓(二次血栓)といいます。

 フィブリン血栓は血漿中のフィブリノゲン(線維素原)がフィブリンに活性化して完成しますが、それには内因系と外因系の異なる反応により数種類の血液凝固因子の活性化が連鎖的に行われる必要があります。

血液凝固因子

 ほとんどが肝臓で合成されるタンパク質です。このうち第Ⅱ、第Ⅶ、第Ⅸ、第Ⅹ因子の合成にはビタミンKの存在が必要です。

フィブリノゲン
プロトロンビン
組織トロンボプラスチン
カルシウムイオン
ACグロブリン
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プロコンバーチン
抗血友病因子
クリスマス因子
スチュアート因子
PTA
ハーゲマン因子
ⅩⅢフィブリン安定化因子
血液凝固因子

内因系

 血管内の凝固因子のみが関与するのでこの名があります。

① 最初に、第因子が露出したコラーゲンに接触することで活性化します。

② 次に、活性化された第因子が第因子を活性化します。

③ さらに、活性化された第因子が第因子を活性化します。

④ 最後に、活性化された第因子は第因子を活性化し、血小板第3因子カルシウムイオン(第Ⅳ因子)の存在下で第Ⅷ因子複合体を形成されます。

外因系

 血管外の、すなわち組織液中の凝固因子が関与するのでこの名があります。

 血漿中の第因子が、組織液中の組織トロンボプラスチン(第Ⅲ因子)と接触することで因子複合体が形成されます。

フィブリノゲンからフィブリンへ

① 内因系では第Ⅷ因子複合体が、外因系では因子複合体が形成され、これらはともに第因子を活性化します。

② 活性化された第因子はプロトロンビン(第Ⅱ因子)を活性化しトロンビンに変換します。

③ トロンビンの作用によりフィブリノゲンフィブリン(不安定)に活性化されます。

④ 最後に、第XⅢ因子の作用でフィブリンが安定化されフィブリン血栓が形成され、止血が完成します。

線維素溶解

 血液凝固により形成された血栓が存在し続けると、血流の障害となり血管が閉塞すると梗塞を起こしかねません。

 そのため血管が修復された後は血栓が分解されます。この過程を線維素溶解といいます。

 線維素溶解はプラスミンが主役となり行われます。

プラスミノゲンの活性化

 プラスミンも血液凝固因子と同様に不活性のプラスミノゲンの形で血漿中に存在します。

 プラスミノゲンは組織型プラスミノゲンアクチベータとウロキナーゼの作用で活性化されます。

 プラスミンは酵素の作用により線維素(フィブリン)を分解します。

まとめ

① 傷口に血小板が付着。血小板からセロトニンが分泌
② セロトニンが血管収縮させ、出血量が減少。
③ 血小板同士が結合し、血小板血栓が完成。
④ 内因系により第Ⅷ因子複合体が形成。
⑤ 外因系により第Ⅶ因子複合体が形成。
⑥ 内因系、外因系の過程により第Ⅹ因子が活性化。
⑦ 第Ⅹ因子によりトロンビンが出来る。
⑧ トロンビンがフィブリノゲンをフィブリンに変換する。フィブリン血栓(血餅)の完成。
⑨ 出来た血餅をプラスミンが溶解。

止血の異常

 様々な理由により、出血しやすくなった病態を出血傾向といいます。以下に原因別の出血傾向を簡単にまとめました。

血液凝固因子の異常による出血傾向

1)血友病・・・凝固因子の第Ⅷまたは第Ⅸ因子の欠乏。伴性劣性遺伝により発症します。

2)肝硬変・・・肝細胞の機能障害。多くの凝固因子が肝臓で合成される為に起こります。

3)ビタミンK欠乏・・・凝固因子のⅡ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹの合成にはビタミンKが必要な為です。

血小板異常による出血傾向

1)特発性血小板減少性紫斑病・・・自己免疫疾患。自己抗体が血小板を破壊して発症します。

2)再生不良性貧血・・・血小板の発生元である骨髄の多能性幹細胞の障害。貧血、易感染性を伴います。

3)白血病・・・骨髄の多能性幹細胞の悪性腫瘍化。白血球だけでなく血小板も障害されます。

血管壁の異常

1)壊血病・・・ビタミンCの欠乏。血管壁のコラーゲンの合成にはビタミンCが必要な為です。

2)IgA血管炎・・・ヘノッホ・シェーンライン病とかアレルギー性紫斑病ともいわれます。溶血性連鎖球菌感染の関与が指摘されています。


今日はここまです。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

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