こんにちは。塾長のFです。
半月板損傷についてまとめてみました。
問題を解くヒントになると思うので必修の範囲ではないところも記述しています。
下の方に過去問も載せています。先に過去問したい人はこちら(国家試験過去問)。
今日もF塾でガッツリ勉強していきましょう!
*必修範囲は半月板損傷の診察、検査です。
必要に応じてスキップしてください。
半月板損傷 meniscus injury
機能的解剖
構 造
・膝関節包内にある関節補助装置で、線維軟骨からなる。
・断面は三角形で、外側縁は厚く関節包に付着、内側縁は薄い。
・前節、中節、後節の3つに区分される。
・内側半月はやや大きく、C字状。内側側副靱帯と癒着している。
・外側半月はやや小さく、O字状に近い。
機 能
1)関節の適合性を向上
・大腿骨遠位関節面が半球状なのに対して、脛骨近位関節面は平面状を呈し、骨性支持は非常に不安定である。半月板は大腿骨と脛骨の間でその間隙を埋めるように位置し、安定性を高める。
・半月や靱帯が受け持つ関節の安定性を静的支持機構という。
2)緩衝作用
・関節にかかる衝撃を吸収・分散するクッション的な役割をもつ。
3)関節可動性の適正化(スタビライザーの働き)
・半月板が移動することによりスムーズな関節運動が可能になる。
・膝屈曲時は半月板が後方に移動する。内側半月より外側半月の移動量が大きい。
・下腿外旋時は内側半月が後退、外側半月が前進する。
・下腿内旋時は内側半月が前進、外側半月が後退する。
4)関節内圧の均等化
・半月板が存在することにより、関節面の接触面積が広がり骨に加わる圧迫力が均等化される。
5)滑液(関節液)の分散
・滑液は関節包から分泌され、関節の潤滑油であるとともに関節軟骨を栄養している。
・関節運動時に半月板が移動することにより滑液が関節全体にゆきわたる。
概 説
1)内側半月損傷が多い。(外側半月損傷の約5倍)
2)内側半月、外側半月ともに後節が損傷されやすい。
3)単独損傷は少なく、多くの場合、内側側副靱帯や前十字靱帯などを合併する。
・・・不幸の三徴(unhappy triad)
4)若年者はスポーツ活動、中高年は加齢による変性、小児では形態異常によるものが多い。
損傷例
発生機序
1)スポーツ活動によるもの
① 内側半月損傷
・膝屈曲位+下腿外旋で発生する。
・内側半月が後方に移動し、後節が大腿骨と脛骨の間で狭窄される。
② 外側半月損傷
・膝屈曲位+下腿内旋で発生する。
2)形態異常によるもの
① 円板状半月
・通常は三日月型の半月板が、生まれつき中央部が厚く「満月型」になっているもの。
・外側半月に多い。
・小児の半月板損傷の大半を占める。
・これといった外傷の機転なく半月板損傷が起こる。
3)加齢変性によるもの
・半月板を構成するコラーゲン(膠原線維)が摩耗により損傷される。
・半月板は血行が不良で修復がされない。
・内反膝(O脚)では内側半月が、外反膝(X脚)では外側半月が摩耗しやすい。
症 状
1)圧痛、運動時痛
・関節裂隙部にみられる。
2)腫 脹
・関節血腫がみられ膝蓋跳動で確認できる。
3)引っ掛かり感 catching
・膝の屈伸の際に何かが挟まっている感覚がある。
・クリック(雑音)を伴うものもある。
4)嵌頓症状 locking
・断裂端が関節面に嵌入すると伸展制限と激痛のため、歩行不能となる。
5)膝崩れ現象 giving way
・陳旧例でみられる。
・歩行中に膝がカクンと抜けるように屈曲し、転倒しそうになる現象。
6)大腿四頭筋萎縮
・陳旧例でみられる。
・内側広筋の萎縮が著明。
検査法
マックマレーテスト McMurray test
① 患者を背臥位とする。
② 股関節、膝関節を最大屈曲位にする。
③ 一手で膝裂隙部を、他手で足部を把持する。
④ 下腿に内・外旋を加え伸展していく。
⑤ その際、裂隙部に疼痛及びクリックあれば陽性とする。
・外旋・伸展時に陽性所見があれば内側半月損傷を疑う。
・内旋・伸展時に陽性所見があれば外側半月損傷を疑う。
・膝最大屈曲位から90°までの間で所見があれば後節部の損傷を推定できる。
・90°から伸展位の間で所見があれば中節部の損傷を推定できる。
圧迫アプレー(アプライ)テスト Apley’s compression test
① 患者を腹臥位とする。
② 膝関節直角位にして、手で足部を把持する。
③ 下腿長軸方向に圧迫しながら内・外旋を加える。
④ その際、裂隙部に疼痛あれば陽性とする。
・内側裂隙部に疼痛があれば内側半月損傷を疑う。
・外側裂隙部に疼痛があれば外側半月損傷を疑う。
ワトソン・ジョーンズテスト Watson-Jones test
① 患者を背臥位とする。
② 一手で膝前面を、他手で踵部を把持する。
③ 足部を持ち上げ、過伸展を強制する。
④ 関節裂隙部に疼痛が誘発されれば陽性とする。
ステインマンテスト Steinmann test
① 患者を背臥位とする。
② 一手で膝関節裂隙部を、他手で足部を把持する。
③ 膝関節屈曲位から内・外旋を加えながら伸展していく。
④ 関節裂隙部に疼痛が誘発されれば陽性とする。
・外旋時に疼痛があれば内側半月損傷を疑う。
・内旋時に疼痛があれば外側半月損傷を疑う。
固 定
1)固定材料
・金属副子、ギプス、厚紙副子、綿花、ホワイトテープ、巻軸包帯など
2)固定肢位
① 膝関節 軽度屈曲位
② 足関節 中間位
*立位で固定する場合、踵部に台などを敷き補高すると膝軽度屈曲位を保ちやすい。
3)固定範囲
・大腿中央部から下腿中央部まで
4)固定期間
・4~6週間
後療法
国家試験過去問
問題 マックマレーテストで下腿内旋時に陽性となる損傷はどれか。(第30回)
1.内側半月板
2.外側半月板
3.前十字靱帯
4.後十字靱帯
問題 膝半月板損傷を評価するのはどれか。(第29回)
1.ラックマンテスト
2.ピボットシフトテスト
3.マックマレーテスト
4.グラビティーテスト
問題 急性期の半月板損傷でみられないのはどれか。(第28回)
1.腫 脹
2.圧 痛
3.不安定性
4.運動制限
問題 半月板損傷で正しいのはどれか。(第24回)
1.伸展した膝関節に回旋力が加わり発生する。
2.円板状半月に起因する損傷は小児に多い。
3.半月板前節の断裂が多い。
4.牽引アプライテストは診断に有用である。
問題 マックマレー・テストで判定できるものはどれか。(第15回)
1.関節半月損傷
2.前十字靭帯損傷
3.内側側副靭帯損傷
4.滑膜ひだ障害
問題 膝関節内側半月辺緑部損傷で誤っているのはどれか。(第12回)
1.前十字靱帯損傷との合併が多い。
2.膝関節筋伸展位での受傷が多い。
3.関節血腫を認める。
4.ロッキングが出現する。
問題 膝半月損傷で誤っているのはどれか。(第8回)
1.半月の嵌頓によってロッキングが起こる。
2.断裂の程度によって荷重痛が著しい。
3.関節血腫を生じる。
4.ラックマンテスト陽性となる
問題 半月板損傷の検査法はどれか。2つ選べ。(第4回)
1.マックマレー検査
2.側方動揺検査
3.ラックマン検査
4.アプレー検査
参考文献
・南江堂「柔道整復学・実技編 改訂第2版」
・南江堂「柔道整復学・理論編 改訂第7版」
・医歯薬出版「運動学 改訂第3版」
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