こんにちは。塾長のFです。
ハムストリングス肉ばなれについてまとめてみました。
問題を解くヒントになると思うので必修の範囲ではないところも記述しています。
下の方に過去問も載せています。先に過去問したい人はこちら(国家試験過去問)。
今日もF塾でガッツリ勉強していきましょう!
*必修範囲はハムストリングス肉ばなれの診察、検査です。
必要に応じてスキップしてください。
ハムストリングス肉ばなれ hamstrings strain injury
・ハムストリングスとは、大腿後面に位置する大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋の総称である。
概 説
1)肉ばなれで最も頻度が高い。(約40%)
・大腿四頭筋肉ばなれの約1.6倍。
2)陸上競技やサッカーなど疾走するスポーツに好発する。
発生機序
1)遠心性収縮
・ハムストリングスが伸展される際に加わる張力(収縮力)によって発生する。
・股関節屈曲位、膝関節伸展位での発生が多い。
① サッカー、ラグビーでのキック
② ハードル競技
③ 短距離走
2)大腿四頭筋との筋力アンバランス
・大腿部の前後の筋、すなわち大腿四頭筋とハムストリングスの筋力差があると発生しやすい。
・一般に、ハムストリングスの筋力が大腿四頭筋の筋力の60%未満の場合に起こるとされる。
3)コンディション
① 筋の疲労
・過密な試合や練習のスケジュール
・筋疾患の既往歴
② ウォーミングアップ不足
③ 不適切なフォーム
④ 競技場の状態
・クッション性や湿潤状態など
⑤ 気 候
・寒冷は肉離れを起こしやすい。
好発部位
1)筋腱移行部
① 内側(半腱様筋・半膜様筋):近位から中央部損傷しやすい。
② 外側(大腿二頭筋):中央部から遠位部を損傷しやすい。
2)坐骨結節部(付着部)
・まれに完全断裂が生じる。
・成長期では坐骨結節の裂離骨折を伴う場合がある。
症 状
1)陥 凹
・完全断裂の場合、受傷直後にみられる。
・受傷後数時間経過で腫脹が高度になると触れなくなり、経過が長くなると再び触れる。
・ハムストリングスを収縮させると著明となる。
2)圧痛、腫脹
3)皮下出血斑
・受傷後24時間以上経過後に現れることが多い。
4)膝関節伸展制限
検 査
1)収縮痛を診る検査
① 患者を腹臥位とする。
② 検者は下腿遠位部を把持する。
③ 患者に膝屈曲を指示し、検者はそれに抵抗を加え、損傷部に一致した疼痛の確認をする。
2)伸長痛を診る検査
*下肢伸展挙上テスト(SLR)
① 患者を背臥位とする。
② 検者は一手で下腿遠位部、他手で骨盤部あるいは膝部を把持する。
③ 患者に力を抜くよう指示し、膝伸展位のまま、他動的に股関節を屈曲し、疼痛出現角度を確認する。
治 療
1)保存療法が原則
・腱付着部が断裂したものでは観血療法が適応となることもある。
2)RICE処置
① ハムストリングスを弛緩させる肢位をとる。(膝軽度屈曲位)
・肉離れなので断裂端どうしを近づける。
② 血腫形成に留意する。
・打撲より出血量が多く、かつ損傷筋を伸張する肢位が取れないため、血腫が形成されやすい。
固 定
1)固定法
・ハムストリングスが弛緩した状態でのテーピング
2)固定期間
・1~2週間
・長すぎる固定期間はかえって治癒を遅らせる原因になる。
後療法
1)誘導マッサージ
・患部より近位側で行い、腫脹軽減を目的とする。
2)関節可動域訓練
・過度な筋伸長に留意し、静的ストレッチから始め、動的ストレッチへと進める。
3)筋力トレーニング
・等尺性収縮から始め、等張性(求心性、遠心性)収縮へ進める。
・荷重下のトレーニング(CKC)メニュー
・スクワット、ランジ、ヒップリフトなど。
合併症
1)骨化性筋炎
・大腿四頭筋挫傷に比べると頻度は少ない。
・経時的に、筋内に石灰化が起こる。
・出血量の多さや、血腫の存在は原因となる。
・治療経過中の暴力的な手技や過剰な運動療法で悪化する。
・徴候(腫脹、疼痛、熱感など)がみられたら固定し、安静にする。
国家試験過去問
問題 SLR テストで陽性になるのはどれか。(第30回)
1.大腿部前面の打撲
2.大腿四頭筋の肉離れ
3.下腿三頭筋の肉離れ
4.大腿二頭筋の肉離れ
問題 ハムストリングス肉離れの好発部位はどれか。(第29回)
1.起始部
2.筋 腹
3.筋腱移行部
4.停止部
問題 ハムストリングス肉離れを評価するテストはどれか。(第29回)
1.SLR テスト
2.トーマステスト
3.トンプソンテスト
4.ニュートンテスト
参考文献
・南江堂「柔道整復学・理論編 改訂第7版」
・南江堂「柔道整復学・実技編 改訂第2版」
・財団法人日本体育協会 スポーツ医・科学専門委員会「平成20年度 日本体育協会スポーツ医・科学研究報告 №Ⅴ 肉離れに関する最新の指針」
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