コーレス骨折のまとめ【必修問題】

必修問題のまとめ

こんにちは。塾長のFです。

2022年度版(第31回国家試験向け)の必修問題の範囲をまとめてみました。

コーレス骨折に関する問題は過去30回の国家試験で、23回と高頻度で出題されています。

問題を解くヒントになると思うので必修の範囲ではないところも記述しています。

下の方に過去問も載せています。先に過去問したい人はこちら(国家試験過去問)。

今日もF塾でガッツリ勉強していきましょう!

コーレス骨折 Colles’ fracture

*必修範囲はコーレス骨折診察整復、固定です。
 必要に応じてスキップしてください。

概 説

橈骨遠位端部伸展型骨折

幼児から高齢者まで全年齢層に発生する。

骨折頻度が非常に高い。

発生機序

・ほとんどが介達外力によって発生する。

手掌を衝いて転倒した際に下記の外力が加わる。

1)橈骨遠位端に長軸圧
・手を地に衝くときの角度が垂直に近いと噛合骨折になりやすい。

2)手関節を含んで強度の伸展(背屈)力
・この外力により背側転位となる。

3)掌側凸の屈曲力
屈曲骨折の第2型(骨の一方が固定され、他方に屈曲力が発生して起こる)に相当する。

4)前腕遠位部に過度回外の捻転力
・地に手を衝いた状態で前腕近位に回内力が働くと、必然的に前腕遠位(手関節部)が回外強制される。

症 状

1)骨折線の走行
① 前額面
 ・橈側近位から尺側遠位に走る。

② 矢状面
 ・手関節の1~3cm近位の掌側から背側近位方向へ走る。

2)転 位

① 短縮転位

② 背側転位

③ 橈側転位

④ 回外転位

<span class="fz-14px"><strong>F塾長</strong></span>
F塾長

痰、吐いとったんかーい

って覚えましょうw

3)変 形

① フォーク状変形
矢状面上で、高度な背側騎乗短縮転位によるもの。
・背側は急峻、掌側はなだらかな突出。
掌側傾斜角が減少している。

※日本手外科学会「手外科シリーズ 13」から画像を引用

② 銃剣状変形

前額面上で、高度な橈側転位により生じる。
遠位橈尺関節が離開し、手関節の横径が増大。
尺骨頭が尺側に突出する。

4)腫 脹
・骨折部より遠位に高度な腫脹が出現する。
・受傷後数時間で手指まで腫脹する。

5)疼 痛
・限局性圧痛、介達痛ともに著明。
・高齢者の場合、激甚でないこともある。

6)機能障害
・前腕の回内回外運動、手関節運動が制限される。
・ピンチ動作(第1指と第2指でつまむ)障害。

併発症

1)尺骨茎状突起骨折
・コーレス骨折の約半数に合併する。
・放置されると偽関節を後遺する。

2)舟状骨骨折

3)遠位橈尺関節の離開(脱臼)
・遠位の掌側・背側橈尺靱帯の断裂により発生する。

4)月状骨脱臼
・月状骨は掌側に脱臼し、手関節の前後径が増大する。

5)TFCC損傷
・手関節の外傷性関節炎。
・尺骨と手根骨の間で狭窄されて損傷する。

<strong>F塾長</strong>
F塾長

TFCCとは?

・尺骨と手根骨の間にある、三角線維軟骨複合体の略です。
・関節円板である三角線維軟骨、掌側橈尺靱帯、背側橈尺靱帯を含みます。
・手関節の深さと広さを補うスタビライザー(安定器)の役割をします。

6)神経損傷
・橈骨神経、尺骨神経、正中神経の損傷

整 復

牽引直圧整復法

転位が軽度の骨折に適用する。

① 患者を坐位または背臥位とする。

② 患者の肘関節を90°屈曲位、前腕回内位とする。

③ 助手に近位骨片(前腕の橈側)を固定させる。

④ 術者は両母指を背側に、両四指を掌側にあて手根部とともに遠位骨片を把持する。

⑤ 術者は遠位骨片を回内しながら末梢牽引する。
・患肢の第1指が橈骨軸の延長に一致する方向に牽引する。
・この動作で回外転位、短縮転位、側方(橈側)転位が除去される。

⑥ 両示指で近位骨片を背側へ圧迫し、両母指で遠位骨片を掌側に圧迫する。
・この動作で背側転位が除去される。

⑦ 遠位橈尺関節脱臼を合併している場合は尺側から直圧を加え整復する。

屈曲整復法

転位が高度の骨折に適用する。
・転位の原因となり、また整復を困難にする筋緊張の緩和が目的である。
・高齢者の関節内骨折には不向きである。

① 患者を坐位または背臥位とする。

② 患者の肘関節を90°屈曲位、前腕回内位とする。

③ 助手に近位骨片(前腕の橈側)を固定させる。

④ 術者は両母指を背側に、両四指を掌側にあて、手根部とともに遠位骨片を把持する。

⑤ 術者遠位骨片を回内、さらに橈側から尺側へ圧迫する。
・屈曲整復法では捻転転位や側方転位は除去できないため、事前に軸を合わせる目的で行う。

⑥ 遠位骨片を手とともに過伸展させる。(ここからが狭義の屈曲整復法)
・腕橈骨筋の弛緩を目的とする。

⑦ その肢位のまま両母指で前腕長軸末梢方向へ押圧する。
・骨片間に嵌頓が起こらないように遠位骨片を近位骨片に押し当てるように行う。
・この動作で短縮転位が除去される。

⑧ 両骨折端の背側どうしが適合したところで、手部を含み遠位骨片を掌屈させて整復する。
・この動作で背側転位が除去される。

観血療法の適応

・本骨折の場合、ほとんどが保存療法で整復されるが不安定型骨折の場合、観血療法の適応となることが多い。

不安定型コーレス骨折の定義】

1)ギプス固定では整復位保持が困難なもの
 ① 高度な粉砕骨折
 ② 関節内骨折
 ③ 高度な転位(背側傾斜角 20° 以上、短縮転位 10㎜ 以上)

2)整復後、ギプス内で再転位したもの
 ① 背側傾斜角 5° 以上
 ② 短縮転位 5㎜ 以上

固 定

1)固定材料
・クラーメル金属副子、合成樹脂キャスト材、厚紙副子、綿花枕子、巻軸包帯、三角巾

2)固定肢位
① 肘直角位
② 前腕回内
③ 手関節軽度掌屈軽度尺屈
・掌屈と尺屈を強くする、いわゆるコットン・ローダー肢位はNG(正中神経麻痺や拘縮を起こしやすい)。

3)固定範囲
・上腕近位からMP関節手前まで。(MP関節は含まない)
・高齢者など日常生活動作を優先する場合は肘関節を含まない場合がある。

3)固定期間
4~5週間
・約2週間後から徐々機能的肢位(良肢位)に近づける。

4)固定法
① クラーメル金属副子の成形
② 骨折部の橈側と背側に局所副子をあてる。
③ 巻軸包帯で固定し、三角巾で提肘する。

整復・固定後の確認

1)血管・神経損傷の確認
・橈骨、尺骨、正中神経の固有支配領域の感覚を確認する。
・固定後の血管損傷確認は爪圧迫検査を行う。(橈骨動脈の拍動確認は固定後はできない。)

2)運動の確認
・固定後、手指の運動(MP関節とIP関節)が可能か確認する。
・ジャンケンが出来れば正常と評価できる。

3)包帯の緊縛度の確認
・包帯固定後(受傷後数時間経過)に腫脹が増強することも十分考えられるため、患者にその旨を理解させ、処置(包帯を緩めるなど)を指示する。

続発症・後遺症

1)変形治癒
・不十分な整復・固定肢位により発生する。
・但し、高齢者の場合、日常生活動作に支障をきたさない程度であれば解剖学的治癒は必須ではない。

2)関節拘縮
・上肢全体に起こりうる。(手指、手関節、肘関節、肩関節)
・とくに高齢者で発生しやすい。

3)骨端軟骨成長板損傷による成長障害
尺骨突き上げ症候群を発症し、TFCC損傷の原因となる。

<strong>F塾長</strong>
F塾長

尺骨突き上げ症候群とは

・結果として「橈骨より尺骨の長さが長くなる」ことにより発生します。
・橈骨の短縮転位の残存や橈骨の成長障害が原因です。

・尺骨遠位端と手根骨の間でTFCC(三角線維軟骨複合板)が圧迫され損傷します。

・小児では、橈骨の骨端軟骨板が損傷すると、橈骨は成長せず尺骨は成長し、尺骨が橈骨より長くなります。

4)神経麻痺
① 正中神経麻痺(手根管症候群
・掌屈位固定や月状骨の陳旧性脱臼により発生する。
・経時的に猿手(母指球筋の萎縮)が出現する。

② 尺骨神経麻痺

③ 橈骨神経麻痺

5)長母指伸筋腱の断裂
固定除去後、手関節の運動療法時に発生する
・長母指伸筋腱と橈骨遠位背側のリスター結節との摩擦が原因。
・自然治癒しない。

6)反射性交感神経性ジストロフィー(CRPS TypeⅠ)
・損傷に見合わない強い疼痛が特徴である。
・骨の萎縮(ズデック骨萎縮)、爪が萎縮する。
・単純X線像で骨皮質の菲薄化や斑点状の脱灰像がみられる。
・強固な関節拘縮を後遺する。

国家試験過去問

問題 不安定型コーレス(Colles)骨折の定義で誤っているのはどれか。(第30回)

1.高度な粉砕
2.関節内骨折
3.整復後の再転位
4.背側傾斜角10 度

答えをみる
答え 

.背側傾斜角20 度以上です。




問題 コーレス (Colles) 骨折の固定肢位の組合せで正しいのはどれか。(第30回)

1.前腕回内 ― 手関節背屈 ― 手関節橈屈
2.前腕回内 ― 手関節掌屈 ― 手関節尺屈
3.前腕回外 ― 手関節背屈 ― 手関節尺屈
4.前腕回外 ― 手関節掌屈 ― 手関節橈屈

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答え 




問題 コーレス (Colles)骨折の整復手順で正しいのはどれか。(第29回)

1.整復前に神経血管損傷の有無を確認する。
2.患者は坐位にて肘関節伸展位とする。
3.助手に患肢の上腕骨骨幹部を把持させる。
4.整復後、助手に変形の有無を確認させる。

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答え 

4.変形の有無の確認は術者が行いましょうw




問題 コーレス(Colles) 骨折の典型的な変形はどれか。(第28回)

1.近位骨片の背側突出
2.遠位骨片の尺側偏位
3.橈骨茎状突起の突出
4.手関節横径の増大

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答え 

1.遠位骨片の背側突出

2.遠位骨片の橈側偏位

3.尺骨茎状突起の突出

.手関節横径の増大(銃剣状変形)は遠位橈尺関節の離開(脱臼)により発生します。




問題 コーレス(Colles) 骨折に続発するのはどれか。(第28回

1.尺骨茎状突起骨折
2.舟状骨骨折
3.月状骨脱臼
4.長母指伸筋腱断裂

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答え 

1~3.は併発症(骨折時の外力により発生)です。

.長母指伸筋腱断裂は固定除去後に発生するため続発症です。




問題 コーレス(Colles)骨折の外観で誤っているのはどれか。(第27回)

1.フォーク状の変形を呈する。
2.尺骨頭が突出した変形を呈する。
3.中手指節関節が過伸展位を呈する。
4.損傷部の厚さが増大する。

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答え 




問題 コーレス(Colles)骨折の遠位骨片の転位で正しいのはどれか。(第27回)

1.回外・尺側・背側・短縮転位
2.回内・橈側・掌側・延長転位
3.回外・橈側・背側・短縮転位
4.回内・尺側・掌側・延長転位

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答え 




問題 コーレス( Colles) 骨折で正しいのはどれか。(第26回)

1.手関節橈屈強制よって発生する。
2.遠位骨片が手背方向に移動する。
3.母指と示指でのつまみ動作は可能である。
4.橈側転位はフォーク状変形を長する。

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答え 




問題 コーレス(Colles)骨折の屈曲整復法で最初に遠位骨片を屈曲する方向はどれか。(第23回)

1.背側方向
2.掌側方向
3.橈側方向
4.尺側方向

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答え 

上記の屈曲整復法における、

⑤ 術者遠位骨片を回内、さらに橈側から尺側へ圧迫する。

は屈曲整復法の実施前の予備動作(軸を合わせる)です。




問題 コーレス(Colles)骨折の外観で誤っているのはどれか。(第19回)

1.手部の尺側偏位
2.フォーク状の変形
3.手関節の前後径増大
4.銃剣状の変形

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答え 

参考文献

・南江堂「柔道整復学・理論編 改訂第7版」
・南江堂「柔道整復学・実技編 改訂第2版」

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