【生理学】免疫のしくみ

生理学のまとめ

こんにちは。塾長のFです。

今日は免疫のしくみについて書いていきます。

免疫とは、文字通り『疫(感染症、伝染病)を免れる。』という意味です。

昔から「一度かかった疫病には二度かからない」ことは経験でわかっていたようです。

例えば「はしか」や「おたふくかぜ」はほとんどの場合、二度目の発症はありません。

感染を経験したことで免疫を得たからです。

それでは免疫がどのようなしくみになっているのか見ていきましょう。

免疫に関係する器官

一次リンパ器官

・免疫細胞(白血球)が産生・成熟する場所。

骨 髄

・骨の髄腔にあって、赤血球や白血球、血小板などすべての血球が多能性造血幹細胞から分化する(造血)場所。
・赤色骨髄と黄色骨髄があり、造血は赤色骨髄で行われる。黄色骨髄は脂肪組織に置き換わったもの。
・幼少期はすべて赤色骨髄だが、成人では頭蓋骨、椎骨、腸骨、胸骨などの短骨や扁平骨に造血能力が残り、上腕骨や大腿骨などの長骨では黄色骨髄となる。

胸 腺

・胸骨の後方、心臓の前上方に位置する器官で、思春期に30~40gになる。その後、小さくなり脂肪組織に変性する。(退縮)
・骨髄で産生された未分化のリンパ球が胸腺でTリンパ球に分化・成熟する。
・Tリンパ球はさらにヘルパーT細胞、キラーT細胞、サプレッサーT細胞に分化する。

二次リンパ器官

・免疫細胞(白血球)が体外から侵入してきた病原体に対し反応を起こす場所。

脾 臓

・腹腔の左上部にあり、白脾髄と赤脾髄からなる。
・白脾髄には脾リンパ小節(マルピギー小体)があり、リンパ球が免疫反応を起こす。
・赤脾髄は寿命を迎えた赤血球が貪食され破壊される。(細網組織の1つ)

F塾長
F塾長

腎臓の腎小体もマルピギー小体といいます。

同じ名前ですが全然別物です。

リンパ節

・全身に張り巡らされたリンパ管の途中にある「関所」。
・流入したリンパに細菌、ウイルス、がん細胞があればリンパ小節で捕捉し排除する。
・感染症やアレルギー疾患、がんの転移で腫脹する。

扁 桃

・咽頭周囲にあるリンパ組織で、呼吸により口や鼻から入ってくる細菌やウイルスの侵入を防ぐ。
・咽頭扁桃、口蓋扁桃、舌扁桃、耳管扁桃の4つがありワルダイエルの咽頭輪を構成する。

パイエル板

・小腸、特に回腸で発達した20~30個の集合リンパ小節
・食物に含まれる細菌やウイルスなどに対する重要な免疫組織であり、また食物アレルギー発生にも関与している。

抗原と抗体

抗原とは

・非自己成分で、生体に免疫応答を引き起こさせる物質。
・病原性微生物(ウイルスや細菌)、食物(そば、卵)などの表面に存在する、主にタンパク質の部分が抗原となる。
・自己免疫疾患では自己成分も抗原となる。
・抗体がつくられる原因となる。

抗体とは

・異物である抗原に特異的に結合し、異物を排除しようとするY字型の分子。
・B細胞から分化した形質細胞で作られる
・血漿タンパクである免疫グロブリン(γ-グロブリン)であり、以下の5種類がある。
・ある病原体に対する抗体の存在は、その病原体に感染した事実を示す。

抗体の種類

1)IgG
・もっとも多い免疫グロブリン。
・感染後、IgMに続いてつくられる。
・長期にわたって持続する。(数か月~数年)

2)IgA
・2番目に多い免疫グロブリン。
・外分泌液(涙、唾液、鼻水)に豊富に含まれ局所の粘膜での感染防止に役立つ。

3)IgM
・感染後、最初につくられる免疫グロブリン。
・発症後2週目から検出可能となり、その後数週間で消失する。

4)IgD
・扁桃や上気道のリンパ節に多く、呼吸器系の免疫に関与する。

5)IgE
・もっとも少ない免疫グロブリン。
・スギ花粉やハウスダスト、そばや牛乳で起こるアレルギー(Ⅰ型)に関与する。
・肥満細胞や好塩基球の細胞膜上に存在し、抗原(アレルゲン)と結合することで肥満細胞や好塩基球からヒスタミンを分泌させる。

抗体の作用

1)中和作用
・抗原と結合し、周囲を取り囲むことで毒性を発揮できなくする。
・細菌が産生する毒素を無毒化する。

2)抗原のオプソニン化
・抗原と抗体が結合することにより、貪食細胞(マクロファージや好中球)が貪食しやすくなる。

3)補体の活性化
・補体とは9種類のタンパク質(C1~C9)の総称で抗体や貪食細胞を補助する役割をもつ。
・補体は病原微生物の細胞膜を破壊、貪食細胞の遊走性を促進する。

4)ウイルス感染細胞の破壊
・ウイルスに感染した自己細胞が抗体と結合するとそれが目印となり、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)が排除する。

免疫細胞

・免疫細胞は各種の白血球のことである。

Tリンパ球

胸腺で成熟する。
細胞性免疫の主役となる。
・以下の3種類がある。

1)ヘルパーT細胞(Th、CD4
・免疫システムの司令塔的存在。
・Th1型はマクロファージやキラーT細胞を活性化し、細胞性免疫に関与する。
・Th2型はB細胞から形質細胞への分化を促し、液性免疫に関与する。

2)キラーT細胞(細胞傷害性T細胞、Tc)
・細胞性免疫の主力。
・侵入してきた細菌を直接攻撃する。
・ウイルスに感染した自己細胞を破壊する。

3)サプレッサーT細胞(制御型T細胞、Ts)
・B細胞(形質細胞)による抗体産生を抑制する。

Bリンパ球

液性免疫の主役
・成熟・分化すると形質細胞となる
形質細胞は抗体を産生する。

NK(ナチュラルキラー)細胞

・自然免疫に関与する。
・前感作なし(抗原提示を受けずに)で異物を攻撃する。

好中球

・侵入してきた細菌や真菌に対し、もっとも早く遊走しこれを貪食する。
・貪食した細菌をリソソームの消化酵素作用で殺菌する。
・殺菌後死滅し、細菌の死骸とともに膿(うみ)を形成する。

好酸球

寄生虫感染で増加し、攻撃する。
・アレルギー疾患で増加し、ヒスタミンを不活化することでアレルギー反応を抑制する。

好塩基球

・アレルギー(Ⅰ型)の際、ヒスタミンを分泌し蕁麻疹などのアレルギー反応を引き起こす。
・細胞膜にIgE抗体の受容体がある。
・好塩基球が血管から出て組織液では、肥満細胞(マスト細胞)とよばれる。

単球(マクロファージ)、樹状細胞

貪食作用をもつ。
・病原体を貪食し、その抗原情報を細胞表面に提示する。(抗原提示
・樹状細胞はマクロファージと同じ単球由来で、より抗原提示に特化している。

白血球についてはこちらもどうぞ

生体防御機構

・生体防御機構には、自然免疫獲得免疫がある。

自然免疫

生まれつき備わっている生体防御システム。
・自己と非自己を認識し、非自己を素早く攻撃し排除する。
・非自己成分であれば、相手かまわず素早く反応する。反面、免疫力としては獲得免疫より弱め。
・自然免疫が機能すると発熱や分泌液の増加(鼻水)、腫脹などの炎症反応が起こる。
・自然免疫で対処しきれない場合、獲得免疫が発動する。

自然免疫に関連する免疫細胞

1)好中球
2)好酸球
3)好塩基球・肥満細胞
4)単球・マクロファージ・樹状細胞
5)NK(ナチュラルキラー)細胞

獲得免疫

・獲得免疫には液性免疫細胞性免疫がある。

液性免疫

B細胞(形質細胞)で産生された抗体で抗原を排除するしくみ。

1)抗原提示
マクロファージ樹状細胞が抗原を貪食し、自らの細胞表面に抗原情報を提示する。

2)抗原情報の伝達
・抗原提示を受けたヘルパーT細胞(Th2)がサイトカインを分泌し、抗原情報を他の免疫細胞に伝達する。

3)形質細胞への分化
・インターロイキン(サイトカイン)により刺激を受けたBリンパ球が形質細胞へ分化する。

4)抗体産生
形質細胞が抗原に特異的に結合し破壊する抗体を産生する。

液性免疫に関与するもの

・Bリンパ球
・形質細胞
・抗体(免疫グロブリン)
・ヘルパーT細胞(Th2)

細胞性免疫

・活性化されたT細胞により抗原を排除するしくみ。

1)抗原提示
マクロファージ樹状細胞が抗原を貪食し、自らの細胞表面に抗原情報を提示する。

2)抗原情報の伝達
・抗原提示を受けたヘルパーT細胞(Th1)がサイトカイン(インターロイキン、インターフェロン)を分泌し、抗原情報を他の免疫細胞に伝達する。

3)免疫細胞の活性化
・インターロイキンにより刺激を受けたキラーT細胞が活性化する。
・インターフェロンにより刺激を受けたマクロファージが活性化され貪食能が亢進する。

4)細胞傷害
・キラーT細胞はパフォーリン(細胞傷害顆粒)を分泌し、ウイルスに感染した細胞を殺傷する。

細胞性免疫に関与するもの

・キラーT細胞
・ヘルパーT細胞(Th1)

免疫記憶

・病原体の初感染時はB細胞から形質細胞の分化、抗体産生に時間がかかる。
・その際、B細胞の一部はメモリーB細胞となり抗原情報を記憶する。
・後日、同じ病原体に感染した場合により素早く大量の抗体を分泌することができる。
・免疫記憶は長期にわたって保持される。(麻疹ウイルスに対しては一生続く)

サイトカイン

・主に免疫系の細胞が分泌する周囲の細胞を活性化する物質。生理活性物質ともいう。

1)インターロイキン(IL)
・マクロファージの貪食作用の促進
・リンパ球の分化と増殖

2)インターフェロン(IFN)
・ウイルス増殖を阻止する。

3)コロニー刺激因子
・骨髄の多能性幹細胞に働きかけ、顆粒球や単球の増殖を促す。

4)腫瘍壊死因子(TNF-α)
・腫瘍細胞にアポトーシス(自発的壊死)を促す。

国家試験過去問

問題 液性免疫を担うのはどれか。(第30回)

1.抗  体
2.好中球
3.インターフェロン
4.細胞傷害性Tリンパ球

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問題 細胞とその機能の組合せで正しいのはどれか。(第29回)

1.好中球      ―  抗体産生
2.Bリンパ球    ―  細胞破壊
3.Tリンパ球    ―  貪食殺菌
4.マクロファージ  ―  抗原提示

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問題 肥満細胞と結合してヒスタミンを遊離する免疫グロブリンはどれか。(第26回)

1.IgA
2.IgE
3.IgG
4.IgM

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問題 胸腺で成熟する細胞はどれか。(第25回)

1.好中球
2.好酸球
3.Bリンパ球
4.Tリンパ球

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問題 好中球の機能はどれか。(第24回)

1.マクロファージとなる。
2.免疫グロブリンを分泌する。
3.ウィルス感染細胞を破壊する。
4.細菌を貪食して殺菌する。

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問題 抗体を産生するのはどれか。(第23回)

1.形質細胞
2.マクロファージ
3.ヘルパーTリンパ球
4.細胞傷害性Tリンパ球

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問題 肥満細胞と結合する免疫グロブリンはどれか。(第14回)

1.IgA
2.IgE
3.IgG
4.IgM

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問題 外分泌液に含まれる免疫グロプリンはどれか。(第9回)

1.IgG
2.IgA
3.IgM
4.IgE

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答え 

参考文献

・南江堂「生理学 改訂第4版」
・医歯薬出版「病理学 改訂第3版」

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