【生理学】循環のしくみ4~循環(血流量、血圧)の調節~

生理学のまとめ

こんにちは。塾長のFです。

血液は心臓によって押し出され、血管によって運ばれます。

必要な臓器や大事な臓器には血液は多く運ばれます。ときには他の臓器を犠牲にしてでも。

今回はそのような血液循環の調節のしくみをまとめました。

今日もガッツリ勉強していきましょう!

血流量の調節

たとえば運動時は、筋組織への血流量は多く、消化器系への血流量は少ない。

いわば必要なところには血液を多く供給し、そうでないところへは供給を制限している。

このような血流量調節は主に各組織への細動脈領域の血管内径(太さ)の変化によるところが大きい。

但し、脳への血流量は一定に保たれている。

血管が拡張(血管抵抗の減弱)→ 血流量の増大

血管が収縮(血管抵抗の増大)→ 血流量の減少

血管の拡張・収縮に影響を与える因子

まとめの表をみる

1)代謝による増減
代謝の亢進は血管拡張を引き起こす。

<strong>F塾長</strong>
F塾長

 代謝が亢進している細胞(例えば筋細胞)では酸素や栄養をたくさん消費し、また必要としています。

 そこへ供給するための血管は拡張し、血流量が増える方が都合が良いわけです。

 とても理にかなっていますね。

・代謝が盛んな組織では温度の上昇酸素分圧の低下二酸化炭素分圧の上昇pHの低下を示し、これらは血管拡張の原因となる。
・代謝産物である乳酸Kアデノシン血管拡張を引き起こす。

2)炎症メディエーター
・炎症メディエーターとは、炎症反応を引き起こす物質の総称で、感染などの際に血管を拡張することで血管透過性を亢進し白血球の遊走を促す。
 ① ヒスタミン
 ② ブラジキニン
 ③ プロスタグランジン
 ④ ロイコトリエン
 ⑤ セロトニン など

3)血管内皮機能
・血管内皮機能とは、内皮細胞(単層扁平上皮)が様々な物質を分泌することによって、血管自身の収縮・弛緩、炎症反応性、血液凝固・線維素溶解の調節を行うこと。

 ① 一酸化窒素(NO)
 ・血管内皮細胞でアルギニンから作られる。
 ・血管拡張作用があり、動脈硬化の予防効果がある。

 ② エンドセリン
 ・血管内皮細胞で合成されるペプチドホルモン。
 ・もっとも強力な血管収縮作用をもつ。

4)神経性調節
 ① ノルアドレナリン
 ・交感神経終末より分泌され、α受容体を介して血管を収縮(細動脈の平滑筋を収縮)、末梢血管抵抗を高める。

 ② アセチルコリン
 ・交感神経終末より分泌され、ムスカリン受容体を介して筋血管を拡張させ、筋への血流量を増大させる。

5)体液性調節(ホルモン)
 ① アドレナリン
  ・副腎髄質より分泌されるカテコールアミン。
  ・β受容体を介して骨格筋内の血管を拡張させ、筋への血流量を増大させる。

 ② 心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)
  ・心房より分泌されるペプチドホルモン。
  ・血管を拡張させ、末梢血管抵抗を減弱することで心筋の負荷を減弱する。

③ アンジオテンシンⅡ
  ・レニンや変換酵素の作用で活性化され、血管収縮作用を持つ。
  ・副腎皮質においてアロドステロン分泌を促進し、血圧を上昇させる。

 ④ バゾプレッシン
  ・下垂体後葉より分泌される抗利尿ホルモン。
  ・血管収縮作用がある。

血管拡張・収縮のまとめ

調節因子血管を拡張させる血管を収縮させる
代 謝亢 進低 下
代謝の状態O2分圧低下
CO2分圧上昇
pH低下
体温上昇
O2分圧上昇
CO2分圧低下
pH上昇
体温低下
代謝産物一酸化窒素
K+
乳酸
アデノシン
エンドセリン
炎症メディエーターヒスタミン
ブラジキニン
プロスタグランジン
ロイコトリエン
セロトニン
セロトニン 
神経性因子交感神経活動
アセチルコリン
交感神経活動
ノルアドレナリン
体液性因子心房性Na利尿ペプチド
アドレナリン
アンジオテンシンⅡ
ノルアドレナリン
バゾプレッシン

静脈還流量に影響を与える因子

・1回拍出量は静脈還流量に比例する。(スターリングの法則)
 すなわち静脈還流量が全身の循環血液量を決定する重要な要素となる。

1)静脈弁と筋肉ポンプ
・静脈には逆流防止弁があり、四肢の筋が収縮するときは弁が開き、弛緩するときは弁が閉じる。
・このしくみにより重力に逆らって静脈血が心臓に還流できる。
・特に下腿部で重要で、長時間坐位でいると血液が貯留し浮腫(むくみ)が生じる。

2)呼吸時の胸腔内圧の変化
・吸息時の胸腔内圧の減少に伴い、胸腔内の血管抵抗が減弱、心臓が拡張しやすくなり静脈還流量が増大する。

3)交感神経活動
・交感神経活動が活発になると静脈の平滑筋が収縮し静脈圧が上昇、静脈還流量が増加する。
例)安静時は静脈に多くの血液が貯留している。運動時は筋に血液を供給するため静脈から貯蔵血液が動員される。

血圧の調節

血圧とは

・血圧(動脈圧)とは、心臓から駆出された血液が血管内壁を押す圧力のこと。

・心臓から近い大動脈での血圧がもっとも高く、心臓から離れるに従い血圧が下がる。

・血圧は心臓から1分間に拍出される血液量(心拍出量)と血管抵抗との積で決まる。

血 圧 = 心拍出量 × 総末梢血管抵抗

・心拍出量は1回拍出量と心拍数によって決まり、いずれが高まっても血圧は上昇する。

・血管抵抗が増える(血管が収縮し通りにくくなる)と血圧は上昇する。

最高血圧、最低血圧、平均血圧

1)最高血圧(収縮期血圧)
・心室が収縮し、血液が動脈側に駆出されるとき最も血圧が高くなる。

2)最低血圧(拡張期血圧)
・心室が弛緩し、大動脈弁の閉鎖後に最も血圧が低くなる。

3)平均血圧
・血圧は常に変化しているので、指標として用いられる。

・平均血圧は次の式で求められる。

平均血圧 = 拡張期血圧 + 脈圧 × 1/3

*脈圧は収縮期血圧と拡張期血圧の差

例)収縮期血圧 125㎜Hg、拡張期血圧 80㎜Hgのときの平均血圧は、

80 + (125 - 80)× 1/3 = 95(㎜Hg)

血圧に影響を与える因子

1)心拍出量
心拍数や1回拍出量が増加すると血圧は上昇する。
・1回拍出量は静脈還流量に比例するため、静脈還流量が増加しても血圧は上昇する。

2)末梢血管抵抗
・血栓などにより血管が閉塞すると、血管抵抗が増大し血圧が上昇する。
敗血症(感染により全身に炎症が起こる)などで血管が拡張すると、血管抵抗が減弱し血圧が低下する。(血液分布異常性ショック)

3)循環血液量
腎不全など排尿障害(乏尿)になると循環血液量が増大し、血圧が上昇する。
出血大量発汗などにより循環血液量が減少すると血圧が低下する。(循環血液量減少性ショック)

4)血液の粘性
・ヘマトクリット値の上昇、血漿タンパクの増加、糖尿病などでは血液の粘性が上昇(いわゆるドロドロ血液)し、血圧が上昇する。

5)血管壁の弾性
・血管壁に脂肪が沈着(粥状動脈硬化)すると血管壁の弾性が低下(血管壁が伸びない)すると血圧が上昇する。

血圧の調節

神経性調節

・刻々と変化する血圧を瞬時に一定に保つ機構で、圧受容器による反射性調節である。

1)圧受容器
頸動脈洞大動脈弓にある。
・血管壁の伸展を感知する伸展受容器である。
・血圧の変化により興奮し、頸動脈洞は舌咽神経を介して、大動脈弓は迷走神経を介して、求心性インパルスを循環中枢に送る。

2)循環中枢
延髄に心臓血管中枢がある。
・圧受容器からの情報をもとに交感神経副交感神経を介して血圧を一定に保っている。

3)自律神経系遠心路
① 交感神経
 ・血圧上昇作用がある。
 ・心拍数を上昇、心筋収縮力を亢進させる。
 ・血管壁を収縮し、血管抵抗を高める。

② 副交感神経迷走神経
 ・血圧低下作用がある。
 ・洞房結節の興奮を抑制し、心拍数を低下させる。

体液性調節

・内分泌(ホルモン)による血行性の調節機構。
・神経性調節に比べ効果に時間がかかり、長時間効果が持続する

1)バゾプレッシン
・下垂体後葉から分泌される抗利尿ホルモン
・腎集合管における水の再吸収を促進し、尿量を減少(=循環血液量を増加)し血圧を上昇させる。

2)レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系
・腎動脈圧の低下は腎臓からのレニン分泌を促進、活性化されたアンジオテンシンⅡは副腎皮質の球状層を刺激し、アルドステロンを分泌させる。
・アルドステロンは腎遠位尿細管におけるNa+の再吸収を促進、血漿浸透圧を高めた結果、血圧が上昇する。

3)カテコールアミン
・副腎髄質から分泌されるアドレナリンとノルアドレナリンの総称。
・アドレナリンはβ受容体を介して心収縮力を増大させ、血圧を上昇させる。
・ノルアドレナリンはα受容体を介して細動脈を収縮させ、血圧を上昇させる。
・血圧上昇作用はノルアドレナリンの方が強い

4)心房性ナトリウム利尿ペプチド
・腎臓における水とNa+の排泄を促進、アルドステロンの分泌を抑制し、結果的に血圧低下させる。

血圧調節のまとめ

血圧上昇作用がある血圧低下作用がある
心拍出量増 大減 少
末梢血管抵抗増 大減 少
血管内径縮 小拡 張
循環血液量増 加減 少
血液の粘性上 昇低 下
血管の伸展性(弾性)低 下上 昇
自律神経活動交感神経副交感神経
ホルモンバゾプレッシン
アルドステロン
ノルアドレナリン
アドレナリン
心房性ナトリウム利尿ペプチド
エストロゲン

国家試験過去問

問題 心拍出量を増やすのはどれか。(第30回)

1.心拍数の低下
2.心室収縮力の低下
3.全身末梢血管抵抗の低下
4.心室拡張末期容量の低下

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答え 

心拍出量 = 1回拍出量 × 心拍数 で求められる。

1.心拍数の上昇

2.心室収縮力の増大

.全身末梢血管抵抗が低下すると「抵抗が減る」=「通りやすくなる」=心拍出量が増加する。

4.心室拡張末期容量が増大(心室が大量の血液で満たされる)すると心筋の収縮力が増す。(スターリングの法則)




問題 細動脈を収縮させるのはどれか。(第30回)

1.乳 酸
2.一酸化窒素
3.アデノシン
4.エンドセリン

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問題 ジョギングをしている時の循環系の変化で正しいのはどれか。(第28回)

1.静脈還流量は減少する。
2.胃や腸への動脈は拡張する。
3.下肢筋群への動脈は拡張する。
4.収縮期血圧は低下する。

答えをみる
答え 

1.下肢筋による筋肉ポンプ作用により静脈還流量が増大する。

2.下肢筋群へ血液を集中するため、胃腸への動脈は収縮する。

4.静脈還流量が増大すると心収縮力が増大し、収縮期血圧が上昇する。

血流量の調節をみる




問題 血圧を上昇させるのはどれか。(第24回)

1.大出血
2.尿量増加
3.血管拡張
4.心拍出量増加

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問題 運動時に血流量が減少するのはどれか。(第21回)

1.肝 臓
2.心 臓
3.肺
4.骨格筋

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答え 




問題 収縮期血圧の上昇がみられるのはどれか。(第19回)

1.動脈平滑筋の弛緩
2.血液量の減少
3.心室収縮力の低下
4.動脈弾性の低下

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問題 平均血圧は拡張期血圧(最低血圧)に何を加えた圧か。(第17回)

1.脈圧の2倍
2.脈 圧
3.脈圧の1/3
4.脈圧の1/4

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答え 

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問題 収縮期血圧140mmHg、拡張期血圧80mmHgのときの平均血圧はどれか。(第14回) 1.1.90mmHg
2.100mmHg
3.110mmHg
4.120mmHg

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答え 

(140 ー 80)× 1/3 + 80 = 100mmHg



問題 運動時に骨格筋血流量が増大する要因で誤っているのはどれか。(第13回)

1.筋局所のpH上昇
2.コリン作動性交感神経の興奮
3.血液中アドレナリンの増加
4.静脈還流量の増加

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答え 

1.運動時の骨格筋は代謝が亢進しており、pHが低下する。

2.アセチルコリンを分泌する交感神経線維をコリン作動性ニューロンという。
 アセチルコリンは筋血管を拡張する。

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参考文献

・南江堂「生理学 改訂第3版」
・南江堂「生理学 改訂第4版」

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