こんにちは。塾長のFです。
大腿四頭筋損傷についてまとめてみました。
2022年度版(第31回国家試験向け)対応です。
問題を解くヒントになると思うので必修の範囲ではないところも記述しています。
下の方に過去問も載せています。先に過去問したい人はこちら(国家試験過去問)。
今日もF塾でガッツリ勉強していきましょう!
*必修範囲は大腿四頭筋打撲、肉ばなれの診察、検査です。
必要に応じてスキップしてください。
大腿四頭筋打撲 bruises of the quadriceps ”Charley horse”
概 説
・チャーリーホースといわれる。
・サッカーやラグビーなどコンタクトスポーツに多い。
なぜチャーリーホース?
100年以上前の米国野球では、グランド整備にケガをして引退した競争馬を使っていました。
その足を引きずる様子と大腿部を負傷した選手が似ていることが由来だそうです。
チャーリーはその馬の名前か、馬主の名前か、選手の名前か、所説あるようです。
ちなみに「charley horse」をGoogle翻訳してみると「こむら返り」と翻訳されます。
こむら返りって下腿三頭筋の痙攣ですよね...どうなってる?
そういや日本でも地方によって色々な呼び方があるみたいですね。
「ももかん」、「どんこ」、「ちゃらんぽ」...
あなたのところでは?
発生機序
・コンタクトスポーツで相手の膝や頭(ヘルメット)により大腿部前面を強打することにより発生する。
・その際、浅層(大腿直筋)筋より深層筋(中間広筋)に高度な損傷をきたしやすい。
*大腿四頭筋が外力と大腿骨の間で挟まれるが、大腿骨の方が膝や頭より尖鋭であるため。
症 状
1)鈍 痛
2)運動障害
・膝屈曲制限がみられる。
・膝の屈曲可能角度で分類する。
3)腫 脹
・受傷直後より翌日の方がより強く現れる。
・高度の腫脹をきたすと皮膚が光沢を帯びることがある。
検査・分類
1)収縮時痛を診る検査
① 患者をベッドに端坐位とし、床に足を着けないようにする。
② 一手で大腿遠位部、他手で下腿遠位部を把持する。
③ 患者に膝伸展を指示する。
④ 検者はそれに抵抗を加え(膝屈曲方向)、損傷部に一致した疼痛の確認をする。
2)伸張痛を診る検査
① 患者を腹臥位とする。
② 一手で下腿遠位部、他手で殿部を把持する。
*殿部を把持する理由は、*尻上がり現象を確認するため。(*注釈下記)
③ 患者に力を抜くよう指示し、他動的に膝屈曲を加え、疼痛出現角度を確認する。
*膝屈曲可能角度により下記のごとく分類する。
a.軽 度:膝屈曲角度が 90° 以上のもの
b.中等度:膝屈曲角度が 45° ~ 90° のもの
c.重 症:膝屈曲角度が 45° 未満のもの
【尻上がり現象とは】
・腹臥位で膝関節を屈曲していくと殿部が上がってくる(股関節が屈曲する)現象のこと。
・大腿四頭筋のなかでも二関節筋である大腿直筋の損傷のときのみにみられ、他の中間広筋、外側広筋、内側広筋の損傷ではみられない。
治療法
1)保存療法が原則
2)RICE処置
① できるだけ大腿四頭筋を伸張させる肢位をとる。(膝屈曲位)
・筋を伸張し筋区画の内圧を高め、血腫形成を抑制する。
・血腫は骨化性筋炎の原因となる。
・但し、筋断裂が疑われる場合は、損傷筋を弛緩させる。(膝伸展位)
② 大腿周径の増大が安定するまで継続する。
・少なくとも48時間は実施する。
固 定
1)固定材料
・絆創膏、アンダーラップ、パッド(圧迫用)など
2)固定肢位
・大腿四頭筋が弛緩した肢位(膝伸展位~軽度屈曲位)
3)固定期間
・1~2週間
後療法
1)誘導マッサージ
・患部より近位側で行い、腫脹軽減を目的とする。
2)関節可動域訓練
・過度な筋伸長に留意し、静的ストレッチから始め、動的ストレッチへと進める。
3)筋力トレーニング
・等尺性収縮から始め、等張性(求心性、遠心性)収縮へ進める。
・荷重下のトレーニング(CKC)メニュー
・スクワット、ランジ、ヒップリフトなど。
合併症
1)コンパートメント症候群
・急性期に、強度の腫脹により筋内圧の過度上昇により発生する。
・いわゆる阻血の5P症状(疼痛、蒼白、知覚異常、麻痺、拍動消失など)が出現する。
・徴候があらわれたら速やかに固定を緩め、医科に託す。
2)骨化性筋炎
・経時的に、筋内に石灰化が起こる。
・出血量の多さや、血腫の存在は原因となる。
・治療経過中の暴力的な手技や過剰な運動療法で悪化する。
・徴候(腫脹、疼痛、熱感など)がみられたら固定し、安静にする。
大腿四頭筋肉ばなれ torn the quadriceps
概 説
・大腿直筋に多い。
・筋腱移行部での発生が多い。
大腿四頭筋に限らず、肉ばなれの好発部位は筋腱移行部
が多いです。
発生機序
1)遠心性収縮により発生しやすい。
・股関節伸展、膝関節屈曲位の状態で強い収縮がかかったときに発生する。
例)上記の肢位でボールを蹴ろうとしたときに誤って地面を蹴る。
大腿四頭筋に限らず、肉ばなれといえば遠心性収縮です。
2)コンディション
① 筋の疲労
・過密な試合や練習のスケジュール
・筋疾患の既往歴
② ウォーミングアップ不足
③ 不適切なフォーム
④ 競技場の状態
・クッション性や湿潤状態など
⑤ 気 候
・寒冷は肉離れを起こしやすい。
症 状
1)疼 痛
・急で激烈な痛みを感じる。
2)運動障害
・膝屈曲制限がみられる。
・膝の屈曲可能角度で分類する。
3)腫脹、皮下出血斑
・受傷直後より翌日の方がより強く現れる。
4)陥 凹
・筋の完全断裂時に触知できる。
・経時的に腫脹が高度になると確認できなくなる。
検査・分類
治療法
1)保存療法が原則
2)RICE処置
① 大腿四頭筋を弛緩させる肢位をとる。(膝伸展位)
・肉離れなので断裂端どうしを近づける肢位です。
要注意!
大腿四頭筋打撲と違います!
② 血腫形成に留意する。
・打撲より出血量が多く、かつ損傷筋を伸張する肢位が取れないため、血腫が形成されやすい。
固 定
後療法
合併症
国家試験過去問
問題 大腿四頭筋肉離れが起こりやすいのはどれか。(第29回)
1.大腿直筋
2.中間広筋
3.内側広筋
4.外側広筋
問題 大腿部前面打撲の合併症で正しいのはどれか。(第28回)
1.骨化性筋炎
2.関節強直
3.脂肪塞栓症
4.フォルクマン (Volkmann)拘縮
問題 大腿四頭筋の肉ばなれで正しいのはどれか。(第28回)
1.求心性収縮で発生する。
2.中間広筋に多発する。
3.完全断裂では陥凹を触れる。
4.受傷直後から皮下出血斑を認める。
問題 大腿部前面の打撲で誤っているのはどれか。(第27回)
1.コンタクトスポーツで多くみられる。
2.初期は膝関節屈曲位で固定する。
3.受傷後24時間を経過したら温熱療法が有効である。
4.疼痛増悪時は医師に診断を仰ぐ。
問題 尻上がり現象に関与する筋はどれか。(第18回)
1.内側広筋
2.外側広筋
3.大腿直筋
4.中間広筋
問題 大腿部肉離れ(筋断裂)の応急処置で誤っているのはどれか。(第17回)
1.安 静
2.冷 却
3.圧 迫
4.牽 引
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