【生理学】呼吸のしくみ2~換気量、残気量、肺活量、一秒率、死腔量~

生理学のまとめ

こんにちは。塾長のFです。

気道や肺に出入りする空気量(肺気量)についてまとめてみました。

国家試験では数多く出題されています。似たような名前ばかりで覚えるのに難渋しますが、理解が大事ですね。

下の方に過去問も載せています。先に過去問からしたい人はこちら(国家試験過去問)。

今日もガッツリ勉強していきましょう!

肺気量

・呼吸器内(気道と肺胞)に存在するすべての空気の量を肺気量(全肺容積)という。
肺活量 + 残気量 で求められる。

換気量と残気量

1)1回換気量
・肺気量のうち、1回の呼吸で出入りする空気量。
・1回換気量は安静時では約500mL。

2)予備吸気量
・安静時吸息の後にさらに努力して吸い込める最大の空気量。

3)予備呼気量
・安静時呼息の後に努力して吐き出せる最大の空気量。
(安静時は肺の中に貯留しているが、努力したら吐き出せる。)

4)残気量
・最大限に呼息を行っても肺の中に残る空気量。
(肺の中に貯留していて、努力しても吐き出せない。)

5)機能的残気量
・安静呼息の後に肺の中に貯留している空気量。
予備呼気量 + 残気量 で求める。

肺活量

・最大限に息を吸い込み、最大限に息を吐きだせる空気量。
予備吸気量 + 安静時の1回換気量 + 予備呼気量 で求められる。
・肺活量計やスパイロメーターで測定する。
・体格、年齢、性別など個人差が大きい。
・男性の平均は約3.5L、女性の平均は約2.5L。

スパイロメーター 出典 ミナト医科学

1)努力肺活量
・できるだけ急速に息を吐きだして測る肺活量。

2)1秒量
・努力肺活量のうち、最初の1秒間で吐き出せる空気量。

3)1秒率
・努力肺活量に対する1秒量の割合。
・70%以上で正常。
1秒量 / 努力肺活量 × 100 で求める。
・気道が狭くなる気管支喘息や肺気腫(COPD)などの閉塞性肺疾患で低下する。
・1秒率の低下は呼息の延長(息が吐きにくい)を意味する。

4)予測肺活量
・性別や年齢、体格により予測される標準的な肺活量。
・予測肺活量の計算式
 男性 (ml) = (27.63−0.112×年齢)×身長cm
 女性 (ml) = (21.78−0.101×年齢)×身長cm

年齢や身長を入力するだけで予測肺活量を自動計算してくれるサイトへ

5)%肺活量
・予測肺活量に対する実測値の割合。
・80%以上で正常。
・肺胞が膨らみにくくなる肺線維症や間質性肺炎などの拘束性肺疾患で低下する。

肺胞換気量と死腔量

・換気とは単に空気が出入りすることではなく、外気と血液の間でガス交換されることを意味する。

ガス交換は肺胞で行われている。

・1回換気量の全てが肺胞に届くわけではなく、一部はガス交換されない。

1)肺胞換気量
・1回換気量のうち、実際に肺胞でガス交換される空気量。
1回換気量 ー 死腔量 で求められる。

2)死腔量
・1回換気量のうち、ガス交換されない空気量。
① 解剖学的死腔
 ・気道に留まり肺胞に届かない空気量。
 ・正常成人で約150mL

② 生理学的死腔
 ・肺塞栓症などの肺血流の低下や、気管支拡張症では死腔量が増加する。
 ・死腔量が増加すると換気率が低下(呼吸困難)し、血中酸素分圧が低下する。

呼吸の深さと回数、肺胞換気量の差

・1分間当たりの肺胞換気量を分時肺胞換気量(mL/分)という。
分時肺胞換気量が大きいほど、効率良くガス交換され血中酸素分圧が上昇する。
(1回換気量 - 死腔量)× 1分間呼吸数 で求められる。

例)浅くて速い呼吸の場合
・1回換気量500mL、死腔量150mL、1分間の呼吸数30回とすると、
・(500 - 150)× 30 = 10,500mL

例)深くてゆっくりな呼吸の場合
・1回換気量1,500mL、死腔量150mL、1分間の呼吸数10回とすると、
・(1,500 - 150)× 10 = 13,500mL

 上記の2つの例では、1分間当たりの換気量(1回換気量 × 呼吸数)はどちらも1,500mLと同じであるが、深くてゆっくりな呼吸の方が分時肺胞換気量が大きく、効率良く換気が行えていることがわかる。

<strong>F塾長</strong>
F塾長

【わかりやすい例えでいうと・・・】

 ダッシュした後とかで息苦しいとき、浅く速くハアハアするよりも深呼吸の方が回復が早いということです。

国家試験過去問

問題 肺気量分画の大きさの比較で正しいのはどれか。(第29回)

1.肺活量>予備呼気量
2.予備吸気量>肺活量
3.残気量>機能的残気量
4.予備呼気量>機能的残気量

答えと解説をみる
答え 

肺活量 = 予備呼気量 + 1回換気量 + 予備呼気量
機能的残気量 = 予備呼気量 + 残気量




問題 死腔量が150mLのとき1分間当たりの肺胞換気量が最も大きい組合せはどれか。(第28回)

1.呼吸数  8/ 分  ―  1回換気量750mL
2.呼吸数 10/ 分  ―  1回換気量650mL
3.呼吸数 12/ 分  ―  1回換気量550mL
4.呼吸数 15/ 分  ―  1回換気量450mL

答えと解説をみる
答え 

1.(750 - 150)× 8 = 4,800mL/分

.(650 - 150)× 10 = 5,000mL/分

3.(550 - 150)× 12 = 4,800mL/分

4.(450 - 150)× 15 = 4,500mL/分

呼吸の深さと回数、肺胞換気量の差をみる




問題 閉塞性換気障害で低下するのはどれか。(第27回)

1.1秒率
2.肺活量
3.残気量
4.気道抵抗

答えと解説をみる
答え 

1秒率をみる




問題 安静時の呼吸で呼息終了時の肺容量はどれか。(第25回)

1.肺活量
2.予備吸気量
3.1回換気量
4.機能的残気量

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問題 1秒率を求める式はどれか。

1.1秒量÷全肺気量×100(%)
2.1秒量÷1回換気量×100(%)
3.1秒量÷努力肺活量×100(%)
4.1秒量÷肺胞換気量×100(%)

答えと解説をみる
答え 

1秒率をみる




問題 最大吸気位から呼気として吐き出しうる最大の空気量はどれか。(第24回)

1.残気量
2.肺活量
3.肺胞換気量
4.機能的残気量

答えと解説をみる
答え 

肺活量をみる




問題 機能的残気量で正しいのはどれか。(第22回)

1.予備呼気量+残気量
2.予備吸気量+1回換気量+予備呼気量
3.1回換気量―死腔量
4.肺胞換気量+死腔量

答えと解説をみる
答え 

機能的残気量をみる

2.肺活量を求める式です。

3.肺胞換気量を求める式です。

4.1回換気量を求める式です。




問題 拘束性換気障害で減少するのはどれか。(第20回)

1.一秒率
2.肺活量
3.機能的残気量
4.残気量

答えと解説をみる
答え 

肺活量をみる




問題 喘息などの気道の閉塞性障害で低下するのはどれか。(第19回)

1.肺活量
2.努力肺活量
3.1秒率
4.機能的残気量

答えと解説をみる
答え 

1秒率をみる




問題 容量が増加すると血中酸素分圧が低下するのはどれか。(第15回)

1.肺活量
2.肺胞換気量
3.死腔量
4.1回換気量

答えと解説をみる
答え 

死腔量をみる

死腔量は肺胞に届かず、ガス交換されない空気量です。
血液はガス交換されないと血中酸素分圧が下がります。




問題 肺容積区分を図に示す。正しい組合せはどれか。(第13回)

1.予備呼気量 ――――― d
2.機能的残気量 ―――― c+d
3.1回換気量 ――――― a+b+c
4.肺活量 ――――――― a+b+c+d

答えと解説をみる
答え 

肺気量の表をみる

1.予備呼気量はです。dは残気量です。

3.1回換気量はです。a+b+cは肺活量です。

4.a+b+c+dは肺気量(全肺容量)です。




問題 呼吸障害の原因でないのはどれか。(第10回)

1.気道抵抗の減少
2.死腔量の増大
3.コンプライアンスの減少
4.胸膜腔陽圧

答えと解説をみる
答え 

気道抵抗の減少は、「空気が流れやすく」なるので呼吸障害の原因とはなりません。
 呼吸筋の仕事量(サイト内別ページ)をみる

2.死腔量の増大は、「ガス交換されない空気量が増える=血中酸素分圧の低下」になるので呼吸障害となります。
 死腔量をみる

3.コンプライアンスの減少は、「肺がふくらみにくい=息が吸えない」となるので呼吸障害となります。
 呼吸筋の仕事量(サイト内別ページ)をみる
 

4.胸膜腔常に陰圧であり、陽圧になると「息が吸えない」ので呼吸障害となります。
 *胸膜腔内圧が陽圧になった状態を気胸といいます。




問題 誤っているのはどれか。(第8回)

1.残気量は最大限の呼息の後に気道と肺に残る空気量である。
2.予備吸気量は安静時の吸息の後に努力して吸い込むことのできる空気量である。
3.予備呼気量は安静時の呼息の後に努力して吐き出すことのできる空気量である。
4.肺活量は予備吸気量と予備呼気量を合わせた空気量である。

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答え 

肺活量をみる

参考文献

・南江堂「生理学 改訂第3版」
・南江堂「生理学 改訂第4版」


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