こんにちは。塾長のFです。
2022年度版(第31回国家試験向け)の必修問題の範囲をまとめてみました。
問題を解くヒントになると思うので必修の範囲ではないところも記述しています。
下の方に過去問も載せています。先に過去問したい人はこちら(国家試験過去問)。
今日もF塾でガッツリ勉強していきましょう!
肘内障 pulled elbow
*必修範囲は肘内障の診察、整復です。
必要に応じてスキップしてください。
概 説
1)2 ~ 5 歳に特有の傷害である。
・就学以降はほとんどない。
2)発生頻度が非常に高い。
・幼少児が腕を引っ張られて、動かさず痛そうにしていたら一番に本症を疑う。
・繰り返し発生することが多い。
2)近位橈尺関節の亜脱臼である。
・橈骨輪状靱帯が近位に移動し、一部が橈骨頸に引っ掛かりを残す状態。
・年齢的に橈骨頭が軟骨成分であり、小さいため輪状靱帯が抜けやすい。
・本来の骨と骨との脱臼ではない。
発生機序
1)回内位+強い牽引力
・親や保育者が手を引っ張った際に発生する。
・回外位で引っ張られても発生しにくい。
2)自家筋力
・臥位で転がった際に前腕回内位の腕を体幹の下敷きになったときなど。
症 状
1)全身状態
・下を向き、背中を丸めしょんぼりしている。
・年少児は泣きじゃくる場合も多い。
2)肘軽度屈曲位、前腕回内位で来院。
・健側の手で患側の前腕、手部を支えている。
3)腕頭関節部の限局性圧痛
4)前腕部、手関節部の疼痛
・肘内障患者の約40%にみられる。
*南江堂「柔道整復学・実技編 改訂版第2版」P241に記載
5)上肢の運動制限
・特に前腕回外、肘の最終屈曲・伸展はできない。
・バンザイを指示してもできない。
6)前腕を回外強制するとバネ様抵抗感を触知する。
7)局所の発赤、腫脹はない。
鑑別診断
1)局所の炎症所見に乏しい(疼痛と運動制限のみ)。また幼児のため発生機序がはっきりしない。
・(特に初診の場合、保護者に隠れて何も話さないことが多い。)
2)単純X線には変化がない。
2)局所に腫脹がある場合
・骨端線離開、橈骨頸部骨折、肘関節捻挫を疑う。
3)局所に腫脹がない場合
・鎖骨の不全骨折も同様の症状を呈する。
・鎖骨骨折では、両腋窩を持って抱き上げると号泣する。様子が変わらなければ否定できる。
整 復
1)第1法
① 患者を坐位とする。(保護者の膝に座らせてもよい)
② 患肢が右の場合、右手で前腕遠位部を、左手で肘部付近を把持し、母指を橈骨頭にあてる。
③ 前腕を回内または回外させながら、橈骨頭を圧迫すれば軽いクリック音を触知する。
2)第2法
① 患者を坐位とする。(保護者の膝に座らせてもよい)
② 患肢が右の場合、右手で前腕遠位部を、左手で肘部付近を把持し、母指を橈骨頭にあてる。
③ 患肢を前腕回外位、肘伸展位とする。
④ 前腕を回内しながら最終屈曲させると、クリック音を触知し整復される。
*③と④の動作を間髪入れずに行う。
【F塾長の独り言】
臨床時代、勤めていた整骨院が保育園の近くにあり肘内障の患者がよく来院しました。
大抵は保育士さんやお友達に手を引っ張られて受傷することが多かったですが、なかには自分で何かにぶら下がって受傷することも。
同じ子が何度も受傷しては来院しましたが、小学校に入るころには発生することはなかったですね。
初めて整復したときは失敗しました。あまりにも前腕が小さいので整復の回旋力が弱かったことが原因と思います。
続く2度目で成功しましたが、今思えばその子(患者)が何度も受傷しているから2回整復させてくれたのだと思います。
初受傷なら嫌がって整復させてくれなかったでしょう。
背中に滝のような冷汗をかいたのを覚えています(^^;
整復後の確認
・整復直後はキョトンとしてあるいは警戒して患肢を動かそうとしない。
・菓子や玩具で気を引くと動かすようになる。
・患肢を動かさない場合は、他の損傷(骨折など)を疑う。
・単純X線像での確認は意味がない。
(整復前から変化がないから)
固 定
・一般的に固定は必要としない。
国家試験過去問
問題 肘内障で正しいのはどれか。(第30回)
1.前腕は回外位となる。
2.肘関節全体が腫脹する。
3.腕尺関節部に圧痛があ る。
4.万歳ができない。
問題 肘内障の所見で正しいのはどれか。(第29回)
1.橈骨頭の位置異常
2.腕橈関節部に軋礫音
3.損傷部のびまん性腫脹
4.回外強制でのバネ様抵抗感
問題 肘内障で正しいのはどれか。(第28回)
1.橈骨近位部に変形がみられる。
2.前腕回外強制で疼痛の増強がみられる。
3.腕尺関節に限局した圧痛がみられる。
4.肘関節部に腫脹がみられる。
問題 肘内障で正しいのはどれか。(第27回)
1.腕尺関節の亜脱臼である。
2.肘関節に運動痛がある。
3.患部の腫脹が著しい。
4.整復後は副子固定が必要である。
問題 肘内障で正しいのはどれか。(第26回)
1.肘関節屈曲位で手を強く引かれて発生する。
2.患肢前腕は回内位をと る。
3.上肢自動運動制限はみられない 。
4.整復後は肘関節軽度屈曲位で固定する。
問題 肘内障で正しいのはどれか。(第24回)
1.手掌を衝いて転倒した際に発生する。
2.患側の前腕を回外位で下垂する。
3.単純エックス線像で橈骨頭の前方脱臼がみられる。
4.前腕の回内・回外自動運動で整復確認を行う。
問題 小児肘内障で整復の確認に使われないのはどれか。(第23回)
1.単純エックス線像による整復の確認
2.他動的な回外運動での抵抗感消失
3.整復操作中のクリック音触知
4.自発的な患肢使用
問題 肘内障で誤っているのはどれか。(第22回)
1.幼小児の発生頻度が高い。
2.手を引っ張られることで発生する。
3.前腕回外位で来所する。
4.整復後は上肢挙上が可能になる。
問題 肘内障で正しいのはどれか。(第20回)
1.前腕は回内位となる。
2.橈骨頭の転位が触知できる。
3.肘関節に熱意を認める。
4.肘関節橈側に腫脹を認める。
問題 肘内障で正しいのはどれか。(第18回)
1.成人に多い。
2.肘関節の屈曲強制で発生する。
3.肘関節部に発赤は見られない。
4.前腕の回旋障害はみられない。
参考文献
・南江堂「柔道整復学・実技編 改訂第2版」
・南江堂「柔道整復学・理論編 改訂第7版」
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