下肢の損傷、特に軟部組織損傷は臨床上とても発生頻度が高く、整骨院などへの来院頻度も高いです。
ということは、国家試験にもよく出るということですね。
いつものように問題と解説で勉強していきましょう。
下腿骨骨幹部骨折の固定
問題1 定型的下腿骨幹部骨折の固定で正しいのはどれか。【難易度☆】
1.膝関節90°屈曲位、足関節10°屈曲位とする。
2.足指も含めて固定する。
3.腓骨頭周囲を圧迫しないようにする。
4.固定期間は6週とする。
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答え
3
定型的下腿骨幹部骨折とは、脛骨の中・下1/3境界部での骨折です。
下腿遠位部への回旋強制や地面に足を固定したうえでの体幹の捻転など介達外力により発生します。
脛骨単独骨折より腓骨の骨折も伴うことが多いです。
1.固定肢位は、膝関節30~40°屈曲位、足関節0~20°屈曲位です。
2.固定範囲は、大腿中央部から足MP関節手前です。足指は含みません。
3.腓骨頭付近は、腓骨神経が走行しています。固定の際、同部位に強く圧迫を加えると神経麻痺が生じ下垂足(足関節背屈障害)が発生します。
腓骨神経麻痺の防止の目的で下記を実施します。
1)ギプスシーネの腓骨頭部を有窓にする。
2)腓骨頭に綿花枕子をあてる。
4.固定期間は、脛骨の中・下1/3境界部は骨癒合が不良な為、10~12週を要します。
ハムストリングスの肉離れ
問題2 ハムストリングスの肉離れで正しいのはどれか。【難易度☆☆】
1.大腿四頭筋の筋力よりも極度に強い場合に発生しやすい。
2.遠心性収縮よりも求心性収縮に発生しやすい。
3.抵抗下に膝自動屈曲を行うと疼痛が増強する。
4.RICE処置では損傷筋を伸張する肢位をとる。
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答え
3
1.大腿部の肉離れは、大腿部の前後の筋、すなわち大腿四頭筋とハムストリングスの筋力差があると発生しやすいとされています。一般に、ハムストリングスの筋力が大腿四頭筋の筋力の60%未満の場合に起こるといわれています。
2.肉離れは部位に関係なく、遠心性収縮時に起こりやすいです。ハムストリングスでは、膝伸展時における収縮の際に発生しやすくなります。
3.ハムストリングス肉離れの疼痛増強は下記でみられます。
① 抵抗下での自動運動(膝屈曲)
② 他動運動での伸長(膝伸展)
4.肉離れのRICE処置では、断裂端同士が接近するような肢位を取ります。その為には筋を弛緩して起始と停止が近づく肢位、ハムストリングスであれば膝屈曲位です。
膝軟部組織損傷の検査法
問題3 膝関節軟部組織損傷の検査法で誤っているのはどれか。【難易度☆】
1.ラックマンテスト ― 前十字靭帯
2.Nテスト ― 後十字靱帯
3.マックマレーテスト ― 半月板損傷
4.アプライ牽引テスト ― 側副靱帯損傷
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答え
2
前十字靭帯損傷 | 前方引き出しテスト ラックマンテスト Nテスト ラテラルピボットシフトテスト |
後十字靭帯損傷 | 後方押し込みテスト サギングサイン |
側副靱帯損傷 | 外反・内反ストレステスト グラビティテスト 牽引アプライテスト |
半月板損傷 | マックマレーテスト 圧迫アプライテスト ワトソン・ジョーンズテスト ステインマンテスト |
膝関節軟部組織損傷の徒手検査法
アキレス腱断裂と下腿三頭筋肉離れの鑑別
問題4 アキレス腱断裂と下腿三頭筋肉離れの鑑別で誤っているのはどれか。【難易度☆☆☆】
1.どちらも若年者より中高年の発生リスクが高い。
2.腫脹は下腿三頭筋肉離れのほうが高度となる。
3.アキレス腱断裂の際、腹臥位での足関節は屈曲傾向にある。
4.歩行様式は鑑別に有効ではない。
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答え
3
1.発生機序はどちらも同等で、踏み込み、ダッシュ、ジャンプの着地時などの下腿三頭筋の急激な収縮や、筋の伸長が強制されたときに発生します。
【発生リスク】
① 加齢による筋・腱の退行変性(老化)
② ウォーミングアップ、ストレッチ不足
③ 筋疲労
④ 気温・天候リスク(気温が低いと発生しやすい)
⑤ スポーツ環境(グランドのクッション性が悪いと発生しやすい)
2.アキレス腱断裂の最好発部位は踵骨付着部より近位2~6cm(狭窄部)は血行不良部であり、腫脹や疼痛は比較的軽度の場合が多いです。
3.アキレス腱断裂では、足関節の屈曲(底屈)力が著減するため、腹臥位では足部は重力に負けて背屈します。
4.どちらも疼痛による跛行がみられ、歩行様式は大差ないので鑑別に重要ではありません。
足関節捻挫のテーピング
問題5 足関節外側靭帯損傷のテーピング固定で正しいのはどれか。【難易度☆☆】
1.フィギアエイトは足部が内反するように力を加える。
2.ヒールロックは踵部の外側のみ施す。
3.スターアップは足底に対し平行に巻く。
4.ホースシューはアキレス腱の保護を目的とする。
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答え
4
1.足関節外側靭帯損傷は内反強制により発生するため、フィギアエイトは外反方向に力を加え貼付します。
2.ヒールロックは、踵部の安定のために外側面、内側面ともに貼付します。
3.スターアップは、内反抑制の目的で、下腿内側遠位から足底を通り、下腿外側に向けて貼付します。足底に対しては垂直方向になります。
4.ホースシューは、アキレス腱保護とスターアップの補強のため、スターアップに直交するように貼付します。
参考文献
南江堂 柔道整復学・実技編 改訂第2版
バトルウィンのHP https://www.battlewin.com/
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