こんにちは。塾長のFです。
外科学のオリジナル問題を作ってみました。
今日もF塾でガッツリ勉強していきましょう!
脳神経外科疾患
問題1 てんかんについて誤っているのはどれか。【難易度☆☆☆】
1.糖尿病患者は発生リスクが高い。
2.光の明滅はてんかん発作の原因となる。
3.強直性痙攣は前屈位で四肢屈曲位をとる。
4.間代性痙攣は四肢の屈伸を繰り返す。
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答え
3
てんかんとは、大脳の神経細胞の電気的興奮が過剰に起こることにより、一時的なけいれんや意識障害を繰り返し現れる疾患です。
原因となる疾患の有無によって症候性てんかんと特発性てんかんに大別されます。
症候性てんかんの原因
1)頭部外傷
2)脳腫瘍
3)脳血管障害(脳出血、脳梗塞など)
4)感染症(脳炎、髄膜炎)
5)代謝異常(糖尿病*、低カリウム血症)
*インスリン療法による低血糖状態
6)薬物中毒
てんかん発作の誘因
1)体温の上昇
2)睡眠不足、疲労
3)月経
4)光の点滅
5)読書、パズル
てんかん発作の分類
脳の一部に過剰興奮が起こる部分発作と、脳の広い領域で過剰興奮が起こる全般発作に大別されます。
1)部分発作
2)全般発作
① 強直性痙攣
・反張位となり四肢が伸展位で強直する。
② 間代性痙攣
・四肢の屈曲、伸展を繰り返す。
③ 強直性間代性痙攣
・強直性と間代性の両者を合わせた痙攣。
頭部外傷
問題2 頭部外傷で誤っているのはどれか。【難易度☆☆】
1.頭蓋底骨折では脳神経麻痺を合併する。
2.急性硬膜下血腫は硬膜とくも膜の間に血腫が生じる。
3.慢性硬膜下血腫は軽微な頭部外傷後に発生しやすい。
4.脳震盪では不可逆的な神経症状をきたす。
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答え
4
1.頭蓋底は脳の底面にあたり、前方から前頭骨、篩骨、蝶形骨、側頭骨、後頭骨で構成されます。
頭蓋底には多数の孔があり、脳神経が出入りし頭蓋底骨折の際に脳神経麻痺が生じる場合があります。
前頭蓋底骨折では嗅神経や視神経、中頭蓋底骨折では顔面神経、後頭蓋底骨折では舌咽神経、迷走神経、舌下神経などが障害されます。
2.脳の表面は外側から硬膜、くも膜、軟膜の3種類の髄膜で覆われています。急性硬膜下血腫は外傷などにより硬膜とくも膜の間に血腫が生じます。
ちなみに急性硬膜外血腫では硬膜と頭蓋骨の間に血腫が形成されます。
3.慢性硬膜下血腫は軽微な頭部外傷の3週間以後に片麻痺や言語障害、認知症などが発症します。転倒することが多い高齢者やアルコール多飲者に好発します。
4.脳震盪は頭部に激しい衝撃が加わった事により、意識障害や頭痛、めまいなどの神経症状が一時的にみられる疾患です。
神経症状は短時間で回復することが多いですが、短期間に繰り返し脳震盪を起こすとセカンドインパクトシンドロームとよばれる重篤な病態に陥ります。
ジャパン・コーマ・スケール
問題3 60歳女性。自転車を走行中、交差点で自動車と衝突し転倒した際、頭部を強打した。呼びかけには応えず、少し体を揺さぶってみると開眼したが揺さぶりを止めるとまた意識を失う状態である。ジャパン・コーマ・スケールでの意識レベルはどれか。【難易度☆☆】
1.3
2.10
3.20
4.100
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答え
3
JCS(Japan Coma Scale ジャパン・コーマ・スケール)
・意識障害がみられる患者の意識レベルの深度を評価する指標。
・レベルをⅠ~Ⅲの3段階に分け、各レベルをさらにⅠは一桁、Ⅱは二桁、Ⅲは三桁の数字で分類する。
レベル | 意識状態 | レベル | 意識状態 |
---|
Ⅰ | 覚醒している | 1 | ほぼ意識清明だが、いまいちはっきりしない。 |
2 | 見当識障害がある。 (今日の日付や今いる場所が言えない) |
3 | 自分の名前、生年月日が言えない |
Ⅱ | 刺激すると覚醒する 刺激をやめると眠る | 10 | 普通の呼びかけで容易に開眼する |
20 | 大きな声、ゆさぶりで開眼する |
30 | 痛み刺激で開眼する |
Ⅲ | 刺激しても覚醒しない | 100 | 痛み刺激に対し、払いのける |
200 | 痛み刺激で少し手足を動かしたり、顔をしかめる |
300 | 痛み刺激に全く反応しない |
胸壁・呼吸器疾患
問題4 気胸の原因で最も発生頻度が高いのはどれか。【難易度☆☆】
1.中心静脈カテーテル挿入時
2.肺嚢胞の破裂
3.連続性多発肋骨骨折
4.肺気腫での肺胞の過膨張
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答え
2
気胸とは、何らかの原因によって胸膜が破れ、胸腔内に空気が貯留した状態です。
胸腔内は本来、大気圧より陰圧です。気胸で陽圧となると肺虚脱(肺胞が膨らまない状態)となり呼吸困難となります。
気胸は発生原因により自然気胸、外傷性気胸、医原性気胸に分けられ、気胸の大部分は自然気胸の特発性気胸です。
自然気胸
・外傷がなく肺嚢胞(ブラ、ブレブ)が破裂し発症するもの。
・特発性気胸と続発性気胸に分けられる。
特発性気胸
・若く、背の高い、やせ型の男性に好発する。喫煙は発症リスクを高める。
・気胸の大半を占める。
続発性気胸
・原因となる基礎疾患がある。
・肺気腫などのCOPD(慢性閉塞性肺疾患)、喘息、感染症、間質性肺炎などに続発する。
外傷性気胸
・交通事故などによる肋骨骨折、鋭利な刃物による刺創など。
・外開放性の為、胸腔内圧が急激に上昇し、心臓への循環還流量減少によりショック状態に陥ることがある。(緊張性気胸)
・血胸を伴うことが多い。
医原性気胸
・医療行為による気胸。
・鎖骨下静脈経由の中心静脈カテーテル挿入時に多い。
・開胸手術や鍼施術時に起きることもある。
腹部外科疾患
問題5 腹部の所見で正しいのはどれか。【難易度☆☆】
1.後腹膜血腫 ― 脾臓破裂
2.横隔膜下ガス像 ― 肝臓破裂
3.液体性鏡面像 ― 消化管穿孔
4.腸腰筋陰影消失 ― 腎臓破裂
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答え
4
1.後腹膜血腫は後腹膜臓器(十二指腸、膵臓、腎臓など)や大動脈瘤破裂による出血などによって発生します。
脾臓は腹腔内臓器の為、腹腔内出血となります。
2.横隔膜下ガス像とは、単純X線撮影(レントゲン)で空気(フリーエア)が貯留したものが観察されることです。これは中腔性器官である消化管から穿孔などによって空気が漏れ出し、腹腔の天井である横隔膜下に貯留するために起こります。
肝臓は実質性臓器の為、フリーエアは発生しません。
3.液体性鏡面像(ニボー)とは、腸閉塞(イレウス)の際に液性貯留物と発生するガスによってレントゲン上、消化管が半円状(下部が平面)にみえるものです。
4.単純X線撮影上の腸腰筋陰影消失は後腹膜における出血を疑うものです。
腸腰筋は単純X線撮影で陰影が確認できますが、腎臓破裂による出血などによって陰影が不鮮明になります。
参考文献
・南江堂「外科学概論 改訂第4版」
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