下腿骨骨幹部骨折のまとめ【必修問題】

必修問題のまとめ

こんにちは。塾長のFです。

必修範囲の下腿骨骨幹部骨折についてまとめました。

問題を解くヒントになると思うので必修の範囲ではないところも記述しています。

下の方に過去問も載せています。先に過去問したい人はこちら(国家試験過去問)。

今日もF塾でガッツリ勉強していきましょう!

*必修範囲は下腿骨骨幹部骨折固定法です。
 必要に応じてスキップしてください。

下腿骨骨幹部骨折 lower leg diaphyseal fracture

概 説

・スポーツや交通事故など強大な外力により発生する。

・単独骨折よりも脛腓両骨骨折が多い

・開放性骨折になりやすく、変形を残しやすい。

・小児では不全骨折(骨膜下骨折や若木骨折)になりやすい。

発生機序

1)直達外力

・交通事故、墜落、重量物の落下により起こる。
横骨折、またはそれに近い斜骨折となる。
・両骨骨折では骨折部が同高位となる。
・凹側に三角骨片をつくることがある。(屈曲骨折のⅠ型)

2)介達外力

・スポーツ、交通事故などの際、地面に足を固定した状態で体幹を捻転したときなどに発生する。
螺旋状骨折や斜骨折になりやすい。

転 位

1)直達外力によるもの
前方凹の屈曲転位(反張下腿)が多い。

2)介達外力によるもの
① 中央・遠位1/3境界部骨折(定型的骨折)
 a.骨折線
  ・前内方から後外上方へ
 b.転 位
 ・近位骨片前内方
  ・皮膚を穿通し開放性骨折となりやすい。
 ・遠位骨片後外上方
  ・後脛骨動・静脈や脛骨神経を損傷することもある。

症 状

1)骨折固有症状が著明
・軋轢音、異常可動性、限局性圧痛が著明で看過されることは少ない。
・但し小児の場合は変形が少なく看過されやすい。

2)起立・歩行が不能

3)腫 脹
閉鎖性骨折では腫脹が高度となり、皮膚が光沢を帯び、水疱を形成する。
・開放性骨折では腫脹は比較的軽度となる。

合併症・後遺症

1)変形治癒
 ・反張下腿(前方凹変形)
 ・外反・内反下腿

2)足関節の尖足位拘縮
 ・軽度底屈位の長期固定によるもの
 ・骨折端による損傷やコンパートメント症候群によって腓骨神経が麻痺しておこる。

3)遷延治癒・偽関節
 ・特に中央・遠位1/3境界部骨折では偽関節を生じやすい
 ・偽関節が多い理由
  ① 緻密質が厚く、海綿質が少ない。
  ② 横骨折やそれに近い斜骨折では骨折面の接合面積が小さい。
  ③ 血液供給が少ない。
  ④ 開放性骨折となりやすく感染リスクを伴う。
  ⑤ 整復位保持が困難で再骨折しやすい。

4)筋萎縮・慢性浮腫

5)開放性骨折による感染
 ・黄色ブドウ球菌感染により急性化膿性骨髄炎を合併する。
 ・慢性骨髄炎となると腐骨、難治性瘻孔を呈する。

整復法

1)牽引療法

・斜骨折や螺旋状骨折で、筋緊張の低下のために徒手整復前に行う場合と、整復位保持のために行う場合がある。
・膝関節軽度屈曲位で、ブラウン架台に載せ、スピードトラックや絆創膏などにより、3~4kgの重錘で持続牽引を行う。

2)牽引直達法

① 患者を背臥位、股関節90°屈曲位、膝関節90°屈曲位とする。

② 第1助手に下腿近位部を把持、固定させる。

③ 第2助手に足関節軽度屈曲位で把持させる。

④ 第2助手に、膝中心 ー 足関節中心 ー 第2趾が一直線になるように末梢牽引させる。

⑤ 術者は、近位骨片を前内方から後外方へ、遠位骨片を後外方から前内方へ圧迫し整復する。

⑥ 整復後、脛骨前縁を触知し、段差がないか確認する。

固定法

固定材料

1)クラーメル金属副子
2)厚紙副子
3)ブラウン架台など

固定肢位

1)膝関節:軽度屈曲位(30~40°)
2)足関節:軽度屈曲位(0~20°)
      内外旋中間位

固定範囲

大腿中央部からMP関節手前まで
*足指は固定しない。

固定期間

8~10週間
*中央・遠位1/3境界部骨折では10~12週間。

固定中の注意事項

1)受傷直後の固定においては、腫脹が後から増大するため、有窓や割り入れをする。

2)コンパートメント症候群(筋区画症候群)が現れたら、固定を緩め、速やかに医科に転送する。

3)腓骨頭周囲を有窓にする。(腓骨神経麻痺防止のため)

4)反張位にならないよう注意する。

後療法

固定法の変更

・受傷後、4週後程度からPTBキャストPTESキャストを用いる。

1)PTB(patellar tendon bearing)キャスト:膝蓋腱荷重ギプス

大東義肢株式会社のHPより転載

・膝蓋腱部分を前から抑え体重を支えることにより、下腿部以下に荷重が掛からないようにする短下肢装具。
・膝関節の可動域を確保でき、下腿骨骨折や足根骨骨折に用いられる。

2)PTESキャスト:免荷下腿用ギプス
・下腿骨近位骨幹部での骨折ではPTBよりPTESがよいとされる。

国家試験過去問

問題 下腿骨骨幹部骨折の固定範囲は大腿中央からどこまでか。(第29回)

1.足尖まで
2.足MP 関節手前まで
3.リスフラン関節手前まで
4.ショパール関節手前まで

答えと解説をみる
答え 

2.大腿中央からMP関節手前までです。

固定法をみる





問題 下腿骨骨幹部骨折の後遺症と原因の組合せで誤っているのはどれか。(第29回)

1.偽関節       ―  無理な運動療法
2.変形治癒      ―  早期の荷重開始
3.膝関節拘縮     ―  PTB キャストの使用
4.足関節尖足位拘縮  ―  下腿コンパートメント症候群

答えと解説をみる
答え 

1.偽関節は、短すぎる固定期間、運動療法が速すぎたり、無理があると発生しやすくなります。

2.変形治癒も偽関節とほぼ同じ理由で発生します。

PTBキャストは、膝関節は固定せず膝関節の可動域を確保するため、関節拘縮は起こしにくいです。

PTBキャストをみる

4.足関節尖足位拘縮は、コンパートメント症候群による腓骨神経麻痺でおこります。

合併症・後遺症をみる





問題 下腿骨骨幹部骨折で誤っている組合せはどれか。(第18回)

1.変形治癒  ―  斜骨折
2.関節拘縮  ―  長期固定
3.遷延治癒  ―  上・中1/3境界部
4.筋萎縮   ―  長期免荷

答えと解説をみる
答え 

3.遷延治癒・偽関節を起こしやすいのは中下(中央・遠位)1/3境界部骨折です。

同部位が偽関節を起こしやすい理由をみる





問題 下腿骨骨幹部両骨骨折で誤っているのはどれか。(第15回)

1.中下1/3境界部に好発する。
2.直達外力による横骨折では両骨の骨折部はほぼ同高位となる。
3.介達外力による螺旋状骨折では脛骨骨折部が高位となる。
4.定型的骨折では骨折線は前内方から後外上方に走る。

答えと解説をみる
答え 

.介達外力による骨折では、脛骨が中下1/3境界部に多く発生するのに対し、腓骨は定型的ではありませんがどちらかというと近位部に発生することが多いです。





問題 下腿骨骨幹部骨折の合併症とその要因との組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。(第14回)

1.総腓骨神経麻痺  ―  直達外力で発生した腓骨下1/3骨折
2.尖足位拘縮    ―  足関節屈曲(底屈)位固定の継続
3.膝関節拘縮    ―  PTBギプスによる荷重歩行
4.内反変形     ―  脛骨単独の斜骨折

答えと解説をみる
答え 2,4

1.総腓骨神経腓骨頭付近を走行するため、腓骨下1/3骨折では麻痺は起こりにくいでしょう。

3.PTBキャストは、膝関節は固定せず膝関節の可動域を確保するため、関節拘縮は起こりにくいです。

PTBキャストをみる





問題 下腿骨骨幹部骨折で正しいのはどれか。2つ選べ。(第10回)

1.小児の場合は脛骨の若木骨折となりやすい。
2.直達外力による両骨骨折の骨折部位は同高位となる。
3.下腿後面中央部からMP関前手前まで固定する。
4.脛骨中・下1/3境界部横骨折の骨癒合は良好である。

答えと解説をみる
答え 1,2

3.固定範囲は大腿中央部からMP関前手前までです。

固定法をみる

4.脛骨中・下1/3境界部骨折はどのような骨折でも骨癒合は不良です。
 なかでも接合面積が狭くなる横骨折やそれに近い斜骨折はさらに偽関節を生じやすくなります。





問題 下腿骨骨幹部骨折で誤っている組合せはどれか。(第4回)

1.変形治癒  ―  反張下腿
2.関節拘縮  ―  尖足位
3.遷延治癒  ―  中・下1/3境界部
4.筋萎縮   ―  早期荷重

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答え 

4.筋萎縮は、長期のギプス固定や免荷のために発生します。(筋を使わないから筋がやせる)
 早期荷重はむしろ筋萎縮防止効果があります。

参考文献

・南江堂「柔道整復学・理論編 改訂第7版」
・南江堂「柔道整復学・実技編 改訂第2版」

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