こんにちは。塾長のFです。
柔道整復理論の上肢の軟部組織損傷の問題を作ってみました。
今日もF塾でガッツリ勉強していきましょう!
肩部のスポーツ損傷
問題1 肩部の損傷と症状で誤っているのはどれか。【難易度☆】
1.SLAP損傷 ― 肩関節後下方の疼痛
2.肩峰下インピンジメント症候群 ― 有痛弧徴候
3.ベネット損傷 ― 内旋可動域の減少
4.ルーズショルダー ― 肩関節の下方動揺性
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答え
1
肩部のスポーツ損傷は、オーバーアームパターン(投球動作)によるものが多いです。
1.SLAP損傷は、肩関節上方関節唇の剥離、断裂です。
この部位は上腕二頭筋長頭腱の起始部で、投球動作など外転・外転の際に牽引されて損傷します。
2.肩峰下インピンジメント症候群は、肩峰下滑液包が烏口肩峰アーチで繰り返し狭窄されて炎症を起こすものです。
病態的には腱板損傷とほぼ同様です。有痛弧徴候(外転時の疼痛)、インピンジメント徴候がみられます。
3.ベネット損傷では、肩関節窩後下方の骨棘が形成されます。
この部位は上腕三頭筋長頭腱の起始部で、繰り返しの牽引により骨膜反応が起きると考えられています。
腋窩神経麻痺や外転・外旋時の疼痛、内旋可動域の減少(肩後方が拘縮するため)がみられます。
4.ルーズショルダー(動揺性肩関節)は、原因は不明ですが軽微な外力で肩関節の疼痛、不安定感を訴えるものです。
下方動揺性(サルカス徴候)の他、前後の動揺性もあります。
野球肘
問題2 野球肘の内側型損傷で誤っているのはどれか。【難易度☆☆】
1.野球肘の大部分を占める。
2.牽引ストレスで発生する。
3.遅発性尺骨神経麻痺がおこる。
4.離断性骨軟骨炎を生じる。
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答え
4
4.離断性骨軟骨炎は外側型損傷です。
投球動作は、肩や肘に大きな負担がかかりますが、少年期は特に肘の障害が多く、リトルリーガーエルボーといわれます。
野球肘は、肘への外反強制と過伸展強制により発生します。
外反強制は肘内側への牽引力、肘外側への圧迫力として作用し、過伸展強制は肘後方への衝突として作用します。
野球肘は損傷部位により、内側型、外側型、後方型に分類されます。
1)内側型
・野球肘の大半を占める。
・コッキング期から加速期にかけての肘外反強制が牽引力として働き発生する。
① 上腕骨内側上顆炎
② 上腕骨内側上顆骨折(裂離骨折)
③ 内側側副靱帯損傷
④ 前腕屈筋・回内筋損傷
⑤ 遅発性尺骨神経麻痺
⑥ 骨端線離開
2)外側型
・加速期からフォロースルー期にかけての肘外反強制が上腕骨小頭と橈骨頭の間で圧迫力として働き発生する。
① 離断性骨軟骨炎(上腕骨小頭部)
3)後方型
・フォロースルー期以後の過伸展強制は肘頭と肘頭窩の間でインピンジメント(衝突)が起き発生する。
① 肘頭疲労骨折
② 肘頭骨端軟骨の成長障害
③ 上腕三頭筋炎
ド・ケルバン病
問題3 ド・ケルバン de Quervan病で傷害されるのはどれか。【難易度☆】
1.長母指外転筋腱
2.短母指外転筋腱
3.長母指伸筋腱
4.長橈側手根伸筋腱
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答え
1
ド・ケルバン病は、手関節の橈背側に起こる狭窄性腱鞘炎です。20代と50代の女性に多く発生します。
手関節背側に張る伸筋支帯の下には6つの区画があり、その第1区画内を通る長母指外転筋腱と短母指伸筋腱が手関節や母指の使用により、橈骨茎状突起との摩擦により炎症を起こすものです。
検査法にはアイヒホフテストやフィンケルシュタインテストがあります。
手指の変形・変性
問題4 手指部の障害で誤っているのはどれか。【難易度☆☆】
1.弾発指は母指のMP関節運動障害である。
2.デュプイトラン拘縮は高齢男性に多い。
3.ヘバーデン結節はDIP関節の変形性関節症である。
4.スワンネック変形は槌指の続発症としても発生する。
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答え
1
1.弾発指(ばね指)は、手指掌側に起こる狭窄性腱鞘炎です。
母指にもっとも多く発生し、症状はIP関節の屈曲・伸展障害です。
手指掌側にはMP関節からDIP関節まで5つの滑車(靭帯性腱鞘)があり、そのうちMP関節にあるA1での狭窄が原因です。
2.デュプイトラン拘縮は、第4、5指のMP関節、PIP関節の屈曲拘縮です。
原因は不明ですが、喫煙や糖尿病など生活習慣に関連があるとされています。
高齢男性に好発します。
3.ヘバーデン結節は、DIP関節の変形性関節症です。
原因は不明、中高年女性に好発します。
4.スワンネック変形は、PIP過伸展、DIP屈曲位の指の変形です。
原因は関節リウマチによるものが大半ですが、槌指(マレットフィンガー)、浅指屈筋腱断裂、PIP関節掌側板損傷などを放置すると続発症として発生します。
絞扼性神経障害
問題5 絞扼性神経障害と症状の組合せで正しいのはどれか。【難易度☆☆】
1.肩甲上神経障害 ― 肩甲挙筋の萎縮
2.前骨間神経障害 ― 母指IP関節屈曲不能
3.肘部管症候群 ― 母指球筋の萎縮
4.後骨間神経障害 ― 母指示指間背側の感覚障害
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答え
2
1.肩甲上神経は、棘上筋と棘下筋を支配する神経です。
肩甲切痕部で上肩甲横靱帯での絞扼や、肩甲棘基部外側縁での摩擦により棘上筋や棘下筋の萎縮がみられます。
肩甲挙筋は肩甲背神経により支配されます。
2.前骨間神経は、正中神経から分枝する純運動枝です。
円回内筋や浅指屈筋腱弓で絞扼されると、方形回内筋、長母指屈筋、第2、3深指屈筋に麻痺がおこります。
母指IP関節の屈曲と第2指DIP屈曲が障害され、きれいなOKサインができずティアドロップサインtear drop outlineがみられます。
3.肘部管症候群は、上腕骨内側上顆後方(肘部管)を通る尺骨神経が絞扼されて起こります。
肘内側の疼痛、手指尺側のシビレや手内在筋(虫様筋、骨間筋)の萎縮のため、鷲手変形がみられます。
4.後骨間神経は、橈骨神経から分枝する純運動枝です。
純運動枝は感覚神経を含まないため、障害されても感覚障害はありません。
MP関節は伸展不可となりますが、手関節の伸展は可能なため、下垂指となります。
参考文献
南江堂「柔道整復学・理論編 改訂第7版」
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